第212回 価格と集客の関係

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

多くのお店が価格を安くしようと考える理由。
それは間違いなくお客さんに自分のお店を選んでもらうためでしょう。

私自身、安売りで商売をスタートさせたのでこの気持ちはよく分かります。

でも、ある時に気がついたのです。
「値段が高い」と思われることと、「お店に行かない」はイコールではない、と。


値段が高いと思われることに抵抗があるのは、開業当時の私だけではないでしょう。

じゃあなぜ、値段が高いと思われることに抵抗があったのかと私自身の経験を振り返って考えてみると、それは「値段が高い」という評価が、「自分の商売そのものに対する評価」のように感じていたからのような気がします。

つまり、「値段が高い」という評価が「お前のお店にそんな価値はない」と言われているようであり、自分自身を否定されているような感覚になっていたのです。

ただ、そんな感覚だった開業当初からこれまで商売をやってきて分かったのは、「値段が高い」という評価は、単純に他店の似たような商品と値段を比べた結果だけの話であり、その結果とお店に行くかどうかは別問題だったということ。

これは私たちが商品を買う時の判断基準を考えてみればすぐに分かることであり、価格だけで選ぶものもあれば、価格以外で選んでいるものもあるはずです。そして価格以外で選んでいる商品をなぜ自分が選んだのかと考えてみれば、それは価格以外に「選びたくなる理由」があったからに他ならないでしょう。

そう考えるのであれば私たちが意識を向けるべきなのは、大手が有利な「もっと商品を安く」という努力ではなく、小規模経営ならではの強みが活かしやすい「もっと価格以外の価値を」という努力なのではないでしょうか。

もちろん「価格以外の価値」を作り出す過程が口で言うほど簡単でないことは私も実感していますが、少なくとも安売りをするための努力に比べれば前向きな気持ちで取り組めるでしょうし、何よりお客さんに選ばれた時の喜びは価格で選ばれた時よりもはるかに大きいものになるのは間違いなく、小規模で商売をする楽しさはまさにここにある、と今は思うのです。

 著者の他の記事を見る

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

感想・著者への質問はこちらから