第34回「なぜ70%もの企業が赤字になるのか」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第34回「なぜ70%もの企業が赤字になるのか」

安田

じつは私、「雇わない経営」というお手伝いをしてるんですけど。

久野

知ってます(笑)

安田

最近、すごく相談が増えてまして。

久野

分かります。辞める辞めないの話とか、モチベーションの維持とか、経営者は人を雇うことに疲れてますから。

安田

ホントそうですよね。せっかく育てたのに辞めちゃったとか。

久野

雇用ってゼロイチじゃないですか。

安田

はい。辞めたらゼロですもんね。

久野

でもすごく手間と費用がかかる。採用して、育成して、社会保険も払って、席や車まで用意して。

安田

実際、雇わない経営に切り替えることで、目に見えて利益が増えた会社が出てきてます。

久野

そうでしょうね。フリーランスだったら家でやってもらえばいいし、社会保険料もかからないし。

安田

でも経営者の多くは、社員に全部やらせたほうが無駄な外注費がかからなくて安いと思ってる。

久野

そんなことないですよね。

安田

はい。実はいろんな間接コスト考えると、莫大な費用がかかってる。

久野

そう思います。

安田

中小企業って赤字の会社が多いじゃないですか。

久野

はい。70%くらい赤字企業ですね。

安田

なぜ赤字なのか。中小企業って、そんなに無駄遣いしてないイメージじゃないですか。

久野

むしろ、かなり切り詰めてますよね。

安田

切り詰めてるじゃないですか。それでも赤字ってことは、やっぱり人件費なんですよ。赤字社員の人件費。これは経営者が考えているよりはるかに大きい。

久野

確かに、少なく見積もってますね。いたとしても全社員の1割以下という感じ。

安田

ですよね。でも実際はもっと多いんですよ。だって黒字社員が70〜80%いたら、赤字になんかならないですよ。

久野

確かに。

安田

なぜこんなに赤字社員が多いかっていうと、内製化しすぎるからなんですよ。固定給だってことで、何でもかんでも社員にやらせちゃう。

久野

その傾向はありますね。外注=無駄と思ってる経営者は多いです。

安田

その結果、向いてない仕事をやらせてしまうんですよ。

久野

社員にブログ書かせるとか。

安田

苦手な人が書かされてるケースは多いですよね。でも社員にかかる固定費って想像よりもずっと大きいじゃないですか。

久野

採用、育成、社会保険、家賃、給料計算、いろいろ考えたら高価ですよね。

安田

しかも一旦雇ったら、仕事ができない社員でもクビにできない。

久野

ですね。

安田

仕方がないから、何かしら仕事をやらせる。でも向いてないから効率が悪い。そういう社員がどんどん積み重なっていく。

久野

目に見えない赤字社員がいっぱいいると。

安田

はい。得意なことだけやらせておけばいいんですけど。社員となるとそうもいかない。結果、全く向いてないことをやらせてる。

久野

古田にピッチャーさせるみたいな感じですか?

安田

古田に代走させてる感じ。

久野

そこまでいってます?

安田

いってますね。代走で疲弊して、もうキャッチャーもままならない。

久野

本末転倒ですね。

安田

でもそうなっちゃうんですよ。社員だと。

久野

得意なことだけやらせてたら、いいんじゃないですか。

安田

得意なことだけで給料払えるぐらい、仕事があればいいんですけど。

久野

ブログ書くだけで一人は雇えないですよね。

安田

そうなんですよ。得意なことだけやって3時に終わった。「じゃあ帰っていいよ」ってわけにいかないじゃないですか。

久野

いかないですね。

安田

結果、向いてない社員がブログを書いたりするんですけど。ものすごく時間がかかって、疲弊して、しかも大して成果が出ない。

久野

確かに。そうなってますね。

安田

確かに外注費はかからないけど、経費を含めたその人の人件費の方が高い。

久野

今はそうですね。採用費も高いし、育成費も高いし、ちょっとしんどかったら辞めるし、残業代も払わないといけない。休みも取らせないといけないっていう。

安田

その人に向いてる仕事だけをやらせないと、黒字化できないんですよ。

久野

いやあ、確かにそうですね。

安田

でも専門化すればするほど、そんなに仕事ないじゃないですか。

久野

中小企業の場合は特にそうです。

安田

ブログ書くだけとか、インスタ映えする写真を撮るだけとか、企画書のデザインだけひたすら考えるとか。

久野

あっという間に仕事終わっちゃいますね。

安田

だから正社員では無理なんですよ。

久野

なるほど。

安田

それに社員が減れば管理部門も縮小できます。給料計算とか、総務的な手続きとか、外注だったら必要ない。

久野

極論、社員が1人もいなければ管理部門なんて必要ないですからね。

安田

そうなんですよ。そして管理部門を減らしていくと、不思議なほど黒字化していくんです。

久野

私は社労士なんで特にそう思います。こんなの外注すればいいのにって。

安田

でも社内でやりたがるでしょ?

久野

はい。そこはやっぱりコストを抑えたがりますよね。

安田

コストダウンのための行動が、皮肉なことにコストアップに繋がってるんですよ。

久野

その通りですね。

安田

社員を増やすことで利益も増やしていくという時代は、もう終わったんじゃないですか。

久野

でも中小企業の経営者さんって、雇用とか育成が使命みたいに思ってる人が多いです。

安田

教えるのが好きな人も多いですしね。

久野

昔は辞めなかったからよかったですけど。今はそもそも辞める前提で就職しますから。

安田

そうなんですよ。会社が給料払いながら育成するっていうやり方では、もはや回収できない。

久野

教える側と教えられる側、両方のコストがかかってますからね。

安田

しかも、ある程度できるようになったら、見事に転職していきます。

久野

ゼロからの育成はもうキツイですね。

安田

雇用すること自体がもうキツイんですよ。外注だったら採用費はかからない、育成費もかからない。仕事頼んでみて駄目だったら、次から頼まなきゃいいだけ。

久野

頭では分かるんですけど、やっぱり切り替えられないですね。本当にそれで成り立つのかなって。

安田

月給20万でも実際はその倍ぐらいかかるじゃないですか。年間500万ですよ。10年間、絶対私辞めませんって言われたら5000万。社長の気まぐれで採っちゃったら5000万の負債ですよ。

久野

うっ。今ドキッとしました。



久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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