第215回 年収300万は助ける側!?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第215回「年収300万は助ける側!?」


安田

ネットで五公五民(ごこうごみん)がトレンド入りしてまして。

久野

そうなんですか。

安田

一揆が起きるんじゃないかと言われてます(笑)

久野

税負担のことですよね。

安田

はい。国民所得に占める税金や社会保険料の割合が5割に近いそうで。

久野

人によってはそうですね。

安田

2022年度は税負担が28.6%、社会保障負担が18.8%で、合計で47.5%と見込まれているそうです。

久野

累進課税ですから。所得によってはそのぐらいになりますね。

安田

昔は全部足して35%ぐらいが上限だったそうです。それが今は50%に近い。超える人も出てくるような勢いで。

久野

状況を考えると、国民の税金や社会保険料を増やす以外に手がないですから。

安田

税金半分、手取り半分の、五公五民が当たり前になっていくと。

久野

そうですね。

安田

江戸時代に「享保の改革」というのがあったのを覚えてますか?

久野

懐かしい。

安田

江戸時代の初期は「四公六民」だったそうです。飢饉が起こって五公五民にしたのが「享保の改革」で。全国で一揆が起こって大変なことになりました。

久野

その割合に近づきつつあるってことですね。

安田

これはもう一揆を起こすレベルだと。

久野

確かに半分取られるってキツイですよね。

安田

下手に出世すると税率が上がるので、夫婦で300〜400万ずつ稼ぐ人が増えてます。

久野

そうなってしまいますよ。

安田

久野さんは社会保険のプロですけど、この先どうなるんでしょう?

久野

社会保険は上がり続けます。

安田

なんと!

久野

1997年〜2020年の厚生年金って12.2%だったんです。企業と個人の合計が。それが今は18.3になってる。

安田

会社と個人が9%ずつ負担してると。

久野

そうです。健康保険はもっとすごいです。5.8から10%になってる。介護保険が0.98から1.79。全体で18.98から30.09に爆上がりしてるんです。

安田

30.09って凄いですね。

久野

会社が半分負担してるから実感が湧かないけど。実際そのぶんの収入が減ってるわけです。

安田

会社としては人件費という括りですもんね。

久野

そうなんです。この間に消費税が5%上がってるんですが、実は消費税よりも上がってるわけです。そして間違いなく、これからもっと高くなる。

安田

日本の税制って1人がたくさん稼ぐと高いですよね。

久野

はい。共働きの方が軽減されます。

安田

公務員も出世を望まなくなってるらしくて。公務員同士で結婚して、出世せず、適度に休み、そこそこ稼ぐのが最も豊かな生活だそうです。

久野

会社員も同じですね。

安田

はい。会社のために滅私奉公して働いても、どうせ半分は持っていかれるわけで。

久野

お客さんからもよく聞かれます。奥さんが扶養に入るべきかどうか。いわゆる106万の壁ですね。

安田

それ以上に稼ぐと一気に社会保険料が増えて。

久野

「頑張っていっぱい稼いだらいいんじゃないですか」ってアドバイスすると、イラッとされます(笑)

安田

そりゃそうですよ(笑)でも世帯収入を安定させようと思ったら、奥さんも稼がないといけないですよね。

久野

旦那さんだけで稼ぐのは限界があります。

安田

しかも1人で稼ぐと税金が高くなるし。

久野

同じ世帯年収だったら半分半分で稼いだ方が得ですからね。

安田

出世して600万稼ぐより、夫婦で300万ずつ稼いだ方が手取りも増えるし、仕事のストレスも減るし。

久野

そういう時代になりつつありますね。

安田

どう考えても労働意欲は上がらないですよ。フリーランスなら経費で落とすこともできますけど。

久野

会社員は強制的に徴収されますからね。

安田

会社員は逃げようがないです。出世してめちゃくちゃ稼ぐか、出世は諦めてのんびり過ごすか。中途半端が一番大変。

久野

もともと旦那さんが働いて、奥さんは専業主婦というのが前提なので。年金制度とかも含めて1回作り直さなきゃいけない。

安田

もう時代は変わりましたからね。でも日本ってこういうのが遅いですよね。

久野

年金の仕組みも無理があります。おじいちゃんたちの年金を若い人が負担するって。もう無理ですよ。

安田

おじいちゃんが少なくて若者が多い時代は良かったんでしょうけど。今はどう考えても無理がありますよね。

久野

厳しいです。

安田

ちょっと高齢者を優遇し過ぎに見えるんですけど。電車もただで乗れたり。

久野

そうですね。たくさん税金払った人をもっと喜ばせた方がいい。レッドカーペットを敷くとか。マイナンバーカードがゴールドだとか。

安田

「税金=働いた罰金」と言われますから。もう末期的ですよ。子供手当も年収が高いともらえなかったり。稼いでいる人が明らかに損をしていく仕組み。

久野

そもそも税金って社会貢献ですからね。税金を払って社会貢献してると思えばいいんですけど。

安田

社会貢献してもまったく気持ち良くないですから。「稼いでるやつからもっと取れ」とか「法人税もっと上げろ」とか言われて。払う気もなくなります。

久野

確かに。税金をたくさん納めてると嫉妬されたり。

安田

嫉妬されるし、稼げば稼ぐほど社会保障は目減りしていくし。

久野

国に対して圧力がかかってないのもよくないと思います。本当に一揆した方がいいかもしれません。

安田

そうなったら政治家も青ざめるでしょうね。

久野

でも日本人は一揆せずにむしろ適応しちゃうから。

安田

結局、選挙をやったら自民党が勝つし。もうやりたい放題ですよね。税金も社会保険料も遠慮なく上げ続けるでしょう。

久野

税金の使い道もよくないと思います。だから社会貢献感が薄れるんですよ。

安田

そうですよね。政治家が使いたいように使って。

久野

年収300万で健康な人って、本来は人を助ける側なんですよ。

安田

そんな発想の人はいないと思います。

久野

それが問題なんですよ。本来は傷害をお持ちの方とか、病気の方とか、高齢の人たちを助けていく立場で。

安田

逆に「助けてくれ」という声ばかりが聞こえてきますけど。貧乏で大変なんだって。

久野

お金持ちとか貧乏とかで助けるのじゃなく、そもそも健康か健康じゃないかとか、事情があって働けない人を助けていくものなんです。

安田

「金持ちが貧乏人の面倒を見ろ」みたいになってますもんね。

久野

そりゃあ払う気もなくなりますよ。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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