第383回 円安と株価上昇から考える日本の未来

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第383回「円安と株価上昇から考える日本の未来」


安田

日経平均株価が過去最高を更新しました。なんと7万円越え。

久野

特に半導体とAIを扱う会社の株価がすごいですね。

安田

「こんなのは一部の会社だけだ」「日本経済の状況をぜんぜん反映していない」という意見もありまして。どう思いますか?

久野

確かに偏りがあるのは事実だと思います。ソフトバンクもフジクラもAI関連の会社ですし。でもそれが日本の強みとも言えるわけで。

安田

そうですよね。家電や車に代わる分野が伸びていけばいいだけで。

久野

クラウドではもう負けちゃっているので。今から勝てる産業を伸ばしていくしかないんです。

安田

そもそも時代とともに主要産業も変わるべきじゃないですか。アメリカなんて30年前とは完全にトップの顔ぶれが変わっているわけで。

久野

はい。日本からAI関連の注目企業が出てくるのはすごくいいことだと思います。

安田

でも「株価高騰」を肯定的に受け止めている人は少ないですよ。

久野

メジャーな株式が苦戦しているからじゃないですか。ホンダとか日産とか。ああいう象徴的なところが伸びないと何となく安心できない。

安田

いつまでも自動車頼みなのはどうかと思いますけど。円安で利益を出されても素直には喜べないです。

久野

そうですね。円安が進めば輸出系の製造業は儲かるんですけど。物価はどんどん高くなっていくし生活リスクも上がっていきます。

安田

通貨の強さって国力そのものですからね。久野さんは円高か円安か日本の未来にとってどっちがいいと感じますか。

久野

基本は円高じゃないですか。

安田

やっぱりそうですよね。日本には資源がないので海外から輸入するほかない。安く買えるか高く買わざるを得ないか、この差は大きいですよ。

久野

20年前は1ドル90円ぐらいだったじゃないですか。それが今は160円になっているわけで。結局ドルベースで見ると日本経済ってほぼ成長してないんですよ。

安田

悲しいことですね。

久野

やはり円の価値が上がらないと人は幸せにならないと思います。円安は確かに一部の企業にとってはプラスかもしれないけど。

安田

日本は輸出で成り立っているとも言われてますけど。円高になっても問題ないですか?

久野

バランスの問題だと思います。確かにトヨタは為替相場で利益が出ていますけど、そもそも海外でめちゃくちゃ売れているわけで。

安田

為替での利益がなくても安泰だと。

久野

そうなんですよ。いかに「良いものを作るか」って観点が大事なわけで。為替で稼ごうという発想がそもそもおかしいんです。

安田

確かに本質からはズレてますよね。

久野

円安がいいっていう会社は「安く売る」ことが前提のビジネスモデルなんですよ。

安田

物価がどんどん上がっていくのは円安の影響が大きいですよね?

久野

いや、完全に円安の影響でしょう。日本は食料もエネルギーも輸入に頼っている国なので。

安田

人件費が上がっての物価高なら健全なんですけど。

久野

そうなんですよ。結局のところコストプッシュインフレなので。特にエネルギーが大きいです。ものを運んでくるのも加工するにも石油がいるわけで。

安田

資源もないし、そもそも農業しかなかった国ですからね。今や農作物も輸入してますけど。ちなみに円高にしていくにはどうしたらいいんですか?

久野

1つは利上げでしょうね。金利を上げないとやっぱり円が売られちゃうので。

安田

じゃあ日銀が利上げするのは理にかなった正しい戦略だと。

久野

はい。僕の感覚では年内にあと2回ぐらい利上げが必要だと思います。

安田

ローンで家を買っている人は金利が上がると大変ですけど。

久野

変動金利を選ぶと当然そうなります。経済が成長したら上がっていくのが当然なので。

安田

確かにそうですよね。固定金利で買う人って「日本の経済は伸びない」と思っているんでしょうか。

久野

そういうことでしょうね。

安田

でも経済が伸びないと円安がさらに加速して、さらに物価高になりますよね。

久野

はい。結局、円の力を押し上げるのは経済力なので。為替や金利をいじるだけでは続かない。そのためには新しく伸びていく産業を日本から生み出す以外ないんです。日本に魅力があるのかっていう問題ですから。

この対談の他の記事を見る



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

感想・著者への質問はこちらから