さよなら採用ビジネス 第75回「なぜグレーな仕事はなくならないのか」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第74回『eスポーツと車の未来』

 第75回「なぜグレーな仕事はなくならないのか」 


安田

レオパレスさんが2期連続赤字みたいです

石塚

ですね。

安田

レオパレスのマンションって、そこら中にありますよね。

石塚

はい。建てまくってますから。

安田

建てまくってるというか、売りまくってるというか。超営業会社というイメージですけど。

石塚

その通り。すごい営業会社です。

安田

最近は施工不良問題が頻繁に起こってます。

石塚

そもそもレオパレスって、かなり不誠実な会社だと私は思ってます。

安田

売上至上主義みたいなイメージですよね。部屋を借りた人が「壁がスカスカだった」と文句言ってました。

石塚

空いてる土地があれば片っ端から「賃貸物件やりませんか?」っていう営業。家賃保証30年とかってやるけど、そんなの真に受けられないじゃないですか。

安田

家賃保証して、ちゃんと払い続けるんだったらいい気もしますけど。

石塚

儲からなくなったら平気で「保証できなくなったんで」って、言って来ます。

安田

それはひどい。

石塚

だってこの人口減少社会で、アパート・マンションをぼんぼん建てて、人が入居し続けるわけない。

安田

彼らはそれを分かっててやってるんですか?

石塚

もちろん分かってますよ。分かっていてよくそんなの売るなっていう。

安田

じゃあ確信犯なんですね。

石塚

もちろん。よく土地を吟味して「ここはこういうシミュレーションです」ってやるならともかく。

安田

レオパレスのマンションってなぜあんなに多いんですか?

石塚

先を考えてないですから。

安田

そんな会社があそこまで大きくなれるんですか。

石塚

みんな知らないから。

安田

レオパレスと言えば「大きな会社」ぐらいのイメージなんでしょうか。

石塚

そんな感じじゃないですか。

安田

昔は立派な会社だったんですか?

石塚

いやいや。不動産業界では昔から「あの会社は」って言ってました。まあレオパレスだけじゃないですけどね。あの系の会社はいくつかある。

安田

じゃあ業界の人はみんな分かっていたと?

石塚

そうです。

安田

バレたのはやっぱりネット社会の影響ですか?

石塚

ネットでつぶやかれ始めたのと、大々的な事件になって認知度が一気に広まったのと。両方ですね。

安田

「ああいう系の会社」っておっしゃいましたけど。

石塚

はい。あるじゃないですか。

安田

レオパレス出身の人がやっている会社って、全部とは言いませんけど「営業力で売り切ってしまえ」みたいなのが・・・。

石塚

多いです。

安田

ですよね。売れ残った物件を「なんとか売ってこい」みたいな。

石塚

いま「正直不動産」っていうコミックが売れてるの知ってます?

安田

いえ知りません。正直不動産?

石塚

不動産業界って「“ババ”つかまされたら、それはあなたが悪い」っていう世界なんですよ。

安田

すごい世界ですね。

石塚

その中でトップセールスを歩んでた主人公が、ある日突然「自分の思ってる正直なことしか言えなくなってしまった」というストーリー。

安田

おお!それは面白そうですね。

石塚

それで「バカ正直」に徹していくという話。あのシナリオ書いてる人は業界のことをかなりよく知ってますね。

安田
ということは元々「ちょっと危うい業界」ってことですか?
石塚

おっしゃるとおり。だから不動産業界ってソーシャルステータスが低いんですよ。

安田

たしかにそうですよね。日本では。

石塚

もちろん良心的な方もいますけど。不動産屋って「必要以上に華美な高級車乗って、必要以上に高いものを身にまとう」っていう、あぶく銭のイメージ。

安田

「いい物件あります」みたいな架空情報を入口に掲げてるイメージです。

石塚

もう、お決まりの話ですよ。

安田

じゃあ、もともと業界全体がグレーってことですか?

石塚

そうです。

安田

でも大手デベロッパーは違うでしょ?

石塚

流石にわかりやすい手抜きしませんけど、その分バカ高です。

安田

でも有名なハウスメーカーさんでも、結構スカスカな家ってありますよね。

石塚

某不動産デベロッパーなんて、今どれだけクレームが出てるか。横浜の杭が刺さってなかった問題とか、ズレてたとか、あれもたしか同じ会社ですよ。

安田

ああ、たしかに。

石塚

で、杭打ちの会社に全部の責任を負わせて「いや、オレ知らないから」みたいな。まあ、そんなもんですよ不動産業界って。

安田

さすがにもうここまで来たら、レオパレスの物件買う人はいないでしょ。

石塚

売れなくなってますね。だから2期連続赤字なんですよ。

安田

そうですよね。会社として、もう存続するのは難しいですか?

石塚

ただレオパレスの販売先って“情弱”な人なんで。なんとかなっちゃったりするかもしれない。

安田

でも情弱な人とはいえ、この時代ネットで多少は調べたりするでしょ?

石塚

先祖代々いろんな土地を持ってて、何もしなくても暮らせた地主の人ってほとんどが「世界でいちばん学ばない人たち」と言われてますから。

安田

なるほど。じゃあ赤字を取り戻すために、利益率の高い「さらなる粗悪物件」を情弱な地主に売っていくと。

石塚

そう思います。

安田

でも騙し続けたとしても、さすがにどこかで終わりは来るでしょ?

石塚

どうなんでしょう。なんか続くような感じもしますけど。だってこの手の話って昔からあるじゃないですか。

安田

昔からあるのに、なぜみんな騙され続けるんですか?

石塚

安田さんがよく言ってることですよ。「ものごとをちゃんと考える人なんて、あんまりいません」って。

安田

確かに。会社の経営者でもいますもんね。

石塚

「売上が下がった。営業しろ!」みたいな。

安田

ですね。

石塚

「そもそもの存在理由から考えよう」とか「ブルーオーシャンをきちっと見つけよう」って人は・・・

安田

たしかに、そんな人あまりいないです。

石塚

いないじゃないですか。

安田

みんな楽して得したいですから。

石塚

そうそう。短期ですぐ結果出ることばっかり求めて。

安田

そういう人がいる限りは、ああいう会社の仕事もなくならないと。

石塚

なくならないでしょうね。「すぐ結果が出るいい話」なんてないってことを、学ばない人がまだまだ多い。


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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