ワタミの事業って外食から宅食に移ってるらしいですね。

はい。収益のメインは完全に宅食ですね。

これって、お弁当を介護施設に届ける事業ですよね。

介護施設だけじゃないです。自宅にも届けてくれます。

配達してるのは社員じゃないみたいですよ。

お弁当を届けるのは基本的に個人事業主として契約してる人。

1件配ると100円プラス地域手当で200円ぐらいの金額で。「最低賃金を割ってるんじゃないか」という議論もあるんですが。

ありますね（笑）

ただ問題になったのはそこではなく、個人事業主を束ねていた社員さん。20〜30人が所属する営業所の管理を2つも任されてたみたいで。

はい。

正社員はその人だけで、お弁当の手配から、宅配の管理から、クレーム処理まで。スタッフが休みのときには代わりに配達までして、とにかく重労働だと。

ものすごい重労働だと思います。

家に帰っても仕事があり、土日も仕事ありで。「あのまま続けてたら死んでたんじゃないか」って記事に出てました。ワタミはホワイト企業になったはずですけど。

いや、何も変わってないと思います。

何も変わってない？

はい。何も変わってないです。古くはアルバイト従業員の夜勤明け飲酒運転での死亡事故とか。たどっていくと90年代からいろんな労務の問題があるんですよ。

でもホワイト企業大賞を取ったじゃないですか。

極論、モンドセレクションみたいに参加企業は取れる仕組みなので。僕の印象はもう昔から同じ。「遠目の富士山」の一語に尽きる。

「近くで見たらゴミだらけ」ってことですね。

がれきの山ですね。

国会議員をやってた渡邉さんも戻ってきました。「うちはそういう部分と決別して、ちゃんとやります」って宣言しましたよ。

宣言してましたね（笑）

にもかかわらず、こういうことが起こってる。これは渡邉さんのあずかり知らぬところで起こってるのか。あるいは確信犯的に指示を出してやらせてるのか。

もともとの体質が抜けないってのがひとつ。外から見るワタミと中で働くワタミが、かなりギャップがあるってのが2つ。3つ目は会長のカリスマ性が強すぎるから、社員が忖度して本当のことが上にあがらない。

ということは渡邉さんがブラック労働を強いているわけじゃなく、現場が忖度して「やっちゃってる」ってことですか？

そう思います。もともとが、社員に赤鉛筆を12本1ケースずつ配って「今日やることをぜんぶ手帳に書け」って会社ですから。あそこは社長が手帳派だから。

懐かしいですね。「夢に日付を！」って流行りましたよね。

当時は手帳も売ってました。社員はまだ全員その手帳を持ってるはずです。

そこに夢を書くんですか？

今日やることを書くわけですよ。で「終わったら赤鉛筆で消せ。ぜんぶ消すまで帰るな」っていうのが新入社員のときからの刷り込み。

なんと！でも「そういうカルチャーとは決別してホワイト企業になります」って宣言したわけですよね。

はい。

あれだけカリスマ性のある会長が宣言したんですから。鶴の一声で「これからワタミは変わるぞ」ってなりませんか。

たぶん、かつての「経営と社員の関係」が変わってしまったことを、創業者はわかってないんでしょう。

どう変わったんですか？

社員は何でも理解してくれると思ってるんですよ。今でも。

社員から訴えられるとは思ってなかったってことですか？

思ってないでしょうね。

じゃあ現場でブラックなことをやってる事実はわかってた？

本人は感覚が飛び超えてますから。そもそもブラックという概念がないと思います。政治やってて現場を離れてた時間も長いし。

だけどこれって牛丼のワンオペよりひどいですよ。土日に「電話を切りたい」って言ったら「うちはお客さん第一なんだ！」って上司に怒られたとか。

だから変わってないんですよ。昔から。

タイムカードも勝手に改竄されて固定で26万円しか払ってないし。

そういうビジネスモデルなんですよ。

つまり、労働者から搾取しないと利益が出ない体質ってことですか？ワタミは。

そのとおりです。

え！そうなんですか。

だって収益の高い事業なんてひとつもないでしょ。

宅食はコロナで業績が伸びてるらしいですけど。それも社員の犠牲の上に成り立ってる利益ですか？

だってこれ、労基が入ってるので言い訳しようがないですよ。

今回の訴えに関してはそうですね。

社員に滅私奉公を強いるのが当たり前なんですよ。長年そうやって育ててきたし、それで育ってきた社員ばかりだから。急に変えろって言われても、なかなか体質は変わらない。

もし仮に、そこが変わったとしたらですよ。滅私奉公がなくなって、きちんと労働時間を計って、ちゃんと給料も払うとなったら、利益は出ないんですか？

出ないでしょうね。売上から経費を引いたら、最終利益はプラマイゼロみたいな。若干マイナスじゃないですかね。

ほんとうに「滅私奉公＝利益」で成り立ってる会社なんですね。

いい言い方をすれば「社員の頑張り」で儲けが出てた会社。

いまの時代には生き残れないですよ。労働法を守ってやったら。

あらゆる部分でこの会社は古いです。

あらゆる部分で？

人に対する考え方も旧い、採用も旧い、事業も旧い、お店も旧い、メニューも旧い・・・って、もうぜんぶ旧い。

「滅私奉公＝利益」という事実を、渡邉会長は自覚してるんでしょうか？

もちろん自覚してると思います。

ということは確信犯じゃないですか。

たぶん渡邉さんはもう事業も経営も分からないんだと思う。

あんなに凄い経営者なのに？

分からなくなっちゃったんですよ。

なぜ分からない人を経営に戻したんですか？

株は自分で持ってるし。自由に戻れますから。

なるほど。周りも大変ですね。

なまじ過去の成功体験があるから。「なんだかんだいっても、社員が少し頑張ればすぐ戻る」ぐらいに考えてると思う。

それって、つまり「社員が滅私奉公すれば」戻るってことですよね。

じっさい今回の店長も365日・24時間体制で働いてましたから。何も変わってないってことですよ。

「社員のやる気」という方向に、また梶を切っちゃったと。

変化が激しい時代に6年も永田町に行ってたから。浦島太郎になっちゃったんです。