2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第276回「大企業社員の転職事情」
アルムナイって、なんか懐かしい響きです。
アメリカでアルムナイって言うと同窓会っていう意味でしょ?
そうですね。
オレゴンアルムナイみたいな。
はい。同じ世代の卒業生の集まりみたいな感じですね。それが今、日本大企業の中で増えつつあるってことですか。
そうです。リクルートは昔からありましたよね。
元リクの会というのがあって。辞めた人同士の繋がりが強いです。
リクルート社自体が辞めていった人を上手に繋ぎ止めています。これを大企業がやるようになってる。
えー!時代は変わりましたね。「辞めるなら二度とうちの敷居は跨ぐな」って感じだったのに。
これまでの日本は新卒の就職が結婚だったわけですよ。
結婚?
辞めるってことは離婚する、実家に帰るみたいなイメージが強かった。
なるほど。離婚すると「二度と敷居を跨ぐな」ってことになりましたもんね。昔は。
だけど今は飛行機を乗り換えたり、電車を乗り換えたりする感覚に近づいたと思う。
そんなに軽くなったんですか。
「あ、俺ちょっと今度こっち乗り換えてみるわ」「じゃあ行ってらっしゃい」みたいな。「また戻ってきてこのバス乗るよ」「どうぞどうぞ」みたいな。
なんと。
これがアルムナイ採用と言われるものですね。
つまり出戻り採用ってことですね。
おっしゃる通り。離職も離婚も日本人があまり気にしなくなってきたっていうのが1番の理由ですね。
辞めると「裏切り者」扱いされて。戻ってくるなんてとんでもない話でしたけど。
そこが大きく変わったということですよ。1回卒業して、色々経験して、また戻ってくる。仕事も知ってるし、よそも経験してるし、いいことばかりじゃんっていう。
アメリカではそれが普通ですもんね。でも日本人は感情が先に立つじゃないですか。
そう。合理的じゃないから。
大企業の重鎮なんて、まさに感情的な高齢者というイメージですけど。よくアルムナイなんて許しましたね。
会社の寿命より自分の寿命の方が長いことに気づいたんですよ。人生の中でいろんな会社に所属するってことは、もうみんな共通の認識になったってことだと思う。
もうそこまでいってますか。
そういう価値観がすごく浸透してますね。
大企業でも?
大企業でも。「1回も転職せずにずっとここで」っていう人はもはや少数派です。
逆にそういう人の方が変な目で見られたりする?
そうなっていくと思います。「お前まだ転職したことないの?」って。昔でいう「お前まだ結婚してないの?1人でいるの?」みたいな。
なるほど。時代は変わりましたね。
同世代で集まって飲むじゃないですか。そうすると新卒からずっと同じ会社って人がいるわけですよ。
我々の世代は多いでしょう。
その人に「今1番やりたいことは何?」って聞くと「転職したい」って言うんです。
えー!
「転職したいよ石塚。俺は転職したい」って。「すればいいじゃん」って言うんですけど。「お前は気軽に言えていいよな」ってお決まりの話になっていく。
いま1番やりたいことが転職ですか。
正直、時代が変わったなって思いますよ。40代で1回も転職してない人はみんな悩んでますね。
50代、60代はどうなんですか?
「もはやこのまま」という感じでしょう。転職したいけど「もう俺には無理だ」って。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。