第278回「なぜ日本はオワコンに投資するのか」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第277回「ムードで払う2兆円?」

 第278回「なぜ日本はオワコンに投資するのか」 


安田

大阪万博の予算が当初計画の3倍ぐらいに膨れ上がっているそうで。

石塚

まあ役人が書く計画書ってこんなもんじゃないですか。

安田

民間で「計画の3倍になりました」とか言ったら、もう訴訟問題ですよ。

石塚

おっしゃる通り。何やってんのって話です。

安田

だけど公共工事の場合は許されちゃうわけですね。

石塚

少なく見積もってスタートして、途中で「やむを得ない事情で」って追加していく。東京オリンピックもそうでしたけど、これが日本の役人のやり方ですね。

安田

スタートで高いと国民がまたブーブー言うから?スタートは低めに抑えといて「結果的にかかっちゃった」みたいな。

石塚

まさにそんな感じです。

安田

そこまでして大阪万博なんてやる意味あるんですかね。

石塚

いや、おっしゃる通り。だって世界の珍しいものをわざわざ大阪に見に行かなくても。

安田

前の大阪万博の時とは全く事情が違いますからね。

石塚

そう。ネットで何でも見られるこの時代に、わざわざオワコンの万博やるの?っていう。

安田

前回のオリンピックもかなりオワコン感ありました。

石塚

ありましたね。もう利権だらけだし。アマチュア・スポーツの祭典なんて誰も思ってない。

安田

なぜ日本人はいつまで経ってもオリンピックや万博をやりたがるんでしょう。

石塚

万博に関して言えば「統合型リゾートの建設」を並行してやってますね。要するに大阪は収益源として賭博場を作りたいわけですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

万博に来たついでに統合型リゾートで遊んでもらって。ラスベガスまで行かなくても「大阪にもカジノがありますよ」って。

安田

そもそも万博に人が来るのかっていう問題もありますけど。

石塚

来ないでしょう。安田さんは前回の大阪万博の記憶はありますか?

安田

ありますね。当時は海外なんて行けない時代で。世界中の珍しいものを見る喜びがありました。月の石もあったし。みんな何時間も並んでました。

石塚

1970年ですもんね。

安田

もう時代は変わりましたよ。

石塚

相変わらず田中角栄以来の箱物を作って。もっとソフトウェアやイノベーションに投資できないもんかって思いますけど。

安田

今更カジノなんて作っても新鮮味ないですよ。

石塚

安田さんだったら万博じゃなくてどうします?

安田

世界でまだ誰もやったことないような博覧会をやるんじゃないんですか。

石塚

フランスは「世界のオタクが集まるフェスティバル」をやってますね。

安田

そういう路線がいいです。渋谷のハロウインもせっかく世界から人が集まってるのに。

石塚

数年前までは「ハロウィンの聖地渋谷にどうぞ」とか言ってたのに。今度は「渋谷はハロウィンの開催地じゃありません」みたいな。

安田

入場料を取ればいいのに。

石塚

なるほど。渋谷駅を降りてスクランブル渡るのに1500円かかるとか。ここで入場チケット買えみたいな。

安田

そうそう。VIP席も用意して。ものすごく高い金額で売る。

石塚

VIP席10万とか。

安田

お立ち台も作って使用料を取るとか。清掃費用や警備費用なんて十分賄えますよ。

石塚

そういう無形サービスの発想や企画力が日本人には足りないんでしょう。町そのものをうまく使う発想とか。

安田

そういう感性が乏しいですよね。残念ながら。

石塚

なぜ日本人はそういう発想が貧困なんだと思いますか。

安田

やっぱり教育じゃないですか。定型的な答えを覚える授業ばかりやってるから。

石塚

僕は上の存在が大きいと思いますね。70〜80代の老人がいまだに決定権を握っているので。

安田

だからいまだに「カジノだ!」「万博だ!」ってなるんでしょうね。

石塚

頭の中が80〜90年代で止まってる。ここが引退しない限り何を提案しても通らないでしょうね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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