泉一也の『日本人の取扱説明書』第43回「本の国」

 

日本は日の本の国である。国名に本が付くぐらいである。本質、本物、本当を大事にする国だ。日本は世界中に電化製品に日本食にと流行りを生み出したが、それは本質を大切にするから、人の本能にあった商品を作り、品質もよくできたのだ。残念ながら今の日本は、本質・本物・本当を大切にしない日奔国になろうとしている。世界に流行りを生み出せず、流行りに乗せられるばかりである。なので、本質よりも、目先。本質よりも、見える結果。エビデンスなどといった「言ったもの勝ち」的な流行り言葉に踊らされている。海老ダンス?なんとも気持ち悪い。語感の気持ち悪さにも氣づかないから、外国に答えを探しに奔走している。まさに本末転倒である。

日本という国の資本は人である。これが基本。人を基本にせずして、何を資本とするのか。土地やお金やブランドであろうか。土地をたくさん持ってお金持ちで知名度があっても、人はそこに信頼を置かない。おくのは銀行か詐欺師ぐらいである。土地もお金も知名度も世の中が変われば、一瞬で価値がなくなる。しかし、人の信頼はそんな簡単になくならない。信頼とは自分が得た財産でなく、その人が関わる相手の中に積み上げてきた財産だからだ。

その信頼関係という資産が日本ではどんどん目減りしている。なぜか。それはこの資産は成果に直結しないので、会社も地域も投資をしなくなったのだ。関係性から生まれる価値とは「ご縁」というように偶発。この偶発の価値が知られ、そこに投資する世になることが場活師の本懐である。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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