微調整のセンス

料理が得意な人と苦手な人。
その境目はどこにあるのか。
包丁使いが上手いかどうか。
料理の知識が豊富かどうか。
そもそも料理が好きかどうか。

色々な分け方が考えられるが、
ビジネス的に分けるならその境目はセンスである。
料理とは算数のようなものだ。
ルール通りにきちんとやれば誰にでもできる。

レシピに書かれた通りの材料を買い、
レシピに書かれた通りに分量を計り、
レシピに書かれた通りの手順で調理する。
余計なことをしなければ美味しい料理が出来上がる。

だがそれは標準的な美味しい料理に過ぎない。
つまり顧客に選ばれるプロの味にはならないのである。
料理もビジネスも根っこは同じだ。
先人が長い歳月をかけてつくり上げたレシピ。
ベースにはそれがある。

これまでにない料理やこれまでなかったビジネス。
そういうものも確かにある。
だがベースとなっているものは同じだ。
料理で言えば塩、胡椒、小麦、ワインなどの材料。
切る、焼く、煮る、蒸すなどの調理法。
そういうものの組み合わせである。

ビジネスならお金、会社、ネット、
広告、店舗、サイトなどの組み合わせ。
これらを一切使わずゼロから料理やビジネスを
生み出すことはできない。
それは数字や文字の発明から
学問をはじめるようなものである。

新レシピや新商品・新ビジネスは、
このベースのアレンジに過ぎない。
つまりプロと素人、得意不得意の差が出るのは、
そのアレンジスキルなのである。
同じミートスパゲティーというレシピでも、
誰がつくるかで全く違う料理になるのだ。

美味しいか美味しくないか。
魅力的な商品かどうか。
それはアレンジの仕方にかかっている。
アレンジは大きければいいというものではない。
もはやミートスパゲティーとは呼べないものを作っても、
ビジネス的に良い商品にはならない。

ほんの少しの変化。
ほんの少しの調味料やほんのひと手間の調理法。
それを加えることで料理はまったく別のものになる。
ビジネスもこれと同じである。

売り方、見せ方、使い方。
売る場所、売る相手、売る時間。
それらをほんの少し変えることで
ビジネスは無限にアレンジできる。

重要なのはそのセンスである。
ほんの少しレシピに手を加えることで
劇的に美味しくなるのか、あるいは不味くなるのか。
全ては微調整のセンスにかかっている。
ほんの少し変えてみる。ダメなら元に戻す。
その繰り返しによってセンスは磨かれる。

 

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