2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第104回「家庭が中心になる時代」
これから楽しい時代になる予感がします。
それはどういう意味で？
だって全員がリセットするような「時代の変わり目」なんで。
激動の時代が好きなんですね（笑）
好きです（笑）
でも業界によっては好きでは済まない事態になってます。たとえばパチンコ業界とか。
個人的にはパチンコ業界はつぶしていいと思ってます。
大胆ですね。
これを機に「要らないんじゃないの？」っていう業界や仕事は見直されると思う。
いちばん大きく変わるのは何だと思いますか？
それは業界・業種ってことですか？
働く形態とか、そういうものも全部ひっくるめて。いちばん大きな衝撃は何でしょう？
中小企業の数自体がものすごく少なくなる。
ほう。中小企業は数が減る？
ものすごく減ると思います。
それはどういう理由で？
正確に言うと従業員を抱える中小企業が減るってこと。たとえば安田事務所って安田さんだけじゃないですか。
はい。そうです。
株式会社求人ってのは僕と家内だけ。こういう会社や事業体がすごく増えると思う。
そこは賛成ですね。
その反動で、いわゆる事業所として人を雇ってきた会社はどんどん減る。
昔は「家族で豆腐屋やってる」的なビジネスがたくさんありました。
ありましたね。
ここ数十年はまさに会社の時代。「旦那が会社で稼いで奥さんが家事をする」というのが当たり前の感覚でした。
はい。その時代がそろそろ終わるんじゃないかってことです。
ちょっと昔に戻って「家族でやるスモールビジネス」みたいなものが増えると。
ネットを使えば昔よりずっとやりやすいし。新しいカタチのファミリービジネスが増えていくと思う。
家族で役割分担して。
そう。たとえば奥さんがすごく情報発信が上手だとか。
あり得ますね。
「仕事は旦那で家事は奥さん」という形態はもはや古い。
「1家庭1株式会社」みたいな時代が来ると楽しそうですよね。
さすが安田さん！それこそが令和の時代の家業ですよ。
ですね。これぞ家業って感じ。
家族みんなで「この商売がんばろうよ」って。社名を決めたり、ロゴを決めたり、子供もやれる範囲で手伝ったり。
いいですね！
家業に就職したっていいし。「その前に3年ほど安田さんとこで修行してくれ」みたいなのもあり。
お互いの息子とか娘を修行させ合ったりして。
いいじゃないですか。すごくいいですね。僕はやっぱり江戸時代に戻ったほうがいいと思います。
江戸時代と違うのはネットがあること。
ええ。スマホもあるし。はるかに面白いファミリービジネスができる。
集客も販売も、お店を構えなくてもできるし。
そうなんです。
それぞれが得意なことをやればいいわけで。家族の中に得意な人がいなければ外注したっていいわけですし。
そういう新しいファミリービジネスの時代がやって来る。子供のためにもすごくいいと思う。
決まった小遣いをあげるんじゃなくて、お店の手伝いとかをやらせて。
ええ。請求書を出す手伝いとか。
それこそ「家事もひっくるめた仕事の分担」みたいにしちゃえばいい。
大賛成。息子に「お父さんとお母さんはオンライン会議やってるから、ごはんつくっといて」とか。娘には「棚卸しやるから帳簿を一緒にチェックして」とか。
おお！素敵ですね。
そうやって小さいときからビジネスや商売を学ぶ。父親・母親が近いところにいるってすごくいいと思う。
コロナで学校が休みになって「勉強どうするんだ？」と言われてますけど。YouTubeで先生より上手な歴史説明とか、いくらでも聞けるわけで。
ですね。
学ぶ場もひっくるめて「家庭が中心になってくるんじゃないの？」って気がします。
「タダヨビ」っていうYouTubeチャンネルがあるんですけど。予備校の看板講師がタダで講義してるんですよ。
タダですか！
広告で稼げちゃうので。
確かに。
有名講師の人ってエンターテイメント要素があるから、学びが面白い。そんな良質なコンテンツが無料でいっぱいあるから、べつに学校にとらわれずともいいと思う。
そうですよね。ビジネスマンも今回のお休みで「べつに会社に行かなくても稼げるぞ」って気づいちゃった。
いろんな場所でちょっとずつ芽が出始めてます。
そうですね。会社も学校も、以前のようには人が戻ってこないかもしれません。
おっしゃる通り。とくに大学なんかはもう根本から揺さぶられてほしい。安田さんの息子さんが大学行く頃にはぜんぜん違う選択肢ができてる気がします。
少なくとも就職目的で「何百万もかけて学歴を買う」ってことには、意味がなくなるでしょうね。
おっしゃる通りです。
企業はどうですか。そのあたりの採用基準も変わっていきますか？
どうなんでしょう。ただ学生もバカじゃないので。優秀な人は新卒採用なんていう枠に入らないと思います。
そうですよね。中学ぐらいから自分で商売をやり始めると、わざわざ20万の安月給で会社員にならないと思う。
大手で働いた経験を身につけたいのであれば、2年限定で研修と割り切っていけば十分。
MBAを取る感覚で？
実はそれ、すでに一部の学生では始まってるんですよ。リセールバリューを考えて２年間だけ三井物産に行くとか。
18歳ぐらいで稼げちゃう人は、もはや大学にも行かなくなるかもしれません。
ホントですよ。安田さんだって、いま高校1年生とか2年生だったら、まず大学には行かないでしょ？
「行かない」という可能性はかなり大きいでしょうね。
貴重な時間を大学で浪費するのはもったいない。他にやることはいっぱいありますから。
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石塚毅
（いしづか たけし）
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
（やすだ よしお）
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。
