職種をリセットする

日本には400万社を超える中小企業が存在する。
その比率は全企業の99・6%。
つまりこの国のほとんどの企業が中小企業なのである。
昨今の労働法改正は
明らかにこの中小企業にメスを入れるものだ。

小さな会社が多すぎる。
生産性の低い会社も多すぎる。
労働生産性を高め労働者の収入を増やしていく。
そのために残業を規制し有給休暇の取得を義務化する。
生産性を上げられない会社は淘汰され、
生産性の高い会社に人材が流れる。
それがこの国のトップが考える絵図面だ。

私も生産性を高めることには賛成である。
だがこの戦略には大きな欠落がある。
それは生産性アップの手法を
何ひとつ明示していないことだ。
経営者に丸投げしても
そんな手法を編み出すのは不可能な話である。

そもそもすべての中小企業が
生産性を高められる方法などあるのか。
私はあると確信している。
そのポイントは雇用の見直しである。
正規雇用と固定給を見直さない限り、
すべての中小企業の生産性を上げることは不可能だ。

正社員を雇用し、できるだけ外に仕事を出さず、
社内にいる人間だけで完結させる。
無駄な費用を極力削ることで利益を確保する。
この戦略が致命的に間違っていのだ。
そもそもなぜ多くの中小企業は赤字を抱えているのか。

企業が赤字になるのは
稼いだ以上に使ってしまうからである。
これだけ節約しているのに
まだ無駄なコストがあるのだろうか。
ある。それは人件費だ。
同じ給料なのだからとできるだけ多くの仕事をやらせる。
これこそが赤字の元凶なのである。

その人が本当に得意なことだけをやらせる。
これだけですべての企業は黒字化する。
例えば営業マンには企画書づくりが得意な人、
ブログを書くのが得意な人、
紹介をもらうのが得意な人などがいる。
1人にこれを全部やらせると
苦手な仕事をする時間が増えていく。
それこそが赤字の元凶なのだ。

やるべきは仕事を分解すること。
そして得意な事だけをやらせること。
得意なことは早い。
だからあっという間に仕事が終わる。
仕事が終わったら帰らせる。
これだけで企業は黒字化する。

ただしそのためには固定給を無くさなくてはならない。
ブログや企画書の専門職を正社員雇用するほど
中小企業には仕事がない。
だったら何社かでシェアすればいいのである。
人を雇うのではなく必要なスペシャリストをシェアする。
雇わない経営こそが生産性アップの鍵なのである。

 


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