今週は!
卒業式&開業式の余韻、まだ冷めやらず。といったところであるが、今回も引き続き、ブランドファーマーズ・スクール第一期生10名のみなさんが開業するビジネスについて紹介したい。
五人目は金曜クラスの最後のお一人、大谷信さんである。大谷さんは、東京都出身の39歳。大学院卒業後、光学機器メーカーに入社し、現在もエンジニアとして働いている。元々の専攻は、物理。こちこちの理系と思いきや、さにあらず。文章やイラストにも才を発揮する“書く描くしかじかな理系”なのである。当人いわく「物事の本質を考えるのが好きで、おカタい技術をやわらかく、難解なテーマをわかりやすく、文章だけでなく図やイラストを使って伝えることを得意」としている。
こんな大谷さんのユニークネスの一端に触れることができるのが、ご自身が企画・運営するウェブサイトを通じて発信しているブログ【今週の気づき】である。スクールでお会いして以来、ボクもときどき拝見しているが、なかでもお気に入りは「うなぎから学ぶ価値と価格」。鰻屋で大枚7,300円をはたいて天然鰻重を注文し、食する過程から物事の価値と価格を紐解いていく内容であるが、これがじつに面白深い。いたって真面目な内容ながら、なぜか途中で笑いが込み上げてくる。
さてさて、このような人物からどんなビジネスが生まれたのか。紹介することにしよう。
-タグライン-
物書き好きなエンジニアによる商品開発と広報支援
-ネーミング-
屋号:engun-base
サービス名:モノづくりのモノがたり
-コンセプト文-
密着ドキュメンタリーってありますよね。著名人と数ヶ月のあいだ行動をともにし、その人の普段は表に出さない、自然体の姿を伝える番組です。この番組を見終わった後は、不思議とその人を応援したくなります。スポーツ選手なら、その選手の試合を観たくなり、職人なら、その職人の作ったものが欲しくなる。何を思い、どんな苦悩があり、どう乗り越えようとしているのか。その人の裏側を知る前と知った後では、思い入れが違っています。
僕はかれこれ10年以上モノづくり企業で開発・設計業務を行い、モノづくりの面白さを体験してきました。まわりから無理だと言われる難題に取り掛かり、頭を悩ませ、「これだ!」と思えるアイデアが出たときのワクワク感。そのアイデアも、実際やってみるとすんなりいくことは少なくて、新たな壁にぶつかったときの緊張感。いくつもの壁を乗り越えるたびに、洗練されていく技術。この過程こそがモノづくりの醍醐味ですし、ここに物語があります。
〈モノづくりのモノがたり〉は我々が一緒になって新商品を開発し、モノづくりの過程をお客さんにお伝えしていくサービスです。外部の人間だから見えること、技術者だからわかること、一緒に開発するから伝えられること、これらを言葉にしていき、モノづくりの過程をリアルタイムにお客さんに知ってもらう。商品ができあがる頃には、お客さんに商品を好きになってもらうのです。
僕は物事の本質を考えるのが好きで、おカタい技術をやわらかく、難解なテーマをわかりやすく、文章だけでなく図やイラストを使って伝えることを得意としています。わかりにくい物事に出会うと、わかりやすくしたくてウズウズしてしまいます。そんな僕だから、御社の商品の魅力を、もっとうまく伝えられると思うんです。
はじめての自社製品。世界初に挑戦する商品。社長と社員の思いのこもった商品。こうした商品を開発しながら、そこにある物語も一緒に作ってみませんか。
スティーブ・ジョブズやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの伝記で知られる米国人作家ウォルター・アイザックソンは、デジタル革命史を綴った『イノベーターズ』の序章で、次のように書いている。ボクがとても好きな文章だ。
―文系と理系、つまり人文科学と自然科学の交差点に立ったときに安らぎを感じられる人こそ、人間と機械の共生を創り出していく―
大谷さんは、まさに理系と文系の交差点に立てる人であり、そういう意味でサービス名である『モノづくりのモノがたり』は、じつに的を得たネーミングであろう。まずは所属する組織と個人の心地良い関係を模索しながら、お一人でビジネスの可能性を探っていきたいと言う大谷さん。いつの日か、日本のモノづくりの援軍となって羽ばたいてほしい。
一人目はこちら:藤原裕士さんのビジネスネーミング
二人目はこちら:二瓶琢史さんのビジネスネーミング
三人目はこちら:塚本健雄さんのビジネスネーミング
四人目はこちら:口無芳一さんのビジネスネーミング