2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第186回「みずほの終わりと金融業界の未来」
みずほホールディングスの社長が交代しました。
はい。
「これで変わっていきます」って言ってますけど。
無理、無理(笑)
今回の社長も興銀出身らしいですね。「ぜんぜん変わってないじゃないか」って書かれてました。
僕はみずほの社外取締役をもっと糾弾したほうがいいと思う。
え?社外取締役ですか。
6人ぐらいいると思うけど「なにやってんだ!」って言いたい。
まあこういう組織体制ですから。イエスマンに近い社外取締役を置いてるんじゃないですか。
そうなんですよ。でも一応、構造上は指名委員会があって。次の代表を決める指名委員会の委員長って社外取締役だから。
そうなんですね。
委員長の責任はどうなってるんだと。
なるほど。
メディアはもっと社外取締役に対して糾弾しないと。「おまえらなにやってるんだ」って言うべきなんです。
社外取締役ってそんなに権限あるんですか。
ガバナンスが効いてない原因って、社外取締役の責任が大きいですよ。高額報酬を貰ってる割になにもしてない。
みずほって元々興銀と富士がメインですよね。
そうです。
富士銀行も力のある都銀でしたけど。派閥には入れなかったんでしょうか。
たぶん興銀が9割ですよ。
そうなんですね。
第一勧銀出身は、一部例外を除いて全員いなくなったでしょう。
へえ〜。そういうふうになってるんですね。
富士も本当に少数だけです。
関連会社に行ってしまったとか?
ほとんど出ましたね。
辞めちゃったということですか。
50代はグループにも居られないはずです。
じゃあ実情は興銀が吸収した感じ。
おっしゃる通り。
興銀以外の人がトップになるなんてあり得ないですね。
あり得ないです。
つまり興銀のカルチャーが変わらないかぎり、変えようがないってことですね。
そうですね。商業銀行を2つ持ってる非効率さとか。4つのシステムを2社の運営会社で管理するとか。マンガみたいなことをやってますから。
組織の9割も掌握してるならシステムぐらい簡単に統一できそうですけど。
実質のポストはそうなんだけど。そこにいろんなものがひも付いてるわけですよ。
いろんなもの?
これは「もともと第一勧銀のお客さんだった」とか。いろいろ連続性があるわけです。
トップダウンが現場まで通じないってことですか。
要するに、根本的な改革をぜんぶ先送りしてきた歴史ですよ。
なぜ先送りにしちゃったんでしょう。
すごいパワーがいるし、絶対恨まれるし。だから先送りにしてきた20年ですね。
今回こそは「抜本的な改革をやる」と書いてました。
ムリでしょうね。
社内で若者の声が届く制度とか。「上の考えで勝手に決めずに、現場の声を吸い上げていく」って。
メディア向け工作のような感じがします。
根本的にはなにも変わらないってことですか。
はい。ここが日本企業の“宿痾”みたいなもので。本当に切り込む人なんていないんです。そもそもそんな人はトップになれない。
今の若手がトップになっても変わりませんか。
そこまでみずほ銀行があるんでしょうかね。
もう風前の灯火ですか。これだけの大きな会社が。
これだけ金融システムでトラブルを起こすと、金融庁としても放置できない。1回国有化して、根本的に入れ替えて、って考えてるでしょう。
うわさでは聞きますけど。本当にそういう可能性があるんですか。
前も言いましたけど、金融ハッカーなんかが入ると、とんでもないことになっちゃうから。信用不安とか、ひいては東京市場の金融システム自体にひびが入る。
国有化したらどうなるんですか。
国有化すると、いったん連続性にリセットがかかる。システムも当然入れ替える。
ゼロからやるってことですか。
そうです。
大混乱になりませんか?その間どうするんですか銀行業務は。
銀行業務自体はどこかで仮営業させて。下手に改築を重ねるより、隣の土地に全面新築して移転させたほうが早いから。そういう判断になるんじゃないですか。
それはシステムの話ですよね。そこ以外は基本的に変わらないってことですか。
どこまで金融庁が手を入れるかの話ですよ。
組織を変えないと、また同じようなことが起こりそうな気もしますけど。
おっしゃる通り。一旦ゼロにして、お客さんだけどこかの銀行にくっつけてしまうか。
そういう可能性もあるんですか。
あるでしょうね。「三菱、引き取ってくれよ」と。
そっちのほうが現実的な気がします。
国有化でワンクッション置いて三菱になる、みたいな感じかもしれません。
住友にはなりませんか。
そっちの可能性も当然ありますよ。もしくは「東と西で分けようぜ」って話もあるかもしれません。
なるほど。
「もうメガバンクは2行でいいよ。赤と緑でいいよ」ってことになるのかな。
あとは中小向けのメガバンクを北尾さんがつくれば、もう十分だと。
そうですね。3つでぜんぶ済むんじゃないですか。
4つも5つもいらないですよね。
いらないです。
学生にあれほど人気の業界だったのに。
今でも「銀行が安定企業だ」って考えてる20代はいます。もしこの対談を見てたら、絶対すぐキャリアを考え直したほうがいい。
そんな人いますかね。
これがたくさんいるんですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。