第150回 「のびのび育てたい」は親の願望?

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第150回 「のびのび育てたい」は親の願望?

安田

Xで「子ども自身はのびのび育ちたいとは思っていない」という投稿をされていましたよね。親が欲しいものと子どもが欲しいものは違うと。


倉橋

そうですね。親側の「のびのび育てたい」というニーズがあるだけなんです。

安田

それを読んで、なるほどなと思いまして。ペットフードは食べるのはペットだけど買うのは飼い主で、飼い主が「喜ぶだろう」と思うものが売れていく。でも人間の子どもはペットと違って「こんなのいらない」って平気で言いますからね。


倉橋

そうなんです。知り合いの保育園の経営者が「子どもはこういうのが喜ぶよ」と提案してきたことがあったんですけど、どれも子どもが面白がるようには思えなくて。

安田

へぇ、それはどんなものだったんですか?


倉橋

知育おもちゃみたいな、遊びながら力がつくという教育コンテンツですね。保育園の中では機能するかもしれませんけど、子どもが「明日もやりたい」とは絶対言わない。Switchでマインクラフトをやっている方がよっぽど楽しいですから。

安田

ああ、なるほど。確かに子どもってそうですよね。でもそれがわかってない人が教育業界にいるということなんですね。


倉橋

そうなんです。その保育園の売りが「無農薬の給食を出します」とか「自然でのびのび遊ぶ時間があります」とか。親には刺さるんですけど、子どもは無農薬のものを食べたいとか思うわけじゃないじゃないですか。

安田

確かに、子どもは体に悪いものばかり食べたがりますからね(笑)。でも教育業界は親さえ説得すれば成り立つわけですよね。塾だって子どもが自分から行きたいとは言わないけど、親が「行きなさい」と言えば行くわけで。


倉橋

そうそう。塾のターゲットは親なんですよ。だから親に選んでもらうためのメニューを開発する必要がある。でも万代のようなエンタメビジネスは全く逆で、子どもが行きたくないと言ったら家族は来てくれません。ファーストターゲットは子どもなんです。

安田

親の立場で考えると、もちろん自分も楽しいというのはありますけど、一番は子どもが本当に行きたがって喜んでいるかどうかですよね。子どもがつまんなそうにしていたら、もう次は来ないわけで。


倉橋

ええ。だからこそ子どもが潜在的に行きたくなるようなメニューを用意しないといけない。子どもの意思決定が最優先なんです。子どもからの矢印に親がついてきてくれるという構造を作ることが大事で、親の矢印で引っ張ろうとしても遊びの世界では通用しませんから。

安田

塾だったら親がファーストで子どもは「まあ我慢するか」という感じだけど、エンタメは子どもがファーストで親が「じゃあ行こうか」とついてくる。同じ親子ビジネスでもターゲットの矢印が全然違うと。

倉橋

そうです。塾だって、子どもは帰ったらSwitchやっていいよとか、何かしらご褒美があるから行くわけですよ。塾ファーストで選ぶ子どもはいない。もし僕が塾をやるとしても、ターゲットは親にして、親に選んでもらうメニューを開発しますね。

安田

なるほど。でもその塾の教材が子どもに受けているからといって、万代さんのような店で売ろうとするのは的外れだと。ターゲットが違うんだから当たり前ですけど、意外とそこを混同する人は多いんでしょうね。

倉橋

多いですね。一番間違えやすいのは、お金を払ってくれる人と本当のターゲットが異なるケースなんです。そこを見誤ると商品開発の方向が全部ズレていく。スーパー銭湯はそこをよくわかって家族メニューを作ってますよね。

安田

言われてみたら確かにその通りですね。私も子どもが生まれてから旅行先も飲食店もガラッと変わりました。本当は京都の静かな老舗旅館に行きたいんですけど、子どもは全然喜ばない(笑)。広いホテルで走り回れる方がいいんですよ。

倉橋

そうそう(笑)。そういう子どもの目線がすごく大事なんですよね。商品開発のメンバーにも、ターゲット目線を徹底しろとずっと言い続けています。

安田

ついつい子どもを連れている親に気に入られようとしてしまいそうですけど、そこがズレたら全部ズレるということですね。

倉橋

仰るとおりです。お金を払う親ではなく、本当のターゲットである子どもの目線を外しちゃいけないんです。

安田

なるほどなぁ。私も子どもを「のびのび育てたい」と思ってましたけど、子どもはそんなこと考えてないんですよね。駄菓子を食べてゲームをしていたい、というのが子どもの自然な姿なんでしょうね。

倉橋

ええ、それが正常ですよ。「のびのび」は親に刺さる言葉であって、子どもにはそんな概念がそもそもないんです。そこを理解しているかどうかで、ビジネスの精度はまるで変わってきますね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

Twitter  Facebook

株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから