タイパって知ってますか?
コスパよりタイパってやつですよね。
はい。お金より時間を優先する傾向が強くなっていて。アーティストのヒャダインさんっていう人が怒ってました。
ヒャダインさんは知らないです(笑)
じつは私も知らないんですけど(笑)
けっこう有名な人ですよね。
テレビにも出ていて。でもヒャダインさんではなくタイパの話です。
若者はタイパだって言いますよね。
はい。タイムイズマネーじゃなくタイムイズタイム。映画や音楽を早送りで聞く時代なんですよ。1日24時間しかないので。
凄いですよね。
昔は偉い人が忙しかったイメージですけど。
偏見ぽいけど、そうかもしれないです。
いまやもう全員が忙しいんです。やることたくさんあり過ぎて。隙間時間がないんです。SNSはあるし、ゲームはあるし、漫画も映画も見放題だし。
それで忙しいんですね。
それで忙しいんですよ。久野さんは仕事が忙しいんでしょうけど。
そうですね(笑)
それはもう古いですよ。今は仕事の優先順位なんて、そんなに高くないんです。
確かに。15位ぐらいかもしれないですね。
生活のために仕方なくって感じで。だから生活レベルを落としてでも時間を優先するわけです。
凄い時代ですね。
アーティストさんからすると、曲を早送りして聞かれたり、映画を早送りで観られるとなったら、もうアートじゃなくなるわけです。ある意味作品への侮辱ですよ。
仕事で見なくちゃいけない動画なら分かりますけど。
私もそう思います。楽しむための映画を早送りしてどうすんだって。だけど今は情報が多過ぎて。サブスクだから「たくさん見なきゃ損」ってなっちゃう。
それで処理速度を上げるわけですか。仕事みたいになってるじゃないですか。
ホントそうですね。たぶん現代人は情報処理が仕事になっていて、友達とのSNSでも送ってきたら即返さなきゃいけないとか。話題の映画も見とかなきゃいけないとか。
話題についていくのも大変ですね。
昔はベストテンだけ見てれば良かったんですけど。今はコミュニケーションするのに莫大な情報量が必要で。もう早送りしないと時間が足りないわけです。
凄い。
一番削られるのが仕事ってことになってくる。
仕事時間を削るのはいいんですけど、時間だけ短くなっていくのは困ります。タイムパフォーマンスを上げてもらわないと。
仕事のタイパも上げて欲しいですよね(笑)
そうですよ。でも仕事の優先順位ってそんなに低かったんですね。
働く人から見たタイパは、「出来るだけ短い時間で、出来るだけたくさん給料がもらえる仕事」なんですよ。それがタイパのいい仕事。
確かに。
江戸時代の一生分の情報が「現代では1日で得られる」と言われてたのが、もう20年ぐらい前。今は一生分の情報が1日で手に入る時代です。
1日もかからないでしょうね。
ホントそうですよ。昔は一生に一回、お伊勢参りとか、富士山とか、行けるか行けないか。
今だったらGoogleマップで見て終わり。行かなくても行ったぐらいの情報が手に入るし。
そうなんですよ。世界遺産も見なくちゃいけないし、世界中のアーティストの音楽も聞かなくちゃいけないし。とにかくやることが多い。
そこまで頑張らなくてもいい気がしますけど。
久野さんは仕事以外にあまり時間かけないんですか?映画を観たり、本を読んだり、音楽を聞いたり、SNSをやったり。
本は読みますね。映画も結構観たりします。
早送りせずに?
映画は早送りしないですけど、Netflixは1.5倍で見てます。
してるじゃないですか!
Netflixは1.5倍でも何とかなる気がして(笑)
それはドラマってことですか?
イカゲームみたいなやつ。「とりあえず内容を把握しとかなくちゃ」って。
若者と同じですね。アーティストさんがやる気をなくすパターン。
それも分かります。映画やドラマって間合がすっごい大事ですからね。
映画やドラマの作り方自体が変わって行くんでしょうね。
音楽もイントロが特徴的じゃないと、イントロでもう離脱しちゃうみたいです。
イントロが長いと駄目だって言いますよね。
イントロが長いと待ってられないんで、すぐ変えられちゃう。もういきなり歌わなきゃいけない。
映画の場合はどうなるんでしょう。サスペンスとか。
いきなり殺さないといけないとか(笑)
音楽も割り切ってサビだけの曲を作るとか。
そういう傾向らしいですよ。サビしか聞かない。本当に蛇口をひねるように音楽が流れちゃうので。
2倍速で聞かれるのを前提に、半分の速度で演奏するとか。
音楽は2倍速ってあんまり聞いたことないですけど。
そうか。音楽は倍速で聞くのではなく、サビ以外を跳ばすんでしょうね。
そうでしょう。10秒先まで早送りするボタンがありますから。
そのうちサビの部分だけのCDとか出てきそう。
可能性ありますよ。映画も重要シーンだけ50本分ぐらい繋げるとか。ビジネス書籍を全部まとめた動画とかも出てきてますし。
確かに。本を読まなくても10分動画見れば内容は分かります。そういう時代ですよね。
価値の本質が変わっちゃいますよ。
近所に5秒ぐらいで診察が終わる皮膚科がありまして。ほとんど流れ作業なんですよ。
診察はちゃんとして欲しいです。
通い続けてる人って、結局は同じ薬をもらうだけなので。そのクリニックすごく評判いいんですよ。短時間で、こっちがほしい薬を全部出してくれるって。
なんか本質から外れてる気がしますけど(笑)
久野さんが言うように、価値の本質が変わって来てるんですよ。割り切って考えないと。ほんとビジネスが難しい。丁寧にやったらお客さんが来るわけじゃないので。
確かにそうですね。
私が行ってる美容室もカットがめちゃくちゃ速いんです。10分ぐらいで全部終わる。だけど男性には大人気です。
分かります。私も美容室に行って、「とにかく30分で切ってくれ」って言うんです。「久野さん、めちゃくちゃ生産性高くてありがたいです」って言われました。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。