第7回 絶対当てるギャンブラー

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国13店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第7回 絶対当てるギャンブラー

安田
前回、倉橋さんは最初「個人事業主」として商売を始めたと聞きました。最初から法人で起業しようとは思わなかったんですか?

倉橋
う〜ん、思わなかったというより、法人として起業する知識がなかったというか(笑)。
安田
そうだったんですか(笑)。そんな中、個人として1年目から3600万円もの所得を得てしまって、「こんなに税金がかかるなら会社組織にしよう」と(笑)。

倉橋
そんな感じですね(笑)。それで4年目か5年目に法人化を行い、そのタイミングで滋賀のお店は社員に任せることにしました。そして私は新店舗開店のために仙台へ行くわけです。
安田
へえ、仙台に。神戸から車を走らせていて、滋賀でいい物件が見つかったからそこで開店、という話はまだわかるんですけど。なぜ仙台なんですか?

倉橋
滋賀で4年商売してみて、「ナイトマーケットは見込みがあるな」と感じまして。それをもっと人口が多くて、かつ娯楽の少ない土地で挑戦したいなと思ったんです。
安田
ナイトマーケットというのは、夜の時間帯ってことですか? そういえば滋賀の店舗は夜中2時まで営業してたんですよね。

倉橋
ええ。そして実際、夜中の方がお客さんは多かったんです。
安田
それで「ナイトマーケットビジネス」に着目したと。でも、京都や大阪などの都市部には既に夜の娯楽がたくさんある。だから仙台を選んだと。

倉橋
そういうことです。もっとも、仙台のほかに金沢と松山も候補に上がっていたんですけど。
安田
ほうほう。でも、その中だと仙台が一番ライバルが多そうですけどね。繁華街もあるし。なぜ仙台を選んだんですか?

倉橋
それでいうと、「夜の娯楽があるかどうか」を確認する一番簡単な方法があって。それは夜中のファミレスを観察することなんです。若者たちがたくさん集まっていれば、そこは「夜の娯楽が足りていない場所」ということです。
安田
ああ、夜遊ぼうとしても行くところがなくて、ファミレスに溜まってるわけですね。確かに仙台って、お金持ちの社長が行く飲み屋はたくさんあるけど、若者が遊ぶ場所は少なかったかもしれない。

倉橋
まさにそうなんです。実際、3つの候補地の夜中のファミレスには、若者たちが集まっていた。で、その中でいい物件が最初に見つかったのが仙台だったんです。
安田
ああ、なるほど。前回の滋賀同様、今回も物件ありきで場所を決めたんですね。ところで、一店舗目の滋賀は開業資金として1000万円かき集めたって仰ってましたけど、二店舗目の仙台にはどのくらい資金を持って行ったんですか?

倉橋
今度は3000万円くらい持っていきましたね。前よりももっと大きいお店にしようと思って。
安田
年間3600万円くらい稼いでたんですもんね。ちなみに、仙台のどの辺りでやり始めたんですか?

倉橋
いま万代の本社を置いている場所でもあるんですが、仙台市の南仙台です。そこで1000坪ぐらいのすごく大きい店舗を借りて。
安田
えっ、1000坪って、一店舗目の10倍ですよね。1000坪の店舗に置くほどのアダルト系グッズなんてあるんですか?

倉橋
ないですないです(笑)。ですから最初はスペースの半分をゲームセンターにして。「100円で15分遊び放題」という料金システムにしたんですけど、それがまためちゃくちゃ当たりまして。
安田
へえ。今でこそラウンドワンとかでよく見るシステムですが、当時は画期的だったでしょうね。そうすると、アダルトやリユースよりもゲームセンターの方が儲かったわけですか。

倉橋
そうですね。最初の頃はゲームセンターの方が儲かりました。ただゲーム機300台を1台あたり月1万円で借りていたので、毎月300万円くらい経費がかかりましたけど(笑)。
安田
毎月300万円分もゲーム機を借りたんですか! すごいギャンブラーですね(笑)。

倉橋
そうかもしれません(笑)。とはいえ私は、絶対当たると確信を持てるものにしか張りません。実際、ゲームセンターの会員は初年度だけで8万人まで伸びました。
安田
8万人! 経費はすごくかかったけど、それ以上のリターンがあったと。

倉橋
ええ。入会金が一人300円なので、年間2400万円がザッと入ってきて。それに加えて15分遊ぶごとに100円入るので……
安田
ああ、そうか。入会金だけじゃなく、そっちの収入もあるわけですもんね。8万人の会員がコンスタントに遊んでいたとすると、売上も初年度から億を超えたんじゃないですか?

倉橋
ええ、億は超えてました。でもそのビジネスは3年ほどしかもたなかったんですけど。
安田
ああ、そんなに儲かるならと、同業他社も参戦してきたんですね?

倉橋
仰る通りです。ライバルが出てきたことで、勢いがなくなってしまって。なので少しずつゲームセンターのスペースを減らして、3年くらいかけて全部をリユース店舗にしたんです。
安田
ああ、それが今の万代の原型になったわけですね。ちなみに仙台でそういう戦略を行っている時、一店舗目の滋賀はどうしていたんですか?
倉橋
ああ、実は滋賀は人にお譲りしたんです。仙台にいながら管理するのが難しくなったので。
安田
なるほど、売却されたと。やっぱりそれだけ離れていると目が行き届きませんよね。

倉橋
そうですね。営業時間も長い業態ですし、なかなか難しかったですね。
安田
営業時間と言えば、滋賀は夜中2時まででしたよね。夜のマーケットを狙うんだったら、もっと遅くまでやった方が儲かる気がしちゃうんですけど。
倉橋
ですよね、僕も滋賀でやってる時にそう思っていて。だから仙台の店舗以降は24時間営業にしました(笑)。
安田
ああ、そうなんですか(笑)。でも、それだとさらに多くのスタッフが必要になりますよね。仙台は何人くらいでスタートしたんですか?

倉橋
ええと、アルバイトを含めて40名ぐらいですかね。
安田
いきなり40名ですか! 確か滋賀の店舗は6名で回していたんですよね。それが40名ということは、採用経費だけでもすごい金額になりそうですけど……いやぁ、なんだか人生そのものがギャンブルのように見えてきますね(笑)。
倉橋
確かに、採用するだけでけっこうな金額がかかりましたね(笑)。でも、とにかく絶対当たるなっていう確信があったんです。潜在的なニーズがプンプン漂ってたので。
安田
ニーズに対する嗅覚がすごいんですね。

倉橋
そうかもしれません。ただ、確信がある分、初期投資にかなり突っ込んでしまう傾向があって。だからオープンする時はいつも金欠(笑)。最初は皆で焼肉を食べていたのに、お店をオープンする頃にはラーメンになったり(笑)。
安田
すごいなあ(笑)。普通はどれだけ確信を持てたとしても、どうしても守りは固めておきたいと思っちゃうものですけど……次回はその辺りを深掘りさせてください。

対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に13店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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