突然ですが、「雑草」とは何でしょうか。
「雑草という草はない」という名言がありますが、
社会的な定義も単に「そこらへんの草」だったり
「作物の害になる植物」だったり
「人類の活動と幸福・繁栄に逆らい妨げるすべての植物」などと
大仰なものまで様々です。
また、雑草は比喩としても昔から人気のワードであり、
日本では「たくましい」「強靭な」「へこたれない」などの
イメージの代名詞として愛用されてきました。
華美さがないことや人に注目されないという要素も
そこがむしろカッコいい…と思ってしまいがちな
日本人の精神性にはマッチしているのでしょう。
そんな雑草ですが、
植物界における「存在位置マップ」を作るならば
ばりばりのニッチに属する存在のようです。
生物は日々生き残りをかけて
自らの特性を武器に生存競争に励んでいるわけですが、
植物の場合、「自分が能動的に(ほとんど)動けない」ことが共通の特徴であるため、
それはイコール、周囲の環境に依存せざるをえないということでもあります。
言い方を変えれば、
寒さに強いやつなら寒い地域で勝負すれば競争に勝ちやすく(寒いけど)、
渇きに強いやつなら乾燥した地域でこそ生き残りやすいわけです(乾くけど)。
一方、暖かく、湿潤な地域はもちろん大人気スポットであり、
そこで思う存分太陽光をゲットするには
樹高が数十メートルに達する巨木であるなど、
誰が見ても明らかなフィジカルエリートでなければなりません。
雑草が強みを発揮するのは
「人間の影響などで環境の変化が著しい」場所です。
暖かく、水も豊富で巨木が君臨していた森を人間が開発して平地にした、
そんな場所こそが雑草のメインステージです。
当然、生えてくればほかの植物と一緒に人間に刈られてしまいます。
しかし、そこからが雑草の本領発揮となります。
競争相手よりも早く多く種を残し、
より簡単に芽生え、すばやく育ち、また刈られている間に
素早い世代交代を進め、それは進化にとっても有利に働きます。
気候に対する抵抗力があるわけでもなく、
恵まれたフィジカルを持っているわけでもなく、
人間の伐採に刈られるがままになっているにもかかわらず、
「種が受け継がれていれば勝ち」というニッチの取り方は、
むしろわれわれ民草に近い「弱者の戦略」といえるのではないでしょうか。
………と、受け取ることもできるのですが、
わたくしのようなある意味リアル雑草としては正直感情移入はむずかしく、
一方、人間世界にときどき存在する、
自らを雑草にたとえて不屈さを謳いあげる強壮な方々に対しては
いやおまえら巨木やん……もはやタワマンやん……
と見上げるだけなのでございます。