第36回 「自分は不幸だ」と思っている人へのメッセージ

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第36回 「自分は不幸だ」と思っている人へのメッセージ

安田

高校や大学の学費を、奨学金という名の「借金」として背負いながら社会人になっていく子がたくさんいるんですって。ご存知でしたか。


中辻

ええ、知っています。みなさん、10年20年とかけながら奨学金の返済をされていくらしいですね。

安田

そうなんですよ。しかも中には学費が払えなくなって、仕方なく学校を辞める子も少なくないとか。中辻さんも早くに学校から飛び出して社会に出られていますよね。


中辻

はい、15歳くらいから働いていますね。

安田

今日は、「若くして社会に出ざるを得なくなった子たち」に向けて、何かメッセージを送っていただけないかと思っているんです。不安だらけの世の中で、やる気をなくして悲観的になった若い子たちに、「こんな風に考えて頑張ればきっと未来は拓けるよ」というようなアドバイスをいただければ。


中辻

なるほど。そうだなぁ、私自身があまり悲観的なタイプじゃないので、難しいですね(笑)。

安田

そうか、中辻さんって悲観的に思うことがほとんどないって、以前にも仰っていましたっけ(笑)。


中辻

そうなんですよ。でもそうだな…。1つだけ言うとしたら「誰かのせいにしている段階では、その先の人生はお先真っ暗だと思うよ」ということですかね。

安田

え、その不幸な環境は全部自分のせいだよ、ということですか?!


中辻

ちょっと言い方が難しいんですが…。悲観している人ってその状況を誰かのせいにしている状態だと思っていて。たとえば未成年者だったらその「誰か」というのはほとんどの場合、親になるのかな。

安田

中辻さんは中学生の頃に、もうこんな家にはいられないという状況になりましたよね。それって自分のせいじゃなくて、親のせいにしなかったんですか。


中辻

もちろんそういう風に思ったこともありますよ。でも今の私から考えると、そのときはある意味「悲観的なストーリー」を作り上げていただけなんじゃないかと思っていて。

安田

悲観的なストーリーですか。


中辻

ええ。実は高校受験が目前に迫っている時に、父親とのいざこざで右手の指を骨折したんですよね。で、利き手を骨折したからもう勉強なんてできない。受験もできないから高校にも行けない。そしたら将来なりたかった美容師にもなれない。じゃあもう中学に行く必要なんてないや、となってしまった。

安田

へえ、そんなことがあったんですか。


中辻

はい。私、中学時代は不良ではありましたけど(笑)、ちゃんと定期テストは受けていましたし、進学もするつもりでした。でも骨折が引き金となって、それまでに張り詰めていたものがプツンと切れてしまったんでしょうね。

安田

それで家を飛び出し、学校にも行かなくなってしまったと。


中辻

そうです。でもそれって極論、左手を使ってでも勉強をしていれば高校には行けたはずなのに、私はそれをしなかった。要は、高校に行けなかったことを誰かのせいにしたかっただけなんだろうなと。

安田

なるほど、そう考えるわけですか。


中辻

自分の現状を誰かのせいにして嘆くのではなく、どうすればそこから抜け出せるのかを考えるべきかなと。たとえばお金がないから進学できないのであれば国の助成金を使えばいい。実際、授業料が免除される場合もあるんですよ。

安田

でも、貧困家庭ほどそういうことを調べるのに前向きじゃない人が多いんですよね。


中辻

残念ながらそうですね。もちろんそういう人生を歩むことになったのは全部が全部自分のせいではないと思います。ただ悲観している人ほど他人のせいにして、本気で解決しようと思っていないんじゃないかなあと。

安田

人生を好転させたければ、まずは他人のせいにすることを全部止めましょう。そういうことですね。


中辻

仰る通りです。いったん今の状況を受け入れる。で、そこからどうしていくかを考えればいいと思います。

安田

中辻さんも、最初は親や環境のせいにして家を飛び出したじゃないですか。でもそこから何をキッカケにして「他人のせいにすべきではない」というマインドに変わったんでしょうか。


中辻

それはやっぱり、お仕事を通じて関わってくださった人たちが、私のことを尊重してくれて、頼ってくれたおかげだと思います。

安田

なるほど。これまでの対談の中でも、中辻さんは周りの人に恵まれていたって仰っていましたもんね。


中辻

そうなんですよね。私は学歴もないし、プライドも全然高くなくて。だから周りの方もすごくフラットに接してくれるのかも。そういう出会いや出来事を通じて、自分の価値を社会の中で見いだせることに気づけた感じですかね。

安田

すごいなぁ。中辻さんと全く同じ環境で、同じように扱ってもらっても、そう思わない人もきっといますよ。せっかく良くしてくれているのに、「どうせ俺なんて…」って思い続ける人もいますからね。


中辻

それはちょっとひねくれすぎですよ(笑)。自分が幸せになるためには、他人のいいところを見たり、楽しいことを考えたりしないと。私はあんまり後悔もしないですし、周りにいる人やお客さんに感謝しながら生活しているので、日々、幸せな気持ちなんですよね。

安田

いやぁ、本当に素晴らしいですね。


中辻
誰かのせいにしたり誰かの悪口を言うよりも、まずは自分に協力してくれたり頼りにしてくれる人を見つける。で、そういう大切な人たちのために働いていけば、人生も明るくなっていくんじゃないでしょうか。
安田
いい話ですねぇ。本当に仰る通りですよ。悲観的な想いを抱えて、すべてをネガティブに考えていると、何も変わらないですから。

中辻

そう思います。私は特に広告のお仕事を始めてから、人のいいところばかりを見るような性格になれたと思うんです。広告ってお客さんのいいところを見つけて、それを宣伝するお仕事なので。

安田
素晴らしいです。自分の不遇を他人のせいにしない。これは私自身もしっかり胸に刻みたいと思います。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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