第157回 組織作りの「楽しさ」と「ストレス」

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第157回 組織作りの「楽しさ」と「ストレス」

安田

最近の傾向として、「人がどんどん辞める会社」と「全く辞めない会社」と二極化しているようなんです。中辻さんの『マメノキカンパニー』さんは後者ですよね?


中辻

そうですね、ありがたいことに人の入れ替わりは激しくないです。あ、そういえば以前、経理の方が帰ってくるのを待っているっていうお話をしたのを覚えてらっしゃいますか?

安田

ええ、もちろん。中辻さんの「社員愛」をひしひしと感じましたからね。


中辻

実はその彼女が、数ヶ月前に戻ってきてくれたんですよ! 最初はリハビリも兼ねて週1日くらいのペースだったんですが、今は週3日来てもらって、決算なんかもほぼ任せています。

安田

お〜それはすごい! 良かったですね。そうやって復帰したいと思ってもらえる会社がある一方、毎年1〜2割の社員が抜けていく会社もある。


中辻

もうそんなん、採用コストがかかってしゃあないですね…。

安田

まさに仰るとおりで。それだったら、最初から待遇をよくしておけば辞められることもないのに、という気もするんですが。そのあたり、中辻さんはどう思います?


中辻

うーん、難しいですね。というのも、私も経営側の立場になって早数年が経っているので、いわゆる「雇用されている側」の気持ちが分からなくなってきているところがあって。

安田

あぁ、中辻さんもそうなってきましたか(笑)。


中辻

なっちゃいましたね(笑)。会社や社員のためだと思っていろいろ考えていることも、結局は私の独りよがりなのかな、とか思ってしまうんですよ。

安田

中辻さんでも、そんな風に自信をなくしてしまう時があるんですか!(笑)


中辻

なんていうか、波がありますね。すごく絶好調な時と、悪い方にばかり考えてしまう時と。だからこそ、そういう経営者側の想いや考えなんかも、ちゃんとスタッフたちと共有することが大事なんやと思っています。

安田

共有って、つまりコミュニケーションを取るってことですか?


中辻

そうそう。というか今、ウチの会社は8期目なのでスタッフとも9年近く一緒にやってきているんですけど、なんと先日、初めて社内でちょっとしたトラブルがあったんです!

安田

え、そうなんですか?! 珍しいですね。


中辻

まあ仕事とは関係ないことだし、全然大したことではなかったんですけどね。ちょっとした気持ちのすれ違いからそうなってしまって。で、その時にやっぱりちゃんと向かい合って話をして、お互いの気持ちを伝え合うっていうのがすごく大事なんだなって痛感したんです。

安田

なるほどなぁ。でもそれ、経営者と社員の立場だと、なかなか難しくないですか?


中辻

まさにそうなんですよ! 私はこういう立場なので、仕事のことに関しては思っていることの8割、9割はズバズバ言えるし、時には厳しいことを言うこともあるわけです。

安田

でも部下は、社長に何でもかんでも言えないですもんね。


中辻

ええ、本当に。だからそういう立場の違いがある中でも、下の子たちが私に直接言ってきてくれるってことはありがたいことやなと思いますね。

安田

でも今って、社員に辞められてしまうのが怖くて、部下に厳しく言えない上司が多いんですよ。上司が部下を怒鳴るんじゃなくて、「部下が上司を怒鳴る時代」なんて言われるくらいですから。


中辻

え〜本当に?(笑) でも私はそれは好ましくないと思います。やっぱり仕事は仕事なので。「辞めて欲しくないから」っていう理由で注意もできないなんて、本末転倒な気がします。

安田

私もそう思います。ちなみに仕事をする中で、「嘘をつく」とか「ごまかす」とか、許せないことってあると思うんですけれど、中辻さんはどんなことが許せませんか?


中辻

私は「同じことを何回も言わされる」のがすごく苦手で。2回目までは丁寧に伝えますけど、3回目ともなると、ちょっとピキッとなってしまうんですよね(笑)。「同じこと、何回言わせるん?」って。

安田

あぁ…それは私も嫌だなぁ(笑)。


中辻

でしょ?(笑) 私の「教える時間」を無駄にしていることに加えて、何度言わせても平気なその「心」にイラッとくるんですよ。

安田

たまに、メモを取っているのにそのメモを見ずに聞いてくる人もいますよね。


中辻

いますいます! そういう人を見ると、「どうせそのメモ見てないんやったら、メモ取る時間がもったいないし、メモせんでいいよ」って普通に言っちゃいますもん(笑)。

安田

笑。そう考えると、やっぱり「雇う側」と「雇われる側」の壁って超えられないんでしょうね。経営者は「給料以上に働いて欲しい」と思うし、従業員は「働いている以上に給料をくれ」と思う。これはもう立場の違いだから、どうやったって超えられないんじゃないかという気がします。


中辻

なるほどなぁ。ちょっと話がそれるかもしれないんですが、今の安田さんのビジネススタイルって、あえて会社という組織を作らずに、「一人商店」のようなカタチでやられているじゃないですか。

安田

そうですね。やりたいプロジェクトごとにフリーランスの方などに声をかけるスタイルです。


中辻

それってビジネスとしては正解だと思うんです。実力のある人とだけで組むことで、常に品質がブラッシュアップされるし、何のしがらみもない。お互いウィン・ウィンなわけですから。…ただ、私はちょっと寂しいかなって思っちゃうんです(笑)。

安田

あ〜、なるほど。


中辻

私ね、安田さんってお仕事に対してちゃんと価値をつけて、お客さんに気持ちよく高単価で支払ってもらうのが天才的に上手やなぁと思っているんです。それは裏を返せば、安田さんのお仕事の質が、全てにおいて高いからで。

安田

そんな風に言っていただけるなんて、嬉しいです。


中辻

一方で、一緒に組んでやっているフリーランスの方からしてみたら、そういう質の高いお仕事を安田さんから回してもらえ、高い報酬をもらえる。これってすごく利害関係がしっかりしているなと思う反面、もしも安田さんがスランプに陥ったとしたら、その人たちって助けてくれるのかな、と。私はそこに寂しさを感じちゃうんです。

安田

いや、全然助けてくれないですよ(笑)。だから確かに私も寂しいです。でも「寂しさ」と「ストレス」とを天秤にかけて、今はもう「ストレスがない方」を選んでいるだけなんです。


中辻

やっぱりそうなんですね。安田さんってかつては大きな会社を束ねられていましたし、そこから会社を畳まれるまでの騒動とか、その前後では従業員も含めてたくさんの人が離れていく経験とか、すごくストレスのかかることばかりだったと思います。だから私もそういう思いをしたら、今の安田さんの仰っているように「寂しさ」の方を選ぶようになるかもしれませんけど…。

安田

いやいや、中辻さんはまだ早いと思いますよ。私が今の中辻さんの年齢だったら、まだまだ人を雇って組織化しているでしょうから。


中辻

そうですかねぇ。私は、自分も強くありたいと思っていますけど、自分がしんどい時・苦しい時にも一緒に支えてくれる人が、1人でもいいからいてほしいんですよ。

安田

うん、それが真っ当な「経営」だと思いますよ。組織を作る楽しさっていうのも間違いなくありますから。


中辻

そうですね、私も自分の中の幸せを崩さないように頑張りたいと思います。

安田

素晴らしいです。私も社員を大勢抱えていたことには、全然後悔はしていないんですよ。…まあ、私が年を取ったっていうことなんでしょうね(笑)。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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