経営は現実的な仕事である。どんなに素晴らしい未来を語っても、どんなに優秀な社員が揃っていても、資金が足りなくなればそれで終わり。人も未来もあっという間に遠ざかっていく。逆もまた然りだ。そこに素晴らしい未来などなくても、優秀な人材などいなくても、資金さえあれば会社は回っていく。
理想だけでメシは食えない。そんな言葉が聞こえてきそうである。それは事実だろう。だが逆もまた事実なのだ。確かに資金があれば会社は潰れない。ただし「資金が尽きるまでは」という条件がつく。語るべき未来もなく、有能な人材もいない。そんな会社の資金がいつまでも続くはずがないのである。
短期的には現実で回さなくてはならない。だが長期的には現実だけでは回らない。これが経営の難しいところである。マーケットがシュリンクし、人不足がこの先も続く日本において、現実経営は自殺行為と言っていい。ゆっくりと、しかし確実に、崖に向かって歩を進めている人と同じである。
現実経営とは要するに数字で判断できる経営だ。損ではなく得だけを取りに行く経営。これを徹底すると集まってくる人も同類になる。他社より安いから買う顧客。他社より高いから働く従業員。これで持続可能なビジネスが成り立つはずがない。断崖までの距離はこれからどんどん短くなっていくだろう。
経営者には現実を無視した妄想が必要である。今のビジネスの延長ではない、今の資金力では到達不可能な、理想しか語っていない妄想。妄想でメシが食えるのか?いや、妄想なき経営は中小企業にはもはや不可能なのである。損得ではなく妄想の共感によって集まる人たちが会社の未来を創っていく。
もっと安い会社はあるが共感できるからここで買いたい、という顧客。もっと報酬の高い仕事はあるが共感できるからここで働きたい、という従業員。それが持続可能なビジネスのキーワードだ。ただし実現には時間がかかる。妄想世界の共感者が増えるまで、その妄想を本気で抱き続けられるかどうか。
ここに経営者の本気が問われる。利益のためではなく「楽しいからやりたい」と心から言える妄想。心が欲する妄想でなければタイムラグに耐えられないのである。目の前のマイナスを単なる損だと思うのか。あるいは楽しい投資だと思えるのか。本気の妄想だけがタイムラグを乗り越えていく。
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