第390回 若者の心が折れる前に

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第390回「若者の心が折れる前に」


安田

現役世代の社会保険料が引き下げられると聞きました。

久野

まだ引き下げるとは決まってないですね。目指している、という感じ。

安田

目指してる?

久野

維新の吉村さんが社会保険の負担割合について指摘していまして。

安田

高すぎると?

久野

そう。今回も減税になりましたけど。社会保険の負担を減らすことが民意であると。

安田

間違いないですよ。とくに若者の負担が大きすぎます。

久野

それを公約に掲げてきたので、最終的には何かしら変えてくるとは思うんですけど。

安田

けど?

久野

社会保険料って税制より難しいんですよ。

安田

なぜ難しいんですか?

久野

税は下げても調整していろんなものに掛けられるじゃないですか。社会保険料は社会保障費に使われることが前提なので。年金とか。

安田

それが前提だと減らせないんですか?

久野

普通に考えたら負担が大きくなっていくはずなんですよ。それを逆に減らす施策は国としてなかなか打てない。

安田

なるほど。ただ、よく言われるように支える人数が減ってきてるじゃないですか。このまま増え続けると若い世代がポキっと折れちゃうかもしれない。すでに折れかけてますけど。

久野

日本はシルバーデモクラシーの国なので。有権者の大半はもらう側なんですよ。

安田

もらう側の方が多いって無理があります。お金持ちが貧乏人より多いみたいな状態。構造的に成り立たないです。

久野

はい。本来は年金改革や医療改革とセットで保険料を安くしないといけないんです。

安田

要するに高齢者の医療費負担を増やすってことですよね。私も高齢者の部類ですけど賛成ですよ。払える人は払えばいいんです。

久野

高額療養費に関してはこれから引き上がります。

安田

普通の医療費負担も増やせばいいんですよ。収入がなくても資産がある高齢者ってたくさんいますから。お金があるなら払って貰えばいいんです。

久野

日本は元来「資産には課税しない」というスタイルを貫いてきたので。

安田

そんなスタイルは変えちゃえばいいんです。背に腹は代えられない状況なので。若者なんて手取りが少ない上に資産もないんですから。

久野

物価も上がり続けていますし。苦しいですよね。

安田

そうですよ。お金を持っている高齢者まで若者が支える必要はないでしょう。

久野

金融所得課税に対しては社会保険料を取ろうという議論が出ています。

安田

「稼いだら取るよ」ってことですよね?

久野

そうです。稼いだ人は高齢者でも社会保険料を取る。

安田

稼いでいなければ負担がないってことじゃないですか。どれだけ資産を持っていても。

久野

そうですね。

安田

若い人たちに余裕があるならいいと思うんです。でも今の若者ってもう荷物が重すぎて。稼ぐ気力を無くしちゃってる感じがします。

久野

そうですね。どこかでやらなきゃいけないとは思いますけど。医療現場もどんどん儲からなくなってきてるし。

安田

だけど政治家はここを変える気はないと?

久野

「チームみらい」は社会保険料の見直しをやった方がいいと主張しています。減税なんかより社会保険料を見直した方がいいって。

安田

私もそう思います。所得に占める社会保険料の割合が高すぎますよ。

久野

若者中心の政党がこれから伸びてくると、日本も変わっていくんじゃないですか。まだまだ力が弱い感じですけど。

安田

そもそも社会保険料と税金ってなぜ分かれてるんですか。

久野

要は分けることによって入ってくる省庁が変わるわけですよ。

安田

省庁が変わるとどういうメリットがあるんですか?

久野

分けることで利権みたいなものも分散させていくわけです。

安田

そういう利権があること自体がおかしいですよ。

久野

そうですね。ただ予算が集まると利権は必ず発生しますね。

安田

別れているから余計にややこしい気がします。社会保険料もNHKも税金として一つにまとめて欲しいです。本当に必要なら税金で取ればいいんですよ。

久野

そうなったら国民も課題意識をもっと強く持つでしょうね。

安田

企業が負担している社会保険料も法人税みたいなもんですよ。

久野

それに近いでしょうね。

安田

分けるから負担が見えにくくなってしまう。全部まとめて、どれを優先するか、どれを削減するか決めるしかないです。予算がないんですから。

久野

本来はそうあるべきでしょうね。

安田

普通に考えたら高齢者も3割負担して支えていくしかないですよ。稼げば損する税制は成り立たないです。もっと稼ぎたくなるようにしないと。

久野

はい。日本は若者の足を引っ張りすぎだと思います。ただ有権者の年齢を考えると実現は難しいですよ。

この対談の他の記事を見る



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

感想・著者への質問はこちらから