【vol.294】2024年以降の航空業界(パーソナライゼーション)

GlobalPicks 〜海外の情報を読み解いて、ビジネスに付加価値を投薬する方法〜 著者:小出 紘道


引き続き「2024年以降の航空業界」についてみていきます。StartUSというスタートアップに特化したサイトの記事が面白かったので読んでみたいと思います。

今週の記事はコレ

https://www.startus-insights.com/innovators-guide/airline-industry-trends/
Explore the Top 10 Airline Industry Trends in 2024
(2024航空産業トレンドTOP10)

この記事の原文では
・10のトレンド
・各トレンドのインパクト係数(割合)
・各トレンドを牽引するスタートアップ企業
が紹介されています。

10のトレンドは下記の通りです。

1.Green Travel
2.Autonomous Flights
3.3D Printing
4.Personalization
5.Blockchain Security
6.IoT Connectivity
7.Immersive Simulation
8.Location Intelligence
9.In-Flight Entertainment
10.Biometrics

 

今週はTOP10から「3.3D Printing」を飛ばして(面白くなかったので)、「4.Personalization」の部分を読んでみます。

4. Personalization(パーソナライゼーション)

Airlines are using passenger data to create more enjoyable and convenient journeys. For this, they are leveraging advanced data analytics and technology to customize services and offerings to individual traveler preferences. This includes tailored in-flight amenities like seat choices and meal options to personalized loyalty program benefits and ticketing suggestions.

航空会社は乗客データを活用し、より楽しく便利な旅を創造している。そのために、航空会社は高度なデータ分析とテクノロジーを活用し、旅行者一人ひとりの好みに合わせてサービスやサービスをカスタマイズしている。これには、座席の選択や機内食のオプションといった機内アメニティから、パーソナライズされたロイヤリティ・プログラムの特典や発券の提案までが含まれる。

「leveraging advanced data analytics and technology to customize(高度なデータ分析とテクノロジーを活用)」することで、一人ひとりの好みにエアラインの側が合わせに行くことを「Personalization(パーソナライゼーション)」と呼んでいるようです。

「meal options(食事の種類)」をパーソナライズするのはとてもよくわかります。ただ、これって大抵のエアラインでは既に導入されている気もします。ハラル対応とか、ベジタリアン対応とか、フルーツ優先とか、のレベルですけど。

一方で「seat choices(座席の選択)」のパーソナライズって例えばどんな感じですかね?
エコノミーやビジネスなどのシートクラスの選択はそもそも「顧客の側」で行うわけですし、大抵の場合座席の選択も無償か有償かはあれど「顧客の側」で今でも指定しますよね?
これが「パーソナライズ」される、ってどんな感じでしょうか?

ちなみに、研究者じゃないのでわからないのですが、「Personalize=個人最適化」の結果は「Optimize=全体最適化」になるのか?ということをふと考えたりします。
パーソナライズを皆が極めていくと、一人ひとりの個人にとって「最適なシート」を提供されることになる未来になるわけですが、それって本当に「全体のOptimizeに繋がるのか?」という疑問です。
どこかで「個人最適化同士のハレーションが起きて、全体最適の阻害要因にならないのか?」という。。。

ここまで読んで、所感を書いてみて「パーソナライズ」がそんなに腑に落ちていない自分に対して「既視感」を感じています。
以前にも「空の旅の個人最適化」についての所感を書いた気がしてきました。

あ、これを書いていました(笑)

【vol.278】航空業界のトレンドや近未来(パーソナライズ) | Reeflet|リーフレット
(https://brand-farmers.jp/blog/gp_278/)

—抜粋
ここからは完全に個人の見解です。
個人的に、この「パーソナライズこそ絶対正義」の法則がそのまま航空業界に当てはまるとは思っていません。
特に空の旅を「非日常」と捉える多数にとっては「正義」かどうかすら怪しいと思います。
飛行機による「非日常の提供」とは、一定の「不自由」によって成立していると思っています。

「エアラインが顧客に合わせる(パーソナライズ)」ことよりも、「ちょっと不自由でも顧客側がエアラインの規定や制約に合わせる」ことによって、絶妙なバランスのもとに「非日常感が醸成される」側面がある産業だと思います。
「公共交通×エンタメとしての航空業界」の側面です。

なるほど、ほとんど同じことを書いている気もします(笑)

「パーソナライズこそ絶対正義」というのは現代の普遍的な正解の法則ですが、「不自由さ」が価値の一部を担う(←と思います)エアライン(出張利用ではなく、少なくとも旅行や娯楽としてのエアライン)は、そんなにピッタリ顧客の嗜好性に「個人レベル」で合わせにいかなくても良いのでは?と思ってしまいます。

むしろ「パーソナライズ」こそ、今や自分自身で達成できる領域とも言えます。
機内エンタメのパーソナライズなんて、既存の自前デバイスで好きな動画をオフライン保存して持込めば良いだけですし。。。

レガシーキャリア⇆LCCの選択、座席クラスの選択、食事の選択、エアラインそのものの選択が現在でも「自由にできる(=パーソナライズ)」わけですから、さらなる価値のあるパーソナライズって結構難しそうですね。
想像の上を超えてくるのでしょうか?
期待してみます。

 

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「本コラムと、本業ビジネスとの関係」(著者・小出紘道より)

本業ビジネスでは「マーケティング&戦略コンサル」の仕事と、「高付加価値情報提供サービス」の仕事をしています。本コラムは後者の「高付加価値情報提供サービス」の初級編としての入り口となればいいな、と思ってます。世界の誰かが”既にかなり研究したり、結論を出している”にも関わらず”日本では流通していない数値情報や文字情報”がたくさんあります。それらの情報を、日本のマーケットにフィットするように編集・分析すれば「競合他社」や「競合他者」を出し抜ける可能性が高まります。法人向けのサービスとなっていますので、詳細はFace to Faceでお伝えしますね。

著者情報


小出紘道 (HIROMICHI KOIDE)
◆株式会社シタシオン ストラテジックパートナーズ 代表取締役社長 http://citation-sp.co.jp
◆株式会社シタシオンジャパン 取締役会長 http://www.citation.co.jp
◆株式会社 イー・ファルコン 取締役 http://www.e-falcon.co.jp
<いわゆる経歴>
・2000年 株式会社東京個別指導学院に新卒で入社して、11ヶ月だけ働いてみた(→早めに飽きた) ・2001年 イギリスに行って、University of Londonで経済と国際関係を学んだり、Heriot-Watt Universityで経営学(MBA)をやってみた(→めちゃくちゃ勉強した)。この間に、イギリス人の友人とロンドンで会社を作ってみた(→イマイチだった) ・2003年 シタシオンジャパン社でマーケティングをやり始めてみた(→ろくにエクセルも使えなかった) ・2007年 シタシオンジャパン社の代表取締役社長になって経営をやってみた(→やってみてよかった) ・2018年 シタシオンジャパン社の社長を仲間に託し、引き続き会長としてコミットしつつも、シタシオンストラテジックパートナーズ社を設立してみた(→今ここ)
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