第50回「法律の抜け道ではないが」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第50回  「法律の抜け道ではないが」

サブマリン特許と言うものがありました。
特許出願後、公開がされないまま長期間が経ち、突如として成立する特許のことです。対象となる技術が広く普及した後に特許が成立するため、企業が支払うロイヤリティーや損害賠償金が莫大になることがありました。
「他社が実施してから権利が登録される」「登録までは未公開」という点が特徴で、後出しジャンケンに近いイメージです。

未来コンパスが指すミライ

法改正がなされ、サブマリン特許はなくなりました。
しかし、現行制度のもとでも、それに近い状況が発生しえます。それがサブマリン特許の意匠版、いわばサブマリン意匠です。

通常の意匠出願は、「登録までは未公開」と言う点ではサブマリン特許と同じですが、数ヶ月で審査が完了するため、他社に実施された後に権利が登録される可能性は高くありません。
しかし、特許出願(の図面)を意匠出願に変更することで、「世の中で実施されてから権利登録」&「登録までは未公開」に近い状況がつくれます。
と言うのも、特許出願は、登録されるまでに3~5年かかることはザラで、審査に時間を要します。そして、出願内容は、あるタイミングで公開されるものの、公開されるのはあくまで特許図面(=他者のデザイン模倣を排除する効力はないもの)に過ぎません。

つまり、意匠出願に変更されない限り、「意匠権としては」未公開の状態を作りつづけることができ、他社がデザインの模倣をしていることが分かった時点で、意匠権の取得をはかり、他者の模倣を排除できるという事です。

このように書くと、制度の悪用のように悪い印象を持たれるかもしれません。
しかし、実ビジネスにおいて偶然デザインが類似することは稀で、意図的に真似しているケースの方が多い印象です。意匠は物品の“見た目”のため、模倣が容易だからです。
資金の関係で、泣く泣く意匠での保護を諦めたけれども、他者に真似されてしまったようなケースに有効です。リソースの限られる中小企業に適している戦術と言えるかも知れません。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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