第107回「人的資本というワード」

このコラムについて
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 第107回  「人的資本というワード」

人的資本という言葉が人事業界でホットワードになっているようです。

会社の経営資源は、いわゆるヒト・モノ・カネが中核と捉えられるところ、モノやカネの情報は、財務諸表や有価証券報告書などによって公開されています。一方、非財務情報であるヒトに関する情報は、重要ながらも定量的に評価するのが難しく、積極的に開示する動きは日本では見られませんでした。

ですが、ここ一年ほどで人的資本に関する情報開示の動きが活発になっています。なぜか。
それは、2021年6月に東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを改訂し、人的資本について具体的に情報を開示すべきとしたからです(※)
実は、この情報開示については海外が先行しています。
国際標準化団体ISOが2018年12月にガイドラインISO30414を発表しました。また、米国証券取引委員会は、2020年8月にレギュレーションを改訂し、同年11月から上場企業に対しての人的資本情報の開示が義務化されています。

私の知人は、この情報開示サービスに関するベンチャーを立ち上げたのですが、日本企業に話しても2020年はほぼ門前払い。それが最近では商談にいきなり人事担当役員が出てくるとのこと。たった2年で激変です。
人的資本情報開示の本来の目的は、企業にとって最も重要な資産である「ヒト」の状態を透明性高く開示することで、人を大切にする本当に良い企業に、人と金が集まる仕組みを作ることのはずです。従来からその本質は認識されていたものの、実際に企業がアクションを起こすのは行政や東証による義務化という後押しが必要だったと分かります。

未来コンパスが指すミライ

ミライ予測の観点では、この義務化の兆しが重要です。
人的資本の例では、アメリカも日本も証券取引所の規定改定がトリガーになっていますが、その前にISOが整備され、情報感度の高い人たちの間では話題になっていました。つまり、ISOが兆しと言えそうです。
そして、情報開示が義務化されていないものの、ISOのガイドラインが既に発行されているものがあります。ISO56005、知的財産に関するガイドラインです(2020年11月発行)。
現行バージョンは、知的財産の重要性などの一般論が書いてあるもので、情報の開示義務に直結するほど整備されてはいない印象です。ただ、知財は、ヒト・モノ・カネに続く経営資源である「無体財産」の代表格ですので、一気に規定が整備・拡張される可能性はありそうです。(ISO56005は中国主導で作られたと言われているので、特に中国市場に影響があるかもしれません)
海外で義務化がされると日本も倣う可能性が十分にあります。そこにビジネスチャンスがありそうですね。
(※)その後2022年6月に内閣官房が指針案を示しました。また金融庁は、2023年にも一部の情報を有価証券報告書に記載することを義務付ける方針です。
 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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