クリニックもBCP対策を!〜お医者さんは、なやんでる。 第147回〜

第147回 「クリニックもBCP対策を!」

お医者さん
お医者さん
うーん、予想はしていたけど、医療業界のIT化が止まらないな。うちもいい加減電子カルテにしないといけないか。
お医者さん
お医者さん
しかし、うちは昔ながらの古い病院で、患者さんも大半は高齢の方だ。正直、必要性を感じないんだよな。情報漏洩も怖いし。
それに、システムが壊れたりしたら情報が取り出せなくなりますしね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうそう!停電したらもう使えないんだろ? なんというか、便利なのはわかるんだけど、大きな何かを犠牲にした便利さな気がするんだよ。……って、あなたは一体?
初めまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。ちなみに専門は電カルの導入でして。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
へえ!そうなんだ。それはいいところに来てくれた。実際のところどうなの?システムが止まっちゃったらお手上げなの?
まあ、そう簡単にシステムが完全にストップしてしまうことはないんですが、業者さんを呼ばないと復旧できない状態になることはあり得ますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだよね。でも最近何かのニュースで、電カル業者が不足していて、呼んでもすぐには来てもらえないって話を読んだよ。
ああ、ちょうど私も先週そんな話をしていたばかりです。業者を呼びつける時代は終わり、リモート対応が基本になるだろうって。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
やっぱりそうか。そういう話を聞くと、なおさら電カル導入に不安を感じるんだよ。それに、単なるシステムエラーならまだしも、自然災害なんかで長期間停電しちゃう場合も考えられるよね。
ええ。実際に東日本大震災の際、電カルが使えない、つまり患者さんのカルテが見れなくて困ったというニュースが頻発しましたね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うん。患者さんの持っていたお薬手帳なんかをもとに何とか対応した、みたいな話もあったな。でもお薬手帳だけだと、処方歴はわかるけどカルテ記録は見れないわけで。
そうですね。不十分な状況の中で診察せざるを得なくて、先生も患者さんも不安だったでしょうね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そういう話を聞くと、やっぱり紙カルテの方がいいんじゃないかって気がしちゃうんだよ。そのあたりどう思う?
そうですね。カルテの電子化は今後も進むでしょうし、電カル対応は遅かれ早かれ必須になると思います。一方で、非常時に情報が取り出せなくなるというリスクは消えない。ということで私の結論は、きちんとBCP対策しながら電カル導入を進める、ということになります。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
BCP対策?
はい。リスクマネジメントの1つで、自然災害や事件・事故などを予め想定し、緊急時にも対応できる体制を整えておくことを指します。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど。先ほどの話で言えば、大地震が起きて患者さんのカルテが見れなくなった時にどう動くか、あらかじめ考えておくということか。
ええ。さらに言えば、電カルが動かなくなった時のために、直近のカルテはPDF化したりプリントアウトしたりして保管しておく、などの事前準備も含みます。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、保険をかけておくってことだね。でも、そんなことをしなければならないなら、最初から紙カルテでよいような気もするけど。
全員分でなくてもいいのです。まず、患者さんを慢性疾患で定期的に来られている方と、風邪など突発的な理由で来られる方とに分けるんです。そして前者の方だけをPDF化しておく。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ、なるほどね。確かに後者のような患者さんの場合、前回の記録や処方内容はあまり必要じゃないものね。
ええ。なので「次回受診時にカルテ記録が必要な患者さん」だけをローカルで保存しておくだけでいい。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
それはわかったけど、でも、今回の情報はどうするの?前回のカルテが見れたとしても、今回のカルテは電カルに保存できないわけでしょ?
そうですね。今回の内容については、一時的にローカルのPCや手書きのメモなどで記録しておき、電カル復旧後に入力する形になりますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふうむ。まあ、そうなるか。そういえば会計はどうなるんだろう。電カルってレセコン一体型が多いんでしょ?
仰るとおりです。電カルが動かない=会計もできないというケースが多いと思います。そういう場合はシステム復旧後に支払ってもらうことになりますね。一時預かり金をいただいておくのもアリだと思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うーん、やっぱりなんだか不便が増えている気がするけど。
システムが動かない時のことだけを考えると、そう感じられるのも無理はないですが。全体で考えれば明らかに便利で、効率的になると思いますよ。それにBCP対策というのは、電カル関連に限らず、全体のオペレーションで考えておくものですから。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
確かにそうか。うん、BCP対策についてもしっかり検討してみるよ。ありがとう!

 

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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