お医者さんは、なやんでる。 第27回 「”ニーズの多様化”に合わせてはいけない」

第27回 「”ニーズの多様化”に合わせてはいけない」

お医者さん
お医者さん
最近はなんというか、患者さんの求めるものがバラバラになってきた感じがするなあ。「ニーズの多様化」って言葉はよく聞いていたけど、それがついに医療業界にやってきた感じだ。
お医者さん
お医者さん
これからは「幅広いニーズに応えられる病院」であることが重要なんだろう。
そうでしょうか。私はむしろ逆だと思いますね。今後はもっと、「ターゲットを絞り込んでいく」必要があるのではないでしょうか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ターゲットを絞り込む? 何を言ってるんだ。そんなことしたらこの「多様化の時代」についていけない……って、君は一体誰だ。
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふうん。でも、このご時世に「ターゲットを絞り込め」なんて、それでよく医者の相談に乗れるもんだ。そんなことをしたらますます患者さんが減っていくだけじゃないか。
お医者さん
お医者さん
今の時代に必要なのは、あらゆるニーズに応えられる病院だ。患者さん一人ひとり求めるものが違うのなら、それにできる限り応えていくのは当然のことじゃないか。
それはもちろんその通りです。しかし、あらゆるニーズに応えるということは、言い方を変えれば「個性をなくしていく」ということでもあります。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
いや、それは無理やり悪い言い方をしているだけだ。
そうでしょうか。今や誰もが自分の症状をネットで検索する時代です。「ウチはこれが得意です」というわかりやすい看板を掲げていた方が、患者さんも選びやすい。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
まあ……それはそうかもしれないが。
そもそも「あらゆるニーズに応える」というのは簡単なことではありません。現場には大変な負担がかかるでしょう。マンパワーが十分でないこの状況ではなおさらです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……確かにスタッフは大変かもな。
現場は逼迫し、結果、サービスの質も落ちていく。患者さんのあらゆるニーズに応えるどころか、最低限のクオリティを担保するのが精一杯ということになっていく。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……まあ、どれだけのことを求められるかにもよるが、あり得ない話ではないな。だが、君の言っていた「ターゲットを絞る」が解決策になるとは思えない。一体どういうことなんだ?
端的に言えば、ターゲットを絞る、つまり「得意分野を打ち出す」ことで、認知度が上がるのです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
得意分野を打ち出すって……伊藤病院のバセドウ病とか、榊原記念病院の循環器とか、そういうこと?
まさにそういうことです!「この症状ならこの病院」という認知が広がっていくことで、むしろ患者数は増えていく。「皆がネットで症状を調べる」という状況を逆手に取るわけです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど、一時的に患者数は減るかもしれないが、新規の患者さんが増えることで長期的にはプラスになるということか。
仰るとおりです。それに、やってくる患者さんのニーズもある程度限定的になるわけですから、現場のオペレーションもシンプルになり、スタッフの負担はむしろ減る。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどなあ。「広く浅く」ではなく「狭く深く」という戦略ってことだな。でも、「この症状ならこの病院」という認知を得るためにはどうすればいいんだ?
もっとも効果が高いのは、テレビ出演や本の出版です。公共のメディアに登場することで多くの方に知ってもらえますし、信頼度も高まります。ただテレビにしろ本にしろ費用と時間がかかるのが難点です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うーん、確かにそんなイメージだな。もう少し手軽に、かつスピーディに試せることがあるといいんだが。
ファーストステップとして私が進めているのが、WEBでの発信です。無料のブログシステムなどを使って記事を投稿したり、SNSでちょっとしたことを毎日呟いたり。意外とメルマガも効果ありますしね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどなあ。患者さんの要望に応えることばかり考えて、こちらから発信していくという発想はなかったよ。
ぜひぜひ始めてみてください。必要があればマーケティング戦略の専門家を紹介することもできますので!
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
本当かい? それは心強いな!

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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