「ワクチンの打ち手のバイトはするべき?」〜お医者さんは、なやんでる。 第52回〜

第52回 「ワクチンの打ち手のバイトはするべき?」

お医者さん
お医者さん
最近は、新型コロナウイルスのワクチン接種についてのニュースが多いな。摂取のスピードを高めるために、各地の医者も「打ち手バイト」として集められているとも聞く。
お医者さん
お医者さん
なになに、打ち手バイトの日給は……えっ、17万円!? ちょっと待ってくれ、これは下手すればクリニックをやっているより儲かるじゃないか。ただでさえ最近は患者数が減って売上が下がっているし……
お医者さん
お医者さん
うーん、休診日を増やして、そこで打ち手バイトに出るようにすれば、少しは売上の補填になるかもな。本気で検討してみようか…。

ワクチンの打ち手バイト、お医者さんたちが皆話題にしてますね。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
そうだろうね、「バイト」と呼ぶのがためらわれる金額だよ。しかも、行けば患者数に関わらずその金額が保証されると言うんだから、これは魅力的だ。……って、あなたどなたですか?

ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
ああ、つまり、医者ではないけれど医療業界には詳しい、というわけだね。……で、実際どうなんだい? ワクチンの打ち手バイトをしている医者も多いんだろうか。

ええ、多いと言うより、争奪戦になり始めています。募集枠を超える応募があるみたいですよ。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
うーむ、そうなのか。やっぱり皆、自分のクリニックだけでは苦しいということなんだろうな。

そうですね、先生のような状況に置かれている先生は多いと思います。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
そうなるとやはり、休診日を増やしてでも打ち手バイトに行ったほうがいいんだろうか。クリニックの売上を何かで補填していかないといけないし。

もちろんクリニックの状況によりますが、私は思い切って、クリニックを閉じてしまうというのもアリだと思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
は? 何を言っているんだ。クリニックの売上を補填するためにバイトに出ようと言っているのに、クリニックを閉めちゃったら元も子もないじゃないか。

お気持はわかりますが、儲かる予測が立たないビジネスは、早めに撤退すべきです。せっかく「確実に」儲かる仕事が目の前にあるのですから、休診日を少し増やして、というような中途半端なやり方をせず、打ち手バイトに全力で臨むのもアリだと思うんです。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
君ね…他人事だと思って簡単に言わんでくれ。だいたいね、打ち手バイトの仕事がいつまで続くかもわからないじゃないか。短ければ数ヶ月、長くても数年ってところだろう? それが終わった後はどうするんだね。

そこです。むしろ私は打ち手バイトが終わった後の計画を今から立てていきませんか? という提案がしたいのです。仰るように打ち手バイトは短期的なお仕事でしょう。その数ヶ月〜数年間の間に、次のビジネスの軍資金を作るわけです。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
む……次の……ビジネス?

そうです。今とはコンセプトの違うクリニックを始めてもいいし、この建物を利用してまったく別のビジネスを始めてもいい。いずれにせよ、今のクリニックを惰性的に続けているより、売上的にも先生のモチベーション的にも、大きな改善が図れる気がします。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
う〜ん、なんとなく言いたいことはわかってきたが、それでも難しいよ。新しいビジネスなんて簡単に考えつくわけもない。

そのための、バイト期間なんです。バイトをしている数ヶ月〜数年の間に、軍資金を作るだけでなくアイデアもしっかり練っておくんです。ワクチン接種会場は全国いろんな場所にありますから、移動時間や食事の時間だけでもいろいろな刺激を受けることができるでしょう。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
ああ……確かに、毎日家とクリニックの往復をしているより、いいアイデアが浮かびそうだな。

ええ、そうだと思います。もちろん熟考した結果、今のクリニックを再開させるのがベスト、という結論になる可能性もあるかもしれません。いずれにせよ、3年後、10年後、20年後という未来のために、いま数ヶ月〜数年考える時間を取るというのは、けっして非効率だとは言えないのではないか、ということです。ましてや、その間はクリニックを普通に運営しているとき以上の収入が確約されているわけですから。
絹川
絹川

お医者さん
お医者さん
うーむ、確かに一理ある話だ。既に視野が広がった気がするよ。

お医者さんたちは、優秀であるがゆえになかなか「常識はずれ」なことをしません。でも、今の世の中、ただただ真面目に従来どおりのことをしていても儲かりませんから、視野を広げる、自分の当たり前を疑ってみる、というのは非常に重要なことだと思いますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどね。そもそも、考えるだけならタダなんだ。いろいろなパターンをシミュレーションしてみよう。
いいですね!先生の新しいビジネスに期待しています!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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