第141回 閉店は「敗北」ではなく「新陳代謝」である

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第141回 閉店は「敗北」ではなく「新陳代謝」である

安田

以前、Xで「閉店は悪じゃない」と仰ってましたよね。でも一般的な感覚だと、経営者としてはお店を閉店しないに越したことはないと思うんです。


倉橋

確かに採算が合わずに閉店することが大半なので、できれば避けたいと思うのが普通ですよね。ただ僕としては、閉店というのは一つの会社やお店が変わること、つまり健全な「新陳代謝」だと思っているんですよ。

安田

なるほど。時代に合わせて変化していくことは必要なことだと。


倉橋

ええ。例えば20年前にオープンした店舗の立地やサイズが、今の時代に合わなくなっていることも多いじゃないですか。

安田

確かに、20年も経てば人々のライフスタイルはガラッと変わりますもんね。


倉橋

そうなんです。万代でも昔は24時間営業の店舗をやっていましたが、コロナを機に深夜のナイトマーケットというものはほぼ消滅してしまいました。

安田

そういえばそうですね。夜遅くまで開いているお店も減りましたし、2次会や3次会に行く人もすっかり少なくなりました。家に帰るのが早くなったというのは、肌感覚としてもすごくわかります。


倉橋

ええ。そういうライフスタイルの変化とともに、20年前に借りた立地の優位性が失われて危なくなったのなら、無理に続けるよりも「ポジティブな閉店」を選択するべきだと捉えているんです。

安田

理屈としてはすごくよくわかります。ただ、ニュースなどで駅前の老舗百貨店が閉店すると聞くと、つい「あの会社はもうビジネスモデル的にきついんだな」なんてネガティブなイメージを持ってしまうというか。


倉橋

そういう書き方をしているニュースもありますからね。ただ僕からすると、それはビジネスというものを単純化しすぎているかもしれないなと。会社もお店も、変わり続けない限り生存できないんです。例えばレコードショップは、レコードという商材が作られなくなれば当然なくなります。

安田

確かにそうですね。じゃあそのレコード店の場所で、売れそうだからと最新のiPhoneを売り始めればいいかというと、そんなに簡単な話じゃないわけですよね。


倉橋

そうですね。そもそもレコードを買う人に来てもらえるように立地も選んでいるわけですから。

安田

そうかそうか。その場所に固執して別の商売をするのは本末転倒ということですね。

倉橋

ええ。「長くやってきた場所だから」という理由だけで商売を続けるのは、かえって自らの選択肢を狭めてしまいます。例えばターゲット層が車社会になって駅前に来なくなったとしたら、「駅前の百貨店」という業態がなくなるのも仕方のないことじゃないかと。

安田

ははぁ、なるほど。私も新橋にオフィスがあるんですが、この10年くらいでだいぶお店が入れ替わったんです。お客さんたちは「あの店がなくなって寂しいね」なんて寂しがってますけど、それも健全な新陳代謝なんですね。

倉橋

そう思います。ある意味、生命体が寿命を迎えるのと同じようなものだと思うんです。だから嘆いたり悲しんだりしてもどうにもならないというか。

安田

確かに確かに。池袋駅前の百貨店が家電量販店やユニクロになって残念がっている人もいますけど、百貨店に行く人が減ったからそうなっただけですもんね。

倉橋

それが商売の残酷なところでもあって。ターゲットに支持されるものは残り、そうでなければ衰退していく。それが自然の流れなんです。

安田

なるほどなぁ。新橋や銀座で日本の昔ながらのお店が減って外資系のホテルやお店が増えているのも、日本が商売で負けたという話ではないと。

倉橋

そう思います。ただ単に、今のお客様の支持があるところに新たにビジネスが生まれているだけで、またどこかのタイミングで入れ替わっていくでしょう。

安田

そういう意味では、変化に柔軟な外資の方が商売上手なのかもしれませんね。外資系はどんどん出店しますが、見切りをつけて撤退するのも本当に早いですから。日本人はどうしても「一度出店したら簡単に撤退してはいけない」と頑なになってしまう。

倉橋

撤退も立派な戦略の一つだと捉えられるかどうかですよね。戦争と同じで、被害が拡大する前に引くべき時に引くのも、経営における重要な戦術です。僕が地元で商売をしないのも、撤退する判断がしにくくなるからでもあって。

安田

確かに、知り合いが多いとビジネスライクな判断がしにくくなりそうです。「倉橋くんの店、撤退したらしいよ」なんて噂されたら嫌ですもんね(笑)。

倉橋

そうなんです(笑)。やっぱりしがらみがない方が、ドライに撤退の判断を下せますからね。

安田

それはそうですよね。とはいえ、店を出して半年や1年のような短期間での撤退は、時代の変化というよりも経営陣の戦略ミスや事前の読み違いといった要素が大きい気もします。

倉橋

それはあるでしょうね。ビジネスで勝率100%を出し続けるのは非常に難しいですから。僕自身も昨年、経済的な理由で採算がどうしても合わずに3店舗を閉店させているんです。

安田

そうなんですね。早期の撤退も悪いことではないと。需要がなくなったら撤退し、より採算の合う場所で採算に合うビジネスをやるのが経営だということなんでしょうね。

倉橋

そう思います。うちはお店をオープンする時に、あらかじめ撤退するルールを明確に決めているんです。そこに抵触したら開発担当者が閉店の処理を粛々とする。物件を見つけてきた僕自身が閉店の判断をするとなると、どうしても感情が入ってしまうので。

安田

ははぁ、なるほど。社長自身が見つけてきた物件だろうと関係なく、ルールに沿って処理をすると。撤退判断を鈍らせないための見事な仕組みですね。結局、儲かっていないのに「せっかく作ったから」と執着してしまうのが、経営にとって一番よくないんでしょうね。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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