第32回「ペルシャ絨毯はすごく高いです。他にも高価な商品はありますか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「ペルシャ絨毯はすごく高いです。他にも高価な商品はありますか?」

   回答   

たしかにペルシャ絨毯は高いですよね。
他に高いもので、パッと思い浮かぶのは金やプラチナといった貴金属類です。
その交易が盛んな場所として、ドバイを例に挙げて考えてみると、ゴールド・スークという市場が有名です。
スークとはアラビア語で「市場」を意味し、ゴールド・スークでは名前の由来となっている金をはじめとして、ダイヤモンドや真珠などの宝石類が売られています。
ゴールド・スーク内の金のストック量は常時10トンとも20トンとも言われ、「世界の金取引の25%が行われている」という話があるほどですから、取引の活発さがうかがえます。


(↑店舗前で撮った写真。男性客のシャツの色味もゴールド寄り)


(↑ゴールドで覆われたスニーカーと野球ボール。金がどこまで素材として使われているのかは不明)

ゴールド・スークで扱われている金製品は14Kから18Kのものが多いのですが、保有資産としての金を求める人々のために純度の高い22Kや24Kの製品も潤沢に用意されています。
純度の高い金を求めるのは中国系やインド系の人々に多く、彼らは世界的に見ても金を多く保有したがる傾向にあります。
もちろん、アラブ人にも高純度の金を好む人は多いのですが、どうやら最近はその嗜好に変化が出てきているようです。

どういう変化かといえば、UAE女性の比較的若い層(おそらく20代から30代)の中では、金の純度にかかわらず、デザイン性を重視したものを選ぶ人が増えているとのこと。
UAE国籍を持っている人は男女問わず非常に購買力が高く(つまりお金持ち)、一昔前は「高いものが良いもの」という基準でモノを購入する人が多かったと聞きます。しかし今は、気に入るデザインなら比較的安価なコスチュームジュエリーでも抵抗なく身につける人が出てきています。
これは、以前にはあまり見られなかった傾向ではないかと思います。

同様の現象は貴金属類に限らず、ファッション全般にも見られます。
以前は服でもバッグでも「買うなら西欧のハイブランド」という傾向が顕著で、無名ブランドは参入しても到底通用しない空気がありました。現在もその傾向はあるものの、若年層を中心に「素材やデザインを気に入れば購入する」という人が増えています。
サウジアラビア人の知人(20代)と話をしたときには、「ユニクロの品質とシンプルなデザインが気に入っている」と言っていました。伝統的なスタイルの服も好まれているのですが、同時に我々日本人とそれほど変わらない感覚も持っているのだなと感じたことを覚えています。

こういった変化の背景にある要因として、性別によらない高等教育が浸透し、女性の高学歴化が進んだことや、女性の社会進出が進んでいることを挙げる人がいます。
もちろんそれもあると思いますが、個人的には外部の情報が昔よりも圧倒的に取りやすくなっていることが何よりも大きいのではないかと思います。今はスマホ1つで世界中のあらゆる情報にアクセスできますから。
当然ながら産油国の女性たちも流行に敏感で、常に最新のファッションに興味を持っています。リアルタイムで同じ情報に触れられる現在、モノ選びの価値基準については、我々日本人との差が以前より縮まっているかもしれません。

ところで、質問文にあるペルシャ絨毯と並んで、同じ中東地域ではトルコ絨毯も世界的に有名です。
非常に高品質で高価なものですが、以前イスタンブールのトルコ絨毯屋に入った際に、ものすごい販売攻勢をかけられたことを思い出しました。
スタッフ6人がかりでの絨毯爆撃ならぬ絨毯プレゼンがあり、完璧な手順とタイミングで次々と商品を繰り出してきます。

(↑我々一行のためだけに広げられていく絨毯の数々。絨毯の数とともに購買意欲も増していく)

そのプレゼンの完成度たるや芸術的と言っても差し支えないほどで、その場にいたお客さんはちょっとした催眠状態に入っていたと思います。きっとベテランの販売チームなのでしょう。
価格は素材やデザイン、サイズによって様々で、数十万~数百万の商品でしたが、周りの何人かは買っていました。
現地へ行く機会があれば、特に販売職の人は、一度体験されてみてはいかがでしょうか。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ) 

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながらイスラム圏ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。大阪在住。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

 

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