第155回 日本はもう「世界1位」を目指す必要は、ない?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第155回 日本はもう「世界1位」を目指す必要は、ない?

安田

今日は「日本の未来」について中辻さんの考えをお聞かせいただこうと思います。


中辻

日本の未来…ずいぶん壮大なテーマですね(笑)。

安田

笑。というのも、高市内閣が発足してしばらく経ちますが、高市総理って「日本には底力がある。絶対に巻き返してやろう」という強い意志を持ってやっているとは思うんです。でも現実の社会を見てみると、「世界1位になってやるぞ!」みたいなエネルギーはあまり感じないというか。


中辻

ほう、なるほど。

安田

それこそ昔の日本ってアメリカに次ぐ先進国でしたし、なんなら「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていたくらいだった。でも今では「別に1位じゃなくてもいいよね」っていうような空気も強いのかなと思うんです。中辻さんとしては、日本をもう一度盛り上げたいというような想いはあります?


中辻

あの…正直なところ、私は今でも日本はアメリカの次に位置していると思っているんですけど、違うんですか?(笑)

安田

それが違うんですよ。だいぶ下がっちゃっている。1人当たりの生産性で言えば、先進国最下位と言われてますから。


中辻

え、そうなんですか!? 日本人、こんなに真面目に働いているのに?

安田

確かに真面目なんですけどね。ただ働き方改革で労働時間はぐんと減ってしまい、かといって短時間で爆発的な利益を生み出せるようなクリエイティブが得意なわけでもない。今は人口がそこそこいるからなんとか持っている状態なんですよ。


中辻

そうなんや…難しいところですね。

安田

そういう話を聞いて、どう思います? 「悔しいから巻き返してやる!」みたいに燃えるタイプ?


中辻

そうですね。やっぱり日本人として日本に住んでいるので、日本のすごい技術や素晴らしいところをいっぱい知っているわけで。だからこそ「日本ってすごいんだ」って思いたい気持ちはありますもん。ちょっと話が逸れますけど、ちょうど先日、岡山で備前焼を買ってきたんです。

安田

お〜、いいですね。備前焼って素敵ですよね。


中辻

ええ、本当に。それでね、古くから伝わっている日本の伝統工芸とか技術って、やっぱりすごく魅力的だなあと痛感したところだったんです。だから、こんな素晴らしい伝統がある日本が世界に追い抜かれているって知って、今、軽くショックを受けています(笑)。

安田

確かに日本って、食べ物も美味しいし治安もいい。職人さんたちが作る質の高い商品もいっぱいある、自然豊かな国なんですよ。かと言って、今からAppleやGoogleのような会社を作って逆転しよう、というのは無理があるじゃないですか。


中辻

確かに。戦う土俵が違い過ぎますね。

安田

そうそう。だから私としては日本人じゃないとできないことを極めていって、皆が心地よく生きていければいいんじゃないのかなあと思うんですよ。別に先進国の1位にならなくてもいいんじゃないかなって。


中辻

そもそも生産性だけ上げていっても、必ずしも「豊かな暮らし」に直結する気がしないんですよね。国としてはお金に余裕ができるのかもしれないけれど、私たち末端の一般市民のところまで、その利益が還元されるのかも疑問ですし…(笑)。

安田

同感です。結局、多くの日本人は「もうちょっと手取りが増えたらいいな」「物価が下がったら嬉しいな」とは思うものの、「国際競争で先進国トップに躍り出よう!」みたいなことは望んでいないのかもしれないですね。


中辻

本当ですね。自分たちの健康や精神的な安定を犠牲にしてまでも、トップを目指す必要はないと思います。

安田

ということは、これからの日本は、日本なりの豊かさを求めて追求していくのが良さそうですか?


中辻

そうですね。例えばトヨタのレクサスって内装に「江戸切子」のデザインが使われているものがあるんですけど、世界で大絶賛されているらしくて。日本人が作るものの繊細さって、やっぱり世界に通じるんでしょうね。

安田

うん、確かに。日本人ならではの細やかな仕事は、強みになりますね。


中辻

そういった日本の魅力を丁寧に伝える企業が増えていけば、がむしゃらに生産性をあげようとしなくても、日本なりの「質の高い豊かさ」みたいなものは守れるんじゃないかなと思います。

安田

なるほどなるほど。無理にアメリカの背中を追うのではなく、日本にしかできないことを極めていくことが、結果的に日本の未来を明るくしてくれるだろうということですね。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

Twitter

1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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