第112回 同じモデルのはずなのに売上が伸びない

 // 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 //
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

 

今週のゲストは開業4年目を迎え、出店の加速を目論んでいる2006年の辻本くん。

これまで出店してきた3店舗が軌道に乗ってきたこともあり、2006年に同じモデルのお店を一気に3店舗出店したものの、どうやら軒並み苦戦している様子。

「同じモデルなんだから既存店と同じ結果になるはず」
そう期待していた辻本くんの見込みはどこで狂ってしまったのでしょうか?


「同じモデルなら同じ結果になるはず」
そう考えた当時の辻本くんの見込みが狂ってしまった原因。

その原因を今から振り返って思うのは「同じモデルだったからこそ、期待していた結果にならなかった」ということ。

2005年までに出店した3店舗と、2006年に出店した3店舗は全く同じモデル。
ただ一点、違いがあったとするならば、それは「創業メンバーがお店にいるか、いないか」の違い。

既存3店舗は開業から2006年まで創業メンバーがお店にいた一方、2006年に開業した3店舗の開業には創業メンバーがお店にいなかったのです。

こんな風に書くと、創業者がすごいと言いたいのかと思われてしまうかも知れませんが、そうではありませんし、3店舗が期待通りにならなかった理由もスタッフの力不足だったと言いたい訳ではありません。

問題だったのは、既存3店舗の「商品」には「創業者」という価値が含まれていたことに気づかなかったこと。つまり創業者がお店にいるからこそ売れていたモデルであり、逆に言うなら、創業者がお店にいなければ売れないモデルだったといえる訳です。

そう考えるのであれば、2006年に開業した3店舗でやるべきだったのは、既存と「同じモデルの継続」ではなく「新しいモデルの創造」であり、お店の商品価値を新しく作り出し、その伝え方も変える必要があったのです。

私たち店舗オーナーは、つい自分の存在価値を軽視して、お店が売れている原因を「店舗のモデルを作ることが出来たからだ」と考えてしまいがちです。でも、小規模経営においては創業オーナーがお店にいる限り、その存在が集客に影響を与えることは避けられず、むしろその存在こそが大きな集客要因になっている場合が多いと私は考えています。

当時の辻本くんは期待通りの結果にならない現実に疑問を感じているようですが、今から思えば大きな集客要因が欠けてしまっている以上、期待通りの結果にならないのは当然かも知れませんよ、と辻本くんに伝えたいのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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