第177回 トップダウンの功罪

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第177回「トップダウンの功罪」


安田

中国のゼロコロナ政策ってどう思いますか。

久野

凄いですよね。やり切る力が。

安田

3人コロナ感染者が出たから都市封鎖って。確かに凄いですけど。

久野

中国はトップダウンで全て動かせるので。日本なんて空気を読んでみんなマスクしてるだけ。国が義務的にやらせることなんてできないじゃないですか。

安田

でもちょっとやり過ぎじゃないですか。ドアを釘で打ち付けたり。

久野

歯止めが効かないという怖さはありますね。

安田

そもそもゼロコロナなんて出来るんですか。ウイルスを完全に無くすなんて不可能な気がしますけど。

久野

難しいでしょうね。中国といえども。

安田

ですよね。でも言うことを聞かないと逮捕されたり。

久野

言うことを聞かざるを得ないというのが本音でしょう。

安田

ロシアも一緒ですよ。戦争反対って思っていても言えない。

久野

命がけですね。

安田

水面下では国民の不満がうず巻いてると思うんですよ。

久野

はい。その可能性は大いにあります。

安田

中国は内乱によって政権交代してきた国ですよね。外からの攻撃には強いけど、国民が蜂起したら一瞬で政権が倒れてしまう。

久野

それを一番恐れてると思います。

安田

今回の都市封鎖って、けっこう際どいことやってるように見えるんですけど。

久野

はい。ストレスはすごそうです。

安田

なぜそんな危ないことをするんでしょう。

久野

トップダウンの組織はどうしても軌道修正が遅くなるんです。

安田

トップが軌道修正しちゃえばいいのに。選挙のことなんて考えなくていいわけだし。

久野

「誰の責任だ」って話になるんですよ。下手したら首が飛んじゃいますから。

安田

でも中国のトップも「ゼロコロナ政策は間違いだった」って、気付いてますよね。

久野

そう思います。

安田

ゼロで抑えられればよかったんでしょうけど。どんどん増えちゃって。

久野

ゼロは無理だったってことでしょうね。

安田

そういう結論がもう出てますよね。それでも封鎖し続けてるじゃないですか。

久野

中国はできる国だってことを、示し続けなくちゃいけないので。それに初期段階は上手に乗り切ったじゃないですか。

安田

最初はそうでした。「さすが中国だ」って世界に見せつけてる感じでした。

久野

あれをもう1回、「やっぱり中国だよね」って話にしたかったんですよ。

安田

どちらかと言うと冷ややかな目で見てますけど。

久野

独裁国家だから空気が読めてない感があります。

安田

人命に関わる猛毒コロナならともかく。もう毒性も弱まってると言われてるし。

久野

そうですよね。

安田

コロナが死因の人の倍ぐらい、コロナ関連で死んじゃった人がいるそうです。重症者が病院に入れないとか。

久野

統計的にはそういう結果が出てます。

安田

もう自然に任せながら集団免疫を獲得するのがいいと思いますけど。

久野

どこかでそういう方向に持っていくでしょうね。持っていかざるを得ないというか。

安田

だけど中国は「ゼロコロナ無理だった」とは言えないでしょう。徹底的にゼロになるまでやり続けるんですか。

久野

どうするんでしょうね。蔓延すると「国家転覆のリスクが高い」という思い込みから始まっているので。

安田

そっちもあり得るんですね。

久野

習近平さんが「強化するぞ」って言っちゃったがために。

安田

もう後には引けないと。

久野

周りが忖度しちゃってるんでしょう。機を見て緩めるとは思うんですけど。

安田

プーチンさんと同じで「間違いでした」とは言えないですもんね。

久野

言えないですよ。なんとかして「成功だ」って言える状況までもっていくんじゃないですか。

安田

独裁者なんだから「失敗しちゃいました」で済む気もするんですけど。

久野

独裁者って、そんなに緩くないんじゃないですか。常勝じゃないといけない。

安田

へえ〜。

久野

勝ち続けてるから、そこにいるべき理由があるんですよ。

安田

負けを認めたら終わりだと。

久野

そう思います。

安田

でも、どこかでゼロコロナ政策は転換するでしょう。

久野

明かに戦略的には合ってないですから。

安田

トップダウンって軍事は強そうですけど。こういう時には諸刃の剣ですね。

久野

はい。一長一短あります。

安田

民主主義の弱さもありますけどね。日本なんて自前で武器も作れないし。

久野

会社もそうじゃないですか。「みんなで決めよう」というスタイルの会社って、生き残ってない気がします。

安田

やっぱりトップダウンのほうがいいんでしょうか。

久野

トップにもよるでしょう。

安田

プーチンさんも優秀そうなのに、あんなことしちゃって。

久野

そもそもロシアのGDPは低いままですから。

安田

独裁国家ってお金儲けは下手なんでしょうか。

久野

中国はお金儲けも上手ですよ。

安田

ほんとですね。同じ独裁国家なのになぜこんなに差が出るのか。

久野

元々の国民性もあると思います。

安田

ロシア人が商売下手なんですか。それとも中国人が上手すぎるのか。

久野

中国人が上手なんでしょう。あと地政学的な差もあります。

安田

なるほど。

久野

独裁国家って、トップだけ豊かで国民は貧乏なイメージじゃないですか。

安田

そうですよね。北朝鮮にしてもロシアにしても。中国って独裁国家なのにお金儲けもうまくて。最強ですよね。

久野

すごいですよ。

安田

どんどん海外に投資していって、味方の国を増やして。

久野

あれだけお金を突っ込まれると、誰も中国に文句が言えないです。

安田

中国との貿易をストップされたら、日本経済も壊滅です。

久野

それが現実ですよね。

安田

アメリカだって下手したら危ないですよ。

久野

だからプロレスみたいにやりあってるだけで。アメリカも中国もパフォーマンスだと思います。

安田

本気で喧嘩はしないと。

久野

共倒れになることは見えてますから。

安田

ゼロコロナで中国の体制が倒れたりはしませんか。

久野

国民がどんどん豊かになっていってる中で、ちょっとぐらいの失敗ではこの体制は変わらないと思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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