7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第60回「銀行はいつ終わったのか」
銀行のリストラが急激に進んでいますね。
遅きに失した感はありますけど。
「地銀はもう手遅れだ」って石塚さんおっしゃってますよね。
はい。もう手遅れだと思います。
銀行員は「文系総合職から理系のエンジニアに変わっていく」と言われてます。これはどうなんですか?
そのとおりだと思います。
いわゆる今までのような総合職は、もういらないと。
80年代から平成の初頭まで「日本は世界で勝ってる」みたいに錯覚してたわけですよ。「アメリカからもう学ぶものはない」とか。
アメリカの象徴である「エンパイアステートビル」を買収した頃ですね。
歴史って常に繰り返すんですよ。
どういう意味ですか?
たとえば遣唐使の廃止も菅原道真が「もう唐から学ぶものはない。遣唐使なんかやめよう」って決めちゃった。
そうだったんですか。
受験で覚えませんでした?「白紙に戻す遣唐使」で894年。
よく覚えてますね(笑)
そこから進歩してないっていう。たしかにアメリカは80年代「双子の赤字」に苦しんでました。
私がアメリカに行った頃ですね。レーガン政権の時。
その頃アメリカでは金融工学がスタートしたわけです。
当時アメリカでは、日本の商社や銀行が「ブイブイ言わせて」ましたよ。
もう、勝った気でいたんですよ。
でもそうじゃなかったと?
90年代に入ると、金融工学でノーベル経済学賞をもらった人間がやってるファンドが、次々と出てくる。
そこから巻き返しが始まる?
実は金融工学って80年代にスタートしてました。コンピュータ技術による高速取引とか、相場をいち早く予測するプログラミングとか。
じつは一度も勝ってなかったってことですか?
その通り。その事実を一顧だにせず、「日本的経営こそが素晴らしくて、もうアメリカから学ぶものはない!」って言ってたのが、まさにバブルの絶頂期。
ぜんぜん歴史から学んでませんね。
でしょ?その結果90年代に入って急坂を転げ落ちるんです。
慢心してたと。
“勝って兜の緒を締めよ”で、「アメリカに金融工学を学べ。まだまだアメリカから学ぶことがある」ってやってたら、今こんなことになってなかった。
ということは日本の銀行は、その頃からあまり変わってないってことですか?
まったく変わってないです。
いまだに文系の総合職が「お客さんと交渉して」みたいなことをやってると。
いや安田さん、もう交渉すらしてないですよ。融資も全部自動化されて、貸借対照表を3期分突っ込むと13段階にランク付けされるんですよ。
それは金融工学ではない?
ぜんぜん違います。単に自動化してしまっただけ。だから誰にでもできる。僕でもできるし、中学生でもできる。
アメリカでは「バンカー」って結構高い地位にいますけど。自分の権限で投資したり、大きなお金を動かしたり。日本にはそういうバンカーはいないんですか?
日本の銀行は仕組み上、そういう人材が生まれてこないんですよ。
そういう人は出世できないってことですか?
いたとしても若手のときに外資系に転職してしまう。メガバンクで40代過ぎて超優秀な人なんて、本当にごくごく一握りですね。
「銀行を辞めても一声かければ100億1,000億のファンドはいつでも」みたいな人はいない?
いないです。そんな人。
作業をやってますね。
コンピュータが指示した通りに作業してるってことですか?
そうです、現場は。
それしかやってないんですか?
あとは社内政治。
昔は支店長がすごい権限を持ってましたよね?
もう支店長にそんな権限はないですね。単なる中間マネージャーだと思います。
昔の支店長と今の支店長は、だいぶ違うんですか?
まったく違いますね。権限がなくなったので。
昔は支店長の決済だけで1億2億はすぐに融資が出ましたよね?
支店長って、あらゆる意味で「融資得意先の総合経営コンサルタント」であり、事業を承継する場合のアドバイザーでもあったわけですよ。
まさにバンカーだったと。
はい。
なぜこんなに変わってしまったんですか?
いま銀行がお金を貸したい先って、お金借りる必要がない会社だから。
リスクを取りたくないってことですか?
リスク取ろうにもすべてシステム化されてるから。「支店長、これどうしても融資したいんですけど」「与信システムでどう出る?」「こう出てます」「じゃあだめ」みたいな。
支店長いらないですね(笑)
いらないです。
でも、銀行が理系の人間を増やすってことは、遅ればせながらアメリカの金融工学を追随するってことですよね。
ネットで完結して、パッと融資を下ろして「焦げ付き率がこれぐらいで済む」っていうモデルをつくろうとしてるんじゃないですか。
それ、ちょっと遅れすぎじゃないですか?もう中国では普通ですよ。
本来だったら90年代に着手する話ですね。2020年になろうかってときに始めてる時点で、残念ながら終わってるんですよ銀行は。
実はこっそり「アメリカや中国の3歩先行く金融工学を考えてる」なんてことはないですか?
ないです。これからゆっくり死んでいくだけ。
ゆっくり死んでいくだけ?
この20年間、すでにゆっくり死んでいってるんですよ。
20年間も何やってたんですか?
だから作業と社内政治ですよ。
20年間も社内で出世することだけ考えてたってことですか?
そういうことなんですよ。
ちょっと信じ難いですね。
だからリストラするぐらいしか、もう方法がないんです。
そんなところに自分の財産を預けといて大丈夫ですか?
ヤバいでしょうね(笑)
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。
3件のコメントがあります
とても面白く読ませていただきました。
歴史は繰り返されるのですね。
信金もアウトですか?
Es sind maximal 28 von 32 Trophäen erspielbar.