第219回「払うべきお金」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第218回「生き残るファミレスの境目」

 第219回「払うべきお金」 


石塚

安田さんはどう思います?「令和の時代に下積みは必要なのか」ってやつ。

安田

ホリエモンが言ってましたよね。「すし屋に下積みは必要ない」って。まあ、それも一理あると思います。

石塚

安田さんって、下積みなく会社を始めちゃってるでしょ?

安田

おっしゃる通り(笑)

石塚

安田モデルって、ある意味、令和のモデルだと思いますよ。だって安田さん10年も下積みなんてしないでしょう。

安田

私には無理ですね。

石塚

でしょう。

安田

変に知識や経験がないほうが、面白いことができそうだし。まあ失敗する確率は上がるでしょうけど。

石塚

僕の見解で下積みが必要な人は、「自分は平均点以下の能力だ」という自覚がある人。そういう人は下積みしておいたほうが安全だと思う。

安田

なるほど。

石塚

ただし下積みする前に「その仕事が自分の適性に合っているかどうか」をちゃんと判断したほうがいい。

安田

「見て覚えろ」みたいな、職人世界の下積みってあるじゃないですか。

石塚

ありますね。

安田

ホリエモンはそういうのが嫌みたいです。非合理的で、理不尽で、なんの役にも立たないって。一方で人間国宝みたいな方が、その重要性を語っているシーンもあって。

石塚

どちらにも一理ありますから。

安田

一流を目指すのなら、ちゃんと一流の人に学んだほうがいい気もします。意味のない下積みをさせる人もたくさんいますけど。

石塚

ホリエモンが言ってるのは、「基礎能力の獲得をいかに最短でやるか」という話だと思うんです。

安田

基礎能力ですか。

石塚

そう。基礎能力だけなら効率よく学んだ方が早い。

安田

下積みは必要ないと。

石塚

基礎を学んでそこから自分でやってしまえば、それ自体が下積みじゃないですか。安田さんもある意味、会社をつくってからがすべて下積みだったでしょ。

安田

確かに。そういう部分はあります。

石塚

自分自身も楽しくできる下積みというか。下積みって「苦しい」「耐えないと」みたいなイメージだけど、それはいまの時代に合わない。

安田

有名な職人さんや社長さんは、「一生下積みだ」って言いますよね。

石塚

まさに。仕事自体が下積みですよ。

安田

ホリエモンが言ってる「すし学校」みたいなのもアリだと。

石塚

ケースバイケースですけどね。

安田

「見て学べ」みたいなのも必要ですか。

石塚

必要なケースもあると思います。

安田

一流の価値観や考え方を学ぶには必要かも知れませんね。

石塚

いずれにしても、「令和の下積み定義」みたいなものを決めたほうがいいと思う。

安田

基礎能力だけなら下積みはいらないと。

石塚

お笑いを見てればわかるけど、大昔は弟子入りじゃないですか。「たけし軍団に弟子入りしました」みたいな。

安田

そういうイメージです。

石塚

それが昔風の下積み。だけど令和の吉本はもう「学校に来なさい」と。「私はNSC何期生です」みたいな。

安田

ダウンタウンも学校出身ですもんね。

石塚

学校出身ですよ。基本は学校で教えてくれるし、「あとは自分でやりなさい」っていう。

安田

そっちのほうが令和式ですか。

石塚

令和式はそっちだと思う。成長を加速させたいなら、どこかに雇われるより自分でやったほうが早い。

安田

昔の下積みって、師匠のほうが弟子を選ぶイメージですよね。

石塚

そうですね。

安田

だけどスクールは生徒がお金を払っているので。自分で先生を選ぶ権利があるわけですよ。

石塚

いいじゃないですか。

安田

会社員も給料をもらいながら教わるからダメなんですよ。令和の時代は、「自分でお金を出してスキルを学ぶ人」が成功しそうな気がします。

石塚

ビジネスの弟子入りですね。

安田

弟子入りというか、お金を払って師匠を雇うということですよ。

石塚

個別指導を発注するわけですね。

安田

昔の弟子入りって師匠から小遣いまでもらって、住み込みまでさせてもらって。令和は逆なんじゃないのかという気がします。

石塚

そうか、そうか、逆だ。「月いくら払うので、安田さんに付かせてください!」って。そういう人が来たら安田さんは受けるんですか?

安田

人によって受ける可能性はありますね。

石塚

いくら払えば受けるんですか?応募来たりして(笑)

安田

金額より「人」じゃないですかね。

石塚

なるほど。「お金払ってでも習わせてください」というのが前提で、あとは人を見るということですね。

安田

お金だけで割り切るなら、数百万単位じゃないとやる気が出ないです。

石塚

それは年間の費用ですか?

安田

まあ半年ぐらいですかね。自分が教えたい人じゃないと1年はしんどいです。

石塚

そりゃそうですね。

安田

こっちは「お金をもらわなくても教えたい人」で、相手は「お金を払いたい」という人。そういう人に教えたいです。

石塚

なるほど。

安田

「ただなら教えてくれ」という人は、あまり成果が期待できない。

石塚

だめですよ、そんな人は。

安田

フリーでちゃんと食べてる人って、ノウハウを学ぶのにお金をかけてますよね。

石塚

よっぽどスキルがある人以外はそうでしょう。

安田

今はYouTubeで、いろんなノウハウを無料で見れるじゃないですか。

石塚

何でもありますからね。

安田

「わざわざ金を払わなくていいんじゃないの」って思うんですけど。だけどそういう情報って玉石混交だし、自分なりに応用するスキルが必要で。

石塚

そりゃそうですよ。

安田

有料サービスは、自分に合わせてカスタマイズしてくれる。そっちのほうが圧倒的に早いです。

石塚

令和の時代はとくに、自分に投資できる人じゃないとダメでしょうね。

安田

時間だけじゃなく、「お金も投資しましょう」と言いたいです。

石塚

ある一定レベルから上げていくには必須ですよ。

安田

70点ぐらいだと安い仕事しか来ないです。「90点までいって、ようやく稼げるようになる」みたいなところはあります。

石塚

この話って「新卒をどう育てるのか」と根っこが似てますよ。給料もらいながら教わってる時点でダメでしょう。

安田

「給料を払いながら教える」ということが、最大の弊害になってる気がします。

石塚

でも新卒の学生がよく言うじゃないですか。「この会社だったら学べそうだと思います」とか(笑)

安田

みんなマヒしていますよ。「なんでお金払って教えないといけないんだ」って。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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