小さなブルーオーシャンに出会う旅 第20回「『モノ』を売るから、『コト』を売っているのではないか?という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

第20回「『モノ』を売るから、『コト』を売っているのではないか?という小さなブルーオーシャン


この経営マガジンで日曜日に配信、連載されている辻本 誠氏の「原因はいつも後付け」をご存知でしょうか?
先日、6月7日に配信された『第38回 「オンライン飲み会が教えてくれたこと」』にこんなことが書かれていました。

このオンライン飲み会の急速な普及は、私たち飲食店にとって脅威となるのでしょうか?
確かに何の手も打たないのであれば、脅威以外の何物でもないでしょう。

ただ、この急速な環境の変化は、私たち店舗オーナーに「ある事」を考え直すきっかけを与えてくれているようにも思えるのです。

その「ある事」とは、お店の「本当の商品は何なのか?」という事。

一部だけなので、ご興味のある方は全文を読んでいただきたいのですが、これは飲食店に限らず、どの企業、どの業種・業態にも当てはまると思うのです。

例えば、私は、人材に関連する支援サービスを企業さまに提供していますが、このサービスを提供している企業は、たくさん存在します。つまり競合が多いわけです。当然のように価格競争に陥り、値引き合戦に巻き込まれます。もう、レッドオーシャンにどっぷりです(笑)。

しかし、「本当の商品は何なのか?」を考える、発信することで、レッドオーシャンが小さなブルーオーシャンに変わるのではないかと思うのです。

今回は、そんなことに関連するお話を。

「レンジフード」で全国シェア約50%。名だたる企業へもOEMしてしまう

今回、紹介する企業は神奈川県相模原市にある「株式会社富士工業」さま。

一般にはあまり知られてはいませんが、
システムキッチン用レンジフードで
約50%という圧倒的な国内シェアを誇る企業です。

レンジフードは金属板を板金加工し、
電動ファンやフィルターなどの
部品を組み合わせて組み立てます。

現在はどのご家庭にもレンジフードは
あると思うのですが、
特にデザインにこだわる必要もなく、
機能もそれほど必要性を感じないと思いませんか?

レンジフードは、住居者(施工主)が選択する、
というよりは、工務店やデベロッパー、など
住居や建物を建てる企業(人)が選択するものの
ような気がします。
そうすると、できるだけ価格の安いものが
選ばれるのではないでしょうか?

その中でこの富士工業さんのレンジフードが
選ばれる理由ってなんなのでしょうか?

小さなブルーオーシャンを生み出しているものは何なのか?

確かにこの富士工業さんのレンジフードは
消費者の使いやすさを高める
独自の工夫が多いです。
例えば、通常のレンジフードは内部のファンにも
油汚れがたくさん付着してしまう。
一方、富士工業さんのものは
フィルターを円盤状にして、1分間に1500回転させて
油分を約90%キャッチしてしまう。
結果として、通常は年に1回程度、
内部のファンなどを掃除する必要があるが、
富士工業さんのものは製品設計上の標準使用期間中は
内部の掃除が不要になるのだそう。

あるいは、金属加工技術を生かして
クロコダイル模様の金属板を使い、
東京都港区の高級チョコレート店の内装にも使われていたり
ダイニング用の照明の中に空気清浄機を内蔵した
「クーキレイ」という製品もあります。
テーブルで焼き肉を焼いても匂いの約80%、
油の約95%をカットできるといいます。

「マンションのベランダでたばこを吸えなくなった愛煙家が購入するなど、予想していなかったニーズもある」

とのことです。
こうした工夫や新しい発想も富士工業さんが選ばれる理由の一つだと思いますが、
もう一つ、私が着目したのは、富士工業さんが
レンジフードそのものを売ろうとしているわけではないのではないか?
ということです。
富士工業さんのホームページを拝見すると、
「空気を変える」
「環境を変える」
「生活を変える」
という文言が並びます。

冒頭でもお伝えした、「本当の商品は何なのか?」
富士工業さんが考える「本当の商品とは」
レンジフードそのものではなく、
空気や環境、生活そのものを変えること。
つまりレンジフードという「モノ」から
空気や環境、生活そのものという「コト」を売っている。

これが、小さなブルーオーシャンを生み出している理由なのではないでしょうか?

 


佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

 

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