第171回「北総鉄道の値下げ成功の背後に潜む小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「北総鉄道の値下げ成功の背後に潜む小さなブルーオーシャン」


「北総鉄道」ってご存知ですか?
関東にお住まいの方でも、
そんなに知られていないかもしれません。

千葉県北西部の住宅街
千葉ニュータウンを
走っている電車です。
都内に走る地下鉄にも
乗り入れてもいます。

この「北総鉄道」が
2022年度(第51期)の決算で
「40年来の累損解消」を果たしたそうです。

「赤字を完済した快挙!その裏にいったい何が?」

北総鉄道は、新型コロナウイルスの影響で
乗客減少・利益減少に苦しんでいました。

過去の赤字を含めて447億円。
しかしこれ完済したと言うのです。

いったい何をしたのでしょうか?

2022年の10月に大胆な運賃改定を
実施しました。
・通学定期を最大64.7%引き下げ
・普通運賃を最大100円引き下げ
大幅な値下げです。

値下げ後の乗客数は約12%も増加。
営業利益はわずかに減少しましたが、
ほぼ前年並みの純利益17.5億円を計上。

私の感覚で言うと、
公共交通機関が値下げをしたからといって、
乗客数が増えるとは思えませんでした。
なぜなら、公共交通機関は、
普段から使っているものであり、
もちろん、使っている人からすれば、
値下げは嬉しいものの、
新規顧客が増えるとは思えないからです。

「実は値下げできない理由があった」

千葉ニュータウンは計画人口34万人に対して
実際の人口は10万人程度であり、
鉄道の乗車実績も計画を大きく下回る状況。

当然、北総鉄道の運賃体系は
JR・私鉄各社よりも高くなります。
これが千葉ニュータウンなどの北総線沿線に住む
住民にとって利用しづらい要因となっていました。
沿線自治体との通学定期補助の要望や値下げを求める
住民訴訟などまでが行われていたそうです。

一方、北総鉄道が値下げに踏み切れません。
建設費用の返済や線路使用料の問題がありました。
北総鉄道は「公団P線」という方式で建設され、
建設費用を分割返済する仕組みでした。
しかし、初年度から利用低迷が続き、経営が苦しい状況。

つまり、負債をしなければならないため、
運賃を高く設定。しかし、乗車数は少ない。
値下げはできず、住民からは不満が出る。
悪のスパイラルですね。

「ポジションを確立することで乗客が増加」

近年の成田空港スカイアクセスの
実績が順調に伸び、
他社からの線路使用料が
安定して入るようになったことで、
経営の安定が実現しました。
累積赤字の返済も順調に進み、
「累積損失の解消」に光が差しました。

利用者の声や沿線自治体のまちづくり施策との
整合性を総合的に勘案し、
利便性の向上や事業基盤の維持・向上を図り
北総鉄道は都心から1時間圏内の
“ほどほど郊外の街”としてのポジションを強化。
人口の増加によって利用者を確保するために
値下げを実施しました。
これにより、乗客数が増加し、
経営の安定がさらに進んでいます。

北総鉄道の値下げ成功の背後には、
利用者の声を重視し、
経営上の問題を克服するための
大胆な経営判断がありました。
累積赤字の完済や建設費用の支払いといった
課題を乗り越えることで、
ようやく自立・自活の時を迎えたと言えるでしょう。

値下げをすると業績は下がると思われがちです。
私もそう思いますし、簡単に値下げをすることは
反対です。
しかし、適正価格があることも事実です。
適正価格に戻すことで、
業績が上がるという小さなブルーオーシャンでした。

 

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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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