第184回「中小企業の活性化には『遊び心の力』という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「中小企業の活性化には『遊び心の力』という小さなブルーオーシャン」


中小企業の業績向上にユニークな方法を提案している会社があります。取調室風の相談室、映画風の企業ポスター、博士風のカツラと白衣の格好での会議などなど…。一見するとふざけているように思われますが、この会社はいたって真剣です。

兵庫県姫路市にある広告代理店「感動会社 楽通株式会社」です。

本音を引き出すコミュニケーションの場

「あらいざらいしゃべって楽になったらどうだ!」
刑事ドラマなどでよく聞くセリフですが、ビジネスの世界には似つかわしくありません。ところが、このセリフを社長の“取り調べ”で使われているんだそうです。

楽通株式会社のオフィスの一角に「取調室」と記された縦横約2メートルのスペースがあり、机とパイプいす、そして机の上には刑事ドラマでもおなじみの電気スタンド。
そこで、楽通株式会社の代表 田村慎太郎氏が営業活動として、経営者の悩み事ややりたい事などを聞くんだそうです。

2年前の導入から「取り調べを受けたい」という経営者が続出。これまでに約100人の経営者が「取り調べ」を受け、成果を得ているそうです。実はカツ丼も用意されているとか…。

これは経営者の本音を引き出すための斬新なアプローチですね。普通に話しても本音を語ろうとしない経営者が、喜んで本音を話してくれるそうで、聞き取った内容をもとに提案などを「調書」にまとめるんだそうです。

この「取調室」を商品化。パワハラ防止のため「部下が上司を取り調べるという形でご利用ください」という「取扱説明書」もつけられているらしいです。

遊び心を重視した経営

同社では、この他にも変わった提案をされているそうです。
例えば「映画風の企業ポスター」。これは実際に働く社員に俳優のようなポーズをとってもらい、派手なキャッチコピーをつけた求人用ポスター。これまで250社、300種のポスターを制作したそうです。

さらには映画風PR動画も。例えば社員数人が並んで歩くシーンを、スローモーションで流すという刑事ドラマのオープニング風にすると、たちまち「You Tube」で約20万回再生を記録。

ポスターも動画も、求人に威力を発揮しただけでなく「社員のモチベーションが上がり、社員同士の結束力も強まったと喜ばれた」といいます。

また、北九州市の営業所で月1回、クライアント約10人を集めて行う勉強会では、全員が博士風のカツラにメガネ、白衣といういでたちの「博士」に仮装して、アイデア出しをするんだとか。これは創造的な発想を促すユニークなアイデアの一つです。中小企業では、真面目にアイデアを出し合うという機会はあまりなく、あったとしても窮屈です。社員がアイデアを自由に出し合える環境を整えることで、新しい発展を促すことができるはずです。

どのようにすれば、相手が心を開いてくれるのか?本音を語ってくれるのか?どうしたら振り向いてくれるのか?などなど、これらを考えた結果、生まれたのが今回のような「遊び心」。だからこそ、一見ふざけていても、その実はとても真剣なのでしょう。今回は真剣に遊び心に取り組む小さなブルーオーシャンでした。

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感動会社 楽通 株式会社
兵庫県姫路市
URL https://rakutsu.jp/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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