泉一也の『日本人の取扱説明書』第33回「水の国」

浄化を日常の中で得るために、手を洗う習慣があるのではないか。我々の日常は陰=ケガレ(穢れ)にまみれているから、その「ケガレ」を水で流すことが必要なのだ。溜めた水で手を洗うのはNGであり、流れている水でこそ浄化がなされる。

「水の流れ」による浄化(陽転)が日本人の精神性であるなら、その浄化を基本に組織づくりをすればいい。「ケガレないようにせよ」といって規制するルールを作るのではなく、ケガレているのが普通であるので、「ケガレを浄化しよう」に力点を置くのだ。

例えばTV番組の「しくじり先生」のように、失敗の経緯を素直に話し、みんなで学びにして笑い飛ばせばいい。人はしくじるのが普通であるので、しくじった後が大事なのだ。あなたの所属する組織には、しくじり報告会やしくじり勉強会といった場があるだろうか。日常でも失敗したら潔く「ごめん!」といい、爽やかに「ドンマイ!」といった会話の場があるだろうか。そんな場がある組織では、陰湿なハラスメントや腐敗した犯罪といった出来事はほぼ起こらない。逆に水を打ったいい空氣が流れている。

日本の風土が生み出した川。川とともに生きてきた日本人。この川の流れの中に、活性化の極意がある。逆にケガレがないクリーンさをアピールする人がいたら、そんな組織があったら要注意である。そんな人も組織も、日本の水に合わないのだ。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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