第166回「ヤパンの国(第8話)」

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

前話(第7話)のお話。

約束の地で再会した10人。2年の旅芸人としての経験が、一人一人を人間的に大きく成長させていた。再会の宴が始まり、それぞれが身につけた芸を披露し、大いに盛り上がった。


宴の翌日、二日酔いも覚めた午後、10人は車座になって話し合いが始まった。

法律の天才であるパリが口火を切った。
「まず国のルールを作ろう」

「いや、その前に新しい国のコンセプト作りがいいね。楽しく笑いの絶えない国ってのはどうよ?」アイデアの天才であるリホツが言った。

「戦争のない国がいいよね」平和を愛するボダイがいう。皆、大きくうなずいた。

「ちょ待てよ、国ってのは本当に必要なのか?」疑いの天才ケンレンがそもそも論を展開し始める。

待ってました!と弁論術の天才ラニシが議論を吹っかけてくる。「国と国家は違うんだよね、ケンレンが言っているのは国家論のことだろ。アリストテレスは最高善を目指す共和政の法治国家が・・」

ナリツはアナンに目配せをした。アナンは従兄弟のナリツの心を察知し、「一旦、ここまでにして、先にメシにしないか・・」と提案した。朝メシを食べてなかった10人は酔いも覚め、お腹が減っていたので即合意。

「じゃあ、手分けしてご飯を作ろう」レシピを書くもの、食材を調達に行くもの、火を起こすもの、調理器具とスパイスを準備するもの、昨日の片付けをするもの、食卓と食器を準備するもの、テキパキとチームとして動き出した。

食事が終わって全員で片付けをした。片付けが終わり、また車座になってダールタが入れてくれた食後のお茶を飲んだ。一息ついたころ、扇動の天才カショウが言った。「ルールもなく、指示もなく、リーダーもいないのに、我々はチームとなって食事を作って片付けをしたよな。流れるように自然だった。これこそが、我々が作りたい国の原型なんじゃないのか」

解説の天才センネンが続け様に、「我々は様々な機能を持たせて複雑になった機械のような国に生まれ、生きてきたんだ。自分はどの機能の一部になったらいいのかを探しながら大人になって社会に出る。しかしこの機械全体はどうやって動いているのか、わからないまま。複雑で難しいことは専門家に任せときゃいいよ、と放棄して。我々は生まれながらにその機能の一部に収まらなかったから、全体の動きを邪魔する存在として、隔離施設に幽閉されたんだよ」

なるほど、と皆がうなずく。そんな自分たちを追いやった複雑怪奇な国づくりをするところだった。皆で食事を準備し、一緒に食べ、一緒に片付けてお茶を飲む。こんなシンプルで自然体の国づくりってできないのだろうか?そんなことを皆が感じ始めていた。

(第9話へと続く)

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日本人は、長い年月をかけて田畑を中心とした「みんなで作ってみんなで食べる、排泄物も肥やしにしよう」という共助循環型のコンパクトな共同体を作ってきた。しかし、明治になって一気に中央集権のグローバル都市社会を作りあげ、150年たって今に至る。そのスタイルをやり切ってみて、実はあってなかったことに気づき始めた。猛烈に受験勉強して大学入ったけど、やっぱり大学は向いてないとわかったように。では現代における共助循環型スタイルとは?この続きはfacebookグループの「場活王」にて。

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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