第168回「日本劣等改造論(序)」

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

日本人の心の奥に巣食っているウイルスがある。それは「劣等」。この劣等がコロナウイルスのように日本全体に流行したことで、日本人の「やる氣」を奪い、味覚と嗅覚がなくなったように他者に「無関心」になった。

日本列島に蔓延する劣等ウイルス。このウイルスの正体を解き明かし、ウイルスが暴走しないよう“共存の道”を探し出すのが「日本劣等改造論」の目的である。

劣等ウイルスの起源。それは、明治の開国。西洋文明からかなりの遅れを感じていた日本。大砲で脅され、不平等条約を結ばされた。日本人は奮起した。西欧列強に負けるな、追いつけ追い越せ!と劣等感をバネに国民一丸となって富国強兵に取り組んだ。劣等ウイルスがパワーになった時代である。

そして、明治の開国から40年経たないうちに大国ロシアに勝利し、世界五大国の仲間入りを果たす。富国強兵の勢いは止まることなく、米英との太平洋戦争に。日本は、劣等ウイルスによって熱病のごとく燃えていた。「躁」状態である。

日本は米英に物量で遥かに劣っていたが、大和魂を呼び起こしone teamとなり奮戦奮闘。最後には一億総玉砕の総力戦で挑んだ。しかし、大敗を喫し占領されてしまう。日本の有史以来、他国に占領されるのは、初めての出来事であった。

戦後、敗戦と占領から再び「劣等」をバネに働きに働いた。そして、1968年にはイギリスとフランスを抜いて世界第2位のGDPに。焼け野原となった敗戦からたった23年でジャパンアズNO.1と呼ばれ、富国を達成した。

しかしその富国経済は1991年からの景気後退でバブルがはじけとび、劣等ウイルスで「躁」となった時代は終わりを告げた。そし30年間、停滞した。もう一度、躁状態に!と「東京オリンピック」を開催したが、数々の不祥事が重なり、経済的にも大きな赤字となって、逆に重苦しい空気が漂ってしまった。

日本人は開国で劣等ウイルスに感染し、「躁」となって突っ走り、停滞を経て「鬱」に転じている。

今、劣等ウイルスによる鬱は、2つの症状に出ている。

「どうせ自分は。。」という自虐。
「あいつが悪い!!」という他罰。

この自虐と他罰がはびこったことで、心は萎縮し閉ざされた。やる氣が失われ、他者に無関心になった。天岩戸に閉じ込められたのだ。

この劣等の封印を解かなければ、世の中は真っ暗である。

えっ、自分は劣等ウイルスに感染してないって?自虐もしないし、他罰もしない。それは無症状感染もしくは、味覚と嗅覚を失った不感症かもしれない。

心理学に「世代間連鎖」という考え方がある。親の心理的な病が、子の無意識(心理学では潜在意識という)に伝わっていくという考え方だ。その視点に立つと、日本人の多くは祖父の代から家族感染し、劣等ウイルスを引き継いでいると考えていいだろう。すでに免疫を獲得している人もいて、そういう人は劣等をパワーの源としない別の動力源で、新たなスタイルを築いている。

次回から劣等ウイルスのワクチンを一つずつ書いていく。抗体カクテル療法のように様々な種類のワクチンを用意したので、どれかはあなたの体質にあうだろう。副反応は少し起こるかもしれないけれど。お楽しみに。

 

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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1件のコメントがあります

  1. 列島ではなく劣等改造論というタイトルは面白と思いました。
    今の日本人は漂流しているのではなく、燃え尽き症候群かもしれませんね!
    これからは新たな単一の価値観(例えば富国列強や戦後復興等)も否定しませんが、複数のしなやかな価値観を持ち許容する新たな日本(世界的にみれば裕福で何でもできる状況の国家・民族・独立文化国家であることを基盤にして)を作り上げていきましょう、それぞれの立場でということを想起しました。

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