不採算部門の行方

会社の中に不採算部門があれば、
それを立て直す計画を立てる。
どのくらいの期間で、
どの程度の数字まで持って行くのか。
数値目標を掲げ、それが達成できなかった場合は、
部門ごと切り捨てることも考えなくてはならない。

そこにいた人材は他の部門に異動させるか、
もしくはリストラするか。
厳しい決断ではあるが、
経営者にとってはやらなくてはならない通常業務である。
ではこれを家庭に置き換えたらどうなるか。

たとえば子供が通っている塾やサッカー教室。
それによって有名大学に入れたり、
プロ選手になれるのなら効果的な投資だと言える。
だが頭が悪い子供の補習や、
運動神経が悪い子の趣味的なサッカーであれば、
回収できる見込みはかなり少ない。
つまり不採算部門である。

不採算部門は立て直す。
もしくは切り捨てる。
会社であれば当然のことであるが、
家庭ではそういう訳にもいかない。
子供が楽しんでいるサッカーには価値があるし、
赤字だからといって家族をリストラする訳にはいかない。

会社と家庭では根本的な価値観やルールが違うのである。
では国家はどうだろう。
国家にはたくさんの不採算部門があるし、
不採算人材も数えきれないくらいいる。
会社的に考えるならば、
不採算部門は立て直さなくてはならない。
不採算人材も整理しなくてはならない。

だがすべての赤字機関を閉鎖する訳にはいかないし、
赤字人材を追放する訳にもいかない。
赤字でも美術館には価値がある、
赤字人材でもみんなで助け合う。
そういう家庭的な一面も国家には必要だ。

とはいえ家庭でも、
収支がマイナスになれば厳しい対策が必要になる。
家庭収入によっては塾をやめさせたり、
サッカーをやめさせたりする必要も出てくる。
国家もまた然りである。
更に言えば国家は家庭ほど家庭的ではない。
いやむしろ、昨今の国家は会社的である。

GDPや一人当たりの生産性という目標を掲げ、
それを達成することに重きを置いている。
当然のことながら不採算部門は
立て直さなくてはならない。
それが難しい場合には切り捨てる覚悟も必要だ。

労働生産性とは時間あたりの収益である。
それを高めるために、労働時間を縮めて
同じ収益を上げるという数値目標を国家は掲げた。
その目標が達成できない部門は切り捨てられる。
国家という大きな会社の中で、
自分の会社は採算部門なのか。
あるいは不採算部門なのか。
リストラはもう始まっている。


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