最低賃金を1,000円にしようという話が進んでます。
はい。岸田さんが言ってますね。
岸田さんは1,000円にすると断言しておられます。可能なんでしょうか?
無理じゃないですか。
やっぱり無理ですか。
まあ4%ぐらいは上がると思いますけど。いま最低賃金は高知と沖縄がいちばん安いんですよ。確か853円。
じゃあ150円上げれば1,000円になりますね。
安田さん。150円ってめちゃくちゃ高いんですよ(笑)150円で160時間働くと1万円ですよ。
1人たった1万円でしょ。月に。
「1万円でしょ」って(笑)
給料を上げて成り立たないような商売はやめろ!って、いつも久野さん言っているじゃないですか。
いやあ・・・答えにくいですね(笑)
ここはビシッと言ってください。
そもそもこれって「全国平均で1,000円を超えよう」という話ですから。
あ、平均ですか。最低賃金の?
加重平均だと思います。だから「めちゃめちゃ上がる」かというと、ほんのちょびっと。20~30円の話。
最低でも1,000円って言われると、最低でも1,000円になりそうな気がするんですけど。そんなことないんですね。
最低でも平均を1,000円ってことですね。
騙されました(笑)
本当は安田さんの言う通り、一番下を押し上げないといけないんですけど。
ですよね。
いま平均が961円ちょっとだと思います。
つまり39円弱しか上がらないと。
39円でも結構大きいですけどね。
先進国の最低賃金と比較すると、1,000円でもまだ安いぐらいじゃないですか。
日本は安いと思いますよ。
1人あたりの生産性を上げるために、まず賃金を上げようとしているわけで。平均じゃなく最低1,000円ぐらいにはしないと。
いきなりは難しいでしょうね。
だけど、どこかで必ず越えなくてはならない壁ですよね。
どうでしょう。今のままだと難しい会社が多いと思います。
大企業なんて1,000円になろうがぜんぜん関係ないでしょ。
いや、大企業でも小売業とかは大変ですよ。
小売業が大変なのは売値が安いからですよね。
そうです。簡単には値上げできないし。
最低賃金が上がれば、どの会社も売値を上げざるを得ない。みんな一斉に上がるわけじゃないですか。
はい。
「うちは値上げしない」とかできないわけで。
たとえば全員が上げざるを得なくなって、価格を上げましたと。問題は今までと同じようにお客さんが来るかどうかですよ。
全員で値上げしても、値上げしたらお客さんが来なくなる店もあると。
当然あるでしょう。
そういう店は淘汰される?
そうなりますよね。
久野さんは「優秀な人材を確保するには、まず値上げして給料を上げるしかない」って、いつも言っているじゃないですか。
理屈はその通りなんです。
それをやらないとジ・エンドなわけでしょ?
ジ・エンドって(笑)そう一緒ですよ。どっちが先かという話です。
どっちが先か?
最低賃金が1,000円を超えるか、企業が勝手に上げて1,000円を超えるか。私は後者の方が先じゃないかと思います。
なるほど。無理やり上げなくてもそうなっていくと。
今はそういう流れになってきてます。先手先手で動き出す企業が出てきたので。
自発的に「1,000円以上にしよう」と経営者が考えないと、もうビジネスが成り立たないってことですか。
そうです。最低賃金キワキワでOKだと思っていたら、もうまずい。
でもキワキワの会社っていっぱいあるんでしょうね。
私に聞かないで欲しいです。
言いにくいんですか?
言いにくい(笑)
ということはたくさんあるんですね。
地方にはまだまだ多いですよ。でも正直すごく疑問なんです。東京と沖縄だったら東京のほうが地代家賃は高いじゃないですか。
はるかに高いですね。
人件費も東京のほうが高くて地方は安いわけじゃないですか。本当はめちゃくちゃ楽なはずなんですよね。
確かに。給料も安いし家賃もかからないし。
だから地方の優良企業はすごく儲かってます。
そうですよね。
そういう会社を見ていると、最低賃金を上げなくちゃいけない気がします。
地方の儲かっている会社は、さすがに最低賃金では雇ってないでしょう。もっと払ってるんじゃないですか。
どうでしょうね(笑)
そんなことないんですか?
まわりの価格に引っ張られて安くなっていると思います。ちょっと楽してる。
じゃあ1,000円なんて本当は余裕なんでしょうね。
儲かっている会社は余裕でしょう。
つまり平均1,000円は現実的に可能なんですね。たった39円のアップだし。
39円はけっこう大きいんですけど、これはあっという間に行くと思います。やらないと政治が持たないので。
39円でもついて来られない会社が出てきますか。
39円で160時間をかけると6,240円。この分の値上げができない会社は厳しいでしょうね。
それぐらい値上げすればいいじゃないですか。
値上げすると買わなくなるんですよ。
給料も上がったら買うでしょう。
いや。時給はアップして欲しいけど、買う側になると安さを求める。これが日本国民の最大の問題なんですよ。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。