第8回 初めての挫折

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国13店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第8回 初めての挫折

安田
前回までのお話だと、「持ってるお金を全部突っ込んで、お店を開いてみたら大儲け」という繰り返しなんですけど(笑)。実際倉橋さんって、不安は感じないんですか。「万が一売れなかったらどうしよう」とか「お客さん来なかったら俺の人生どうなるんだ」とか。

倉橋

う〜ん、今だったら多少考えると思いますけど、当時は全く考えませんでしたね(笑)。「これからのカルチャーは自分が作っていくんだ!」という意気込みの方が強くて。

安田
なるほど。やっぱり若い頃はそういう勢いも大切ですもんね。でも、いろいろ経験を積んだ今は不安を感じることもあると。

倉橋
そうですね。だいぶ慎重になったと思います。とにかくマーケティングをきっちりやって、できる限り費用を削ってビジネスするようになりました。
安田
なるほど。ともあれ最初の滋賀にしろ次の仙台にしろ、成功しかしてないイメージなんですけど。商売で失敗したこともあるんですか?

倉橋
ありますあります(笑)。ちょうど安田さんにお仕事をお願いした頃もそうでした。
安田
ははぁ、そうなんですか。ちなみに思い出せる最初の失敗っていつでした?

倉橋
最初に失敗したのは東日本大震災の少し後です。38歳くらいの頃ですかね。
安田

ちょっと待ってください。ということは、25歳で会社を作ってから13年間、一度も失敗らしい失敗をしなかったってことですか。


倉橋
そう言われてみると、確かになかったですね。
安田
すごいなあ……ちなみにその最初の失敗というのは、震災後のあの自粛ムードで、お客さんが減ってしまったということですかね。

倉橋
ええ、そういう感じです。もっとも、あんな震災が来るなんて誰も思っていなかったはずなので、明確な失敗というわけじゃないんでしょうけど。
安田
確かにそうですよね。とはいえ、事実お客さんは減ってしまったと。それはどう乗り越えたんですか?

倉橋
端的に言えば、時間が解決してくれた感じですよね。ある程度状況が落ち着けば、人ってやっぱりまた遊びたくなるんです。昨今のコロナ禍を見ててもそうじゃないですか。
安田
ああ、確かに。でも、その後にメルカリのようなスマホアプリも出てきますよね。そちらは脅威じゃなかったんですか?

倉橋
いや、それこそ震災どころじゃない脅威でしたよ。メルカリって、言わばフリマのDX版じゃないですか。しかも開発したのはリユースの会社じゃなく、全然違うIT企業です。畑違いの会社に売上をバコーンと持っていかれたのはやっぱり衝撃でしたね。
安田
ははぁ、元々リユースをやってた会社が開発したってよかったわけですもんね。

倉橋
そうなんです。そこが悔しいところなんですが、逆に自分たちの怠慢を知るいい機会になりました。「私たちは常に新しいカルチャーを作っているんだ」と思っていましたが、実際はそう思い込んでいただけだったと。
安田
なるほど。それほどにメルカリショックは大きかったと。会社の経営者目線で考えた時、どれくらい危機感がありました?

倉橋
それこそ会社が潰れるかもしれないとすら思いましたね。自分たちを変えていかなければ、今後も別業界のライバルたちにやられっぱなしになるだろうと。
安田
売上的なインパクトも大きかった?

倉橋
いや、売上は正直そこまで下がらなかったんです。でも、危機感はすごく強かったですね。ヘビーユーザーだったお客さんが、どんどんインターネットに流れて行ってましたから。思えばそれが会社の分岐点になりました。いろいろ試行錯誤し始めて。
安田
その試行錯誤で、答えはすぐに見つかったんですか?

倉橋
いやいや、2013年からの4〜5年は悩み続けてましたね。どういうビジネスがいいのか、考えても考えてもなかなか答えが出なくて。とにかくずっと考えてるような日々でした。
安田
なるほど……今の「アミューズメント」という業態に辿り着くまでに、たっぷり5年もかかったということなんですね。

倉橋
もちろんただ座って悩んでいたわけじゃなくて、あれこれ試しながらやっとたどり着いたんですけどね。途中、間違った方向に行きかけたこともありました。極端な安売りに走ったことも。
安田
ああ、ありがちな間違いですよね。安売りするとなんとなく売上は上がりますが、利益率は確実に下がっちゃいますから。

倉橋
仰る通りです。利益は下がっていたと思いますね。
安田
でも、逆に言えば、ある程度の売上高が維持できていれば、会社が潰れる心配まではしなくていいようにも思いますけど。私の会社が潰れる時なんて、2年で半分ぐらいまで落ちましたから。

倉橋
我々のようなBtoCの流通業界だと、徐々に下がっていくと言うより、ある日ストンと落ちる感じなんですよ。だからすごく怖い。
安田
そうか、BtoBとは違うわけですね。
倉橋
ええ。BtoCが難しいのは、会社の評判が落ちたり流行りが廃れたりしても、一定のお客さんは来てくれちゃうことなんです。
安田
ああ、確かに。どんなにブラックだと言われている居酒屋チェーンでも、行く人は行きますもんね。

倉橋
ええ。そういうときに変化の匂いを感じて、「次の未来に対して手を打つこと」が大事なんです。見えない変化をどれだけ敏感に察知するか、なんですよね。
安田
なるほどなあ。新橋まで私に会いに来てくれてたのは、まさにそういう変化を察知して試行錯誤されていた時期だったんですね。
倉橋
ええ、実はめちゃくちゃ不安でした(笑)。だからこそ安田さんに会いに行ったんだと思います。
安田
そうだったんですね。でも「これをやれば絶対当たる」というセンスがあるからこそ、「このままじゃまずい」という状態にも気づけるんでしょうね。

倉橋
ああ、そうかもしれないですね。ただ「このままじゃまずい」っていうことがわかっても、どういう打ち手がいいのか答えが出なくて。頭の中で映像化されないというか。
安田

ああ、なるほど。うまくいくときは頭の中で映像化できていると。

倉橋
そうですね。それが見えている時は絶対に成功するので、お金も突っ込めるんですけど(笑)。
安田
その試行錯誤の間は、自分の中で映像が浮かんでこなかったんですね。

倉橋
なかなか浮かびませんでしたね。5年くらいしてようやく「農機具ビジネス」という映像が浮かんできて。
安田
なるほど。それでまた新たに始められたんですね。その新たなビジネスをひらめくのに私との飲み会はほとんど役に立ってないような……(笑)。
倉橋
いやいや! そんなことはないですよ(笑)。

対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に13店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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