第22回 結婚式とお葬式の違いとは?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第22回 結婚式とお葬式の違いとは?

安田
今回は、私が常々疑問に思っていることをお聞きしようかと。

鈴木
はいはい、なんでしょうか?(笑)
安田
ズバリ、結婚式とお葬式って、何が違うんですか?

鈴木
え? それはずいぶん面白い疑問ですね(笑)。そうですねぇ、どちらも人生の節目の儀式ですけれど……。
安田
ええ、2大イベントですよ。どちらもお金がかかるし、人を集めて行う。どちらも一生に1回しかやりませんし。……あ、結婚式は何回かする人もいますけど(笑)。

鈴木
笑。結婚式もお葬式も、最近ではあまりお金をかけずに済ませるようになってきていますね。
安田
ああ、そうですよね。そういう意味でも似たところが多いなと。

鈴木
そう言われると確かに似てますねぇ(笑)。例えば日本には「冠婚葬祭互助会」というのがありますよね。入会者が毎月お金を積み立てていて、そのお金を必要な人が必要なタイミングで使う、という仕組み。これについても結婚式お葬式どちらでも使うことができる。
安田
ですよね。そもそも日本では昔から「冠婚葬祭」と1つのくくりにしているわけで。

鈴木
確かに。慶び事と悲しみ事、特に区別することなく儀式が行われていたのかもしれない。
安田
でもそれらはいつしか別れ、やがて「ブライダル産業」と「葬儀業界」になったと。そういえば葬儀をやっていた会社が、後から結婚式もやり始めることってあるんですか?

鈴木
あるにはありますよ。数としてはすごく少ないですけど。
安田
へぇ、あるんですね。ということは、逆のパターンも? 結婚式をしていた会社が、後からご葬儀も始めた、というケース。

鈴木
いやぁ、そっちは聞いたことはないですね。
安田
へぇ。なにか難しい理由があるんでしょうかね。

鈴木
一概には言えないですけど、コロナの影響もあって、ブライダル業界はかなり打撃を受けているじゃないですか。端的に言うと、結婚式って以前ほど儲からなくなっているんですよ。
安田
なるほど。つまり、以前であれば結婚式ビジネスだけで十分儲けられていたから、特に葬儀事業に参入する必要もなかった。そして本業がコロナで大打撃を受けた今となっては、葬儀事業に参入する体力もないと。そんなところですか?

鈴木
というか、結婚式・葬儀の両方が儲からなくなってきてるんですよ。だから敢えて今、冠婚葬祭業を始めるメリットもないと言うか。
安田
ああ、なるほど。結婚式とお葬式は、ダメージの受け方まで似ていると。

鈴木
そうそう。その上で結婚式とお葬式に違いを見出すとすれば、「意志」があるかどうか、かもしれません。
安田
ははぁ、なるほど。お葬式は必ずやらなきゃいけないものだけど、結婚式はそうじゃないですもんね。

鈴木
仰る通りです。実際、婚姻届けだけ出して式は挙げない、って人もいますよね。それでも結婚式を行うということは、そこに当人の「意思」があるわけで。
安田
確かにそうですね。「やらなくてもいいけど、やりたい」っていう。だからなのか、結婚式って事前相談や打ち合わせの時間をすごく取りますよね。

鈴木
一方のお葬式は真逆でしょう? 言い方は悪いかもしれませんが、「やりたくなくても、やらなくちゃいけない」。だから事前の打ち合わせもすごくスピーディーですよね(笑)。
安田
確かに(笑)。亡くなったらすぐに葬儀場に連絡がいきますし、参列者もすぐに集まりますもんね。そしてそこにはやりたいという「意志」はない。

鈴木
そうそう。結婚式場は、いきなり行って「よし、明日開催しよう」なんて言う人はいないじゃないですか(笑)。半年も一年もかけて内容を考える。そういう意味で、結婚式はアイドリングの時間がすごく長いんですね。
安田
ということはビジネスとして考えた場合、準備に時間がかかる結婚式の方が儲からないと言えますね。さっと集めてさっと終われるお葬式の方がコスパがいい(笑)。

鈴木
いや、立場上そんな風には言えませんけど(笑)。
安田
笑。ところで、結婚式って新郎新婦の意見を大きく反映することができますよね。でもお葬式ってどうなんでしょうか? 本人はもう亡くなっているわけですから、故人の意志は反映できない。そうすると、お葬式って誰のためにやるんでしょう。

鈴木
僕は「残された人」たちのためだと思っています。故人を送るための式とは言いますが、実際は残された人たちが気持ちを整理するためにやるものなんじゃないかな。
安田
確かにそうですよね。亡くなった人が喜んでいるかどうかを確かめるすべはないですし。

鈴木
ええ。ただ故人が生前に「エンディングノート」なんかを書いていれば、残された人たちは個人の思惑通りにできた、と安心できたりもします。
安田
あぁ、なるほど。後々「あのお葬式でよかったのか?」と後悔することもなくなりますね。

鈴木
ええ。実際に故人が遺したエンディングノートをもとに、お経じゃなくて歌を歌ったり、合掌じゃなく拍手で送ったりするお葬式をしたこともありますよ。
安田
へぇ、そうなんですね。確かにそういう変わったお葬式って、残された人の意思ではやりづらそうですもんね。でも私、これからのお葬式ってもっと「笑える式」になってもいいんじゃないかなと思うんです。

鈴木
え、笑いですか? お葬式に?
安田
そうそう。そもそも私は、死ぬ=悲しい、というのは心が狭い考え方だと思っていて。わざわざ人を集めて悲しむ必要があるのかなと思っちゃうんですよね。自分が死ぬ側だったら、しんみりされたくないですもん。

鈴木
なるほど(笑)。まぁお葬式というのは、会えなくなる悲しさを感じたり、今までの感謝を伝えたりする場でもありますからね。
安田
でももしかするとそのうち、結婚式みたいに楽しめるような「次世代型お葬式」っていうのも出てくるかもしれませんよ?(笑)

鈴木
可能性は否定できませんね(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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