この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
王子ホールディングスが退職金を廃止するそうです。その分の費用を基本給に上乗せすると。
久野
これだけ大きな会社が退職金をなくすってすごいことですよ。
安田
確かに。大手は退職金があって当たり前って感じですもんね。
久野
安田
そもそも退職金って本人が金額を把握していないケースがほとんどみたいですね。
久野
分かりにくいですよね。確定拠出年金なら自分で運用もコントロール出来るし、いくらもらえるかも明確ですけど。
安田
転職しても次の会社に持っていけるし。やはり退職金という制度はなくなっていくんでしょうか。
久野
いま退職金の見直しをしている会社が多いです。退職金って採用力の向上に繋がらないし。
安田
そうなんですね。ちなみに退職金を導入している会社ってどれくらいあるんですか?
久野
元々9割ぐらいの会社に退職金制度があったんですけど。20年前ぐらいからどんどん減っていて今は7割ぐらいまで減ってます。
安田
久野
安田
中小企業を含めて7割もあるんですね。ちょっと驚きです。
久野
安田
退職金を無くして基本給を増やす方が採用力アップには繋がりますか?
久野
退職金の金額を見て応募してくる若手なんていませんから。それより基本給が高い方がずっと魅力的でしょうね。
安田
長く勤めた人が恩恵を受ける制度って、もう現実と合っていないんでしょうね。
久野
何年いるとか関係なく、スキルに合わせてちゃんと給料を払える会社じゃないと。優秀な人は来てくれないです。
安田
「今さら裏切るのか?」って怒っている人もいますけど。
久野
そもそも退職金って「給与の後払い説」が有力だと言われていて。
安田
久野
それを国が推奨していた経緯もありまして。退職所得控除という税金控除額を大きくして誘導していたわけです。
安田
久野
はい。だから現役の頃に我慢していた人たちが騒ぐ気持ちも分かります。
安田
久野
ただ時代に合わなくなっていることは事実で。企業としては変えていかざるを得ないんですよ。私は確定拠出年金みたいのが一番健全だと思ってます。
安田
そもそも終身雇用なんて求めていない若者の方が圧倒的に多いですし。
久野
退職金を積み立てている会社が40年後に残っている確証もないですから。
安田
つまり王子ホールディングスだけじゃなく、企業は今後どんどん退職金をなくしていくと。
久野
なくして前倒しにする企業が増えていくでしょうね。賞与もなしにして月給に乗せる会社が増えてきました。積立方式じゃなく確定拠出年金式で払って終わりという感じ。
安田
運用するコストも大変みたいですね。赤字になったら会社が補填したりして。
久野
これからは「即払い」が基本になると思います。労働に対してきちんと報酬を払うので「あとは自分で運用して、転職したら自分で持っていってね」ってことです。
安田
辞め易くなってしまいますけど。そこも織り込み済みですか。
久野
辞めてもいいように未来の債務は互いに残さない。これが今の時代だなと思います。
安田
若い人にとってはその方が望ましいでしょうけど。今まで我慢してきた40〜50代はどうしたらいいんでしょう。
久野
厳しいでしょうね。特に今は晩婚化が進んでるじゃないですか。
安田
久野
そうすると30代前半で子供ができて、そこから18年後に大学に行き始めるとめちゃくちゃお金がかかるんです。
安田
久野
だから50代で家のお金が激減するんです。退職金ってその年代の人にはとても重要で。
安田
久野
そういう人たちもたくさんいますので全てを急激に変えることは難しいです。
安田
久野
ないと思います。これからは確定拠出みたいな積み立て制度を作って、自分で老後資金を貯めていけるようにしないといけない。
安田
久野
はい。給料が高く貯めやすくて、かつ貯める制度があるかどうかがポイントです。
安田
ちなみに退職金が廃止された場合、すでに50代まで働き続けてきた人はどうなるんですか?
久野
退職金の見直しをしている会社は制度を分けていますね。「この年齢から新制度に移行します」という形で。
安田
同じ会社の中に2つ制度があるってことですか?中国の 一国二制度みたいな感じ。
久野
2重制度になってしまいますが現実的にそれしかない気がします。無理やり一つにすると歪みが起きるので。
安田
ちょうどその境目にいる人は気が気じゃないでしょうね。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。