赤い出口、青い出口 第8回「『仲間意識』は組織を強くする?」

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

第8回 「仲間意識」は組織を強くする?

経営者と社員のズレとは?

私は3回会社を辞めています。

お世話になった経営者とは、辞めたあとでも仕事でお付き合いがありますし、プライベートでもご一緒させてもらうこともあります。
私自身は自分の行動を、周りの人と相談をしないため、それまで一緒に働いていた人たちが急によそよそしくなったり、システムの制限がかかったり、朝来ると机が部屋の隅に寄せられたりします。言ってくれればいいのにと思いますが、全員から祝福される辞職なんてほぼなく、なんらかの軋轢を残して辞めるのが普通の話なので、私自身は起こる現象をただ眺めています。
辞めるたびに感じることは、経営者と会社組織内にいるひとに、ちょっとしたズレを感じるのです。

中小企業経営者は、社員に辞められると残念と思うばかりで、辞めた人に対しては、次の人生を頑張ってほしいと願っていることがほとんどです。場合によっては、うまく関わってあげることができなくて申し訳ないと、話をしていて罪悪感さえ口に出していただくこともあります。

一方、組織に残る人は異質分子を排除しようという力が働きます。いなくなる人をやり玉に、踏み絵のような仲間の確認が起こるとでも言いましょうか。自然なことではあるのですが、それって未来志向の組織とは違うような気がします。

私は、これからの中小企業経営者においては、内向きの仲間意識でつくられる組織ではなく、外部からの知恵の受け入れができる組織への転換を目指さなければいけないと思うのです。

これから始まる人材の流動化

組織から個人の時代へと言われて時がたちます。経営者は時流を意識して経営をなさっている方が多いのですが、社員たちがまだついてきていないというのが現状ではないでしょうか。

IT化の進展により、フロント営業にはマーケティングの知識が求められます。企画の部署は、業務の流れを詳細に把握しなければ効果のあるプランはできません。広報や採用、宣伝の垣根はなくなってきました。ひとつの部署や組織では解決できないことが多くなってきたのです。
こうなってくると、閉ざされた組織、内向きな仲間意識というものは会社全体の成長の妨げになります。また、優秀な個人の能力を潰してしまうことになりかねません。

辞めていく人を引き留めるのは、難しいことです。個の時代は、転職の垣根が下がります。社員も転職を重ねて、個人のキャリア形成をする世の中はすぐそこまで来ています。若い社員からそれは始まるでしょう。ただ、人材の流動化は他の会社も同じことなのです。

他社で採用の経験を積んだ人が、自社にやってきてマーケティングで存分に力を発揮してもらう。逆もしかり。自社で芽の出なかったフロント営業が、他社の営業サポートの部署で出世を勝ち取る。とてもうれしいことではないでしょうか?出戻りの社員もでてくることでしょう。

入口を広げることを目指す

これから人材の流動化に対応するために、個人の経験を尊重し柔軟に受け入れ間口を広げるのが「青い出口」。人材が出ていくことよりも、入ってくる人がうまく機能するように組織を作っていくのが良いのではないかと考えます。
逆に組織のつながりを強めると、個人の能力を潰してしまうことにつながり、人がやって来ません。人材流出が起こり、かえって組織が弱くなるでしょう。

個人の自由意思を尊重できる土壌は、これからとても重要になります。厳しいようですが、仲間意識だけでなりたつ組織は、組織を弱くさせることになるかもしれません。

 


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、
営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。
独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。

情報流通量の多少が、価値の大きさを決める時代となり、
「出口」の情報流通量を増やすことに重点を置いています。
これが「出口にこだわる」マーケティングの基となっています。

また、「出口にこだわる」実証として、
モロッコから美容オイルを商品化し、販売しています。
<https://aniajapan.com/>

商品の「出口」で情報が増えれば、ファンが増える。
「出口」に注力することで、新規マーケットの創造に力を発揮します。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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