その25 やせたはなし

10年ほど前にふと思い立って減量したことがございます。
アスリートでもなんでもない市井のオッサンですので
やる必要などもちろんなかったのですが、
ただ体脂肪率がひと桁になったら
身体がどんな風に変化するのだろうという好奇心で、
食事のカロリー管理を徹底して、あとは自転車にばかり乗っておりました。

自転車のカロリー消費効率は運動の種類の中では高い方で、
またスポーツ感覚でやっていると長時間化して
気づいたら半日、一日中乗ってしまうこともあります。
競技者はもちろん、趣味レベルでも多少は消化のいい甘いものなどの
エネルギーを摂取しながら動く必要があるくらい、カロリーを使います。
ほとんどの時間が陽光の下の活動で日焼けは不可避ですので
審美的なダイエット目的にはちょっと難しいですが、
減量にはかなり相性のいい運動でした。

2、3ヶ月して体重はハタチのころと同じくらいまで下がり、
体脂肪率も9%になりました。
筋トレをしていたわけではないので
筋肉の起伏は微々たるものですが、腹部の「割れ」も確認できます。

自己満足でしかありませんが
一応目指すところまでやりとげたということで、
プロジェクトも無事終了だ、写真を一枚だけ撮って終わろうと服を脱ぎ、
意気揚々と鏡を見たところ、

そこには栄養失調としか思えない、しなびたおじさんがおりました。

体重などの数的スペックだけは若いときと同じにもかかわらず、
腕はいつの間に?ってくらい細くなっているし、
腹の皮には起伏とは別物の「横線」が入っているし、
ああー、これ、ダメだわ。笑えないダメな感じだわ。
自己満足にもならないわ。

と、以後は冷静な判断のもとに自然に10キロ以上肥えて
フツーのおっさん体型に戻りました。
太ったのはほとんど胴体ですが
不思議なもので、何もしていなくても腕もなんとなく筋肉が戻って
スーパーの買い物袋を持つのが楽になりました。

そしてあの瞬間気づいたことがあります。それは自分についてではありません。
若者の美しさの本質とは何かに気づいたのです。
若者はただそこにいるだけで美しい。
即物的ですが、それは肌の美しさのことなのです。

正直、わたくしは長く生きるほどに
愛も勇気も友達も失っていくだけで、
若さだとかお金だとか社会的認知の方が
より絶対的な価値あるものに思えてなりませんあんぱんまん。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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