第77回「Bento」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第76回  「Bento」

気分が乗らない時モチベーションを上げてくれる動画があります。

※字幕を付けられます。

話し手は、もともと映像クリエーターの起業家Mick Ebeling。全身を麻痺させる難病であるASLを患ったアーティストのために、目の動きで絵を描ける装置を自作する話です。困難に立ち向かうストーリーが激アツで、最後に表示されるメッセージ「if not now, then when? if not me, then who?」は何度見ても痺れます。

さて、Mickの情報を追っていたら、面白いサービスを見つけました。食料不足の撲滅を目指す「Bento」です。商標登録されていたのは、そのプロジェクトネーム「HUNGER: NOT IMPOSSIBLE」です。


米国商標登録第5670626号(商標権者:Not Impossible, LLC)
【商標】

HUNGER: NOT IMPOSSIBLE

【指定商品/指定役務】(指定役務等の一部を抄訳)
レストラン等において参加者が無料で食事をするためのプログラムの運営 など


アメリカは世界で最も裕福な国ですが、貧富の差が大きい国でもあります。アメリカ人のうち5400万人が食料不足にあり、そのうち1800万人が子どもと言われています。これは、世界で最も裕福なアメリカ人の6人に1人が、日常的に食事にありつけていないことを意味します。

私は大学時代にシカゴで10代のホームレスに会ったことがあります。アメリカでは、ホームレスに食事をあげることが当たり前なのか、友人がテイクアウトした食事を若いホームレスに渡していましたが、信じられないほどのスピードで食べ物が無くなりました。「貪り食べる」という表現がピッタリ当てはまる、戦争映画でしか見たことがないような食べ方に大きな衝撃を受けました。

Mickが展開するBentoは、この食料不足問題を解決するサービスです。
食事を受け取りたい人は、携帯から「ハングリー」とショートメッセージを送信します。すると、提携レストラン・食料品店のリストが距離と共に表示され、お店と食事を選択できます。あとは、ピックアップ時間にお店で受け取るだけ。スマホにもガラケーにも対応しています。
Bentoは提携レストランのオーダーシステムと統合しているため、店にとってシステム導入の手間はほとんどかかりません。

未来コンパスが指すミライ

アメリカにも、いわゆる炊き出し(フードバンク)はあります。
しかし、「恥ずかしい」「抵抗がある」といった感情が大きなハードルとなり、すべての対象者が利用している訳ではありません。
Bentoは、この自尊心の問題を重視しています。
店に表示されるオーダーは、通常の注文と同じため、ユーザがBentoを利用していることは店員に気づかれません。また、ユーザは、他の客と同じようにお店に出向き、同じように携帯を見せ、同じように食べ物をピックアップします。
つまり、店からも周囲からもそれと分からないため、気兼ねなく食事を受け取れるということです。

このケースからは、「恥ずかしい」という感情がサービスの普及を妨げうることが分かります。
同様の事例として、障害者割引サービスも恥ずかしいがネックになっていそうです。心理的ハードルがある「手帳の提示」の代わりに、スマホを見せることで手続を完結させられれば、周りからはWEBクーポンを提示しているようにしか見えません。このように、「恥ずかしい」という感情は、一般的な方法と同化させることで解消できそうです。
世の中は、今後ますます「感情」に敏感になると思われます。Bentoのように感情に配慮したサービスが普及するミライがやってくる気がします。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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