「補助金で電カル導入」は危険!?〜お医者さんは、なやんでる。 第108回〜

第108回 「「補助金で電カル導入」は危険!?」

お医者さん
お医者さん
このあいだ知り合いから、「政府が電子カルテ導入のコスト負担を検討している」という話を聞いた。うちみたいな小さな病院だと電子カルテ移行も簡単じゃなかったけど、補助金が出るなら考えてみようかなあ。
医療情報化支援基金のことですかね。確かにそういうものを利用するのもアリですが、あまり簡単に考えない方がいいと思いますよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ん? あなた一体どなたですか。
はじめまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
あっ、聞いたことあるぞ。コンサルでも業者でもなく、医者と同じ立場でおもしろい提案をしてくれる人がいるって。
ありがとうございます。本職は電カルの導入サポートなんですけど、垣根なくいろんな相談に乗らせていただいてまして。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
へえ、電カルが専門なんだ。でもそれなら、どうして「あまり簡単に考えないほうがいい」なんて言うんだい?せっかく国が補助金を出してくれると言うのに。
そうですね。それを答える前にちょっとお聞きしたいのですが、先生の病院ではなぜ今まで電カルを導入しなかったんでしょうか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そりゃ、うちは長年紙のカルテでやってきているし。それに……まあ端的に言えば、予算的な問題もある。うちみたいに100床以下の中小病院に、それほど余裕はないんだよ。
なるほど了解です。であればやはり、少し「待った」をかけさせていただいた方がいいでしょうね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうなの? それはどういう理由で?
つまり電カルというのは、導入して終わり、というものではないということです。運用を始めた後も、保守費や更新費がどうしてもかかってきます。導入に対して多少の補助があったとしても、その後の費用は結局病院側が負担することになる。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
保守費……更新費……なるほど。予算的に厳しい状況で電カル移行をすると、後々困ったことになるかもしれないということだね。
仰るとおりです。ですので「補助が出るから導入しよう」という考えではなく、電カル移行によってどれくらい生産性がアップするのか、それは保守費や更新費などを支払ってもペイできるアップ具合なのかを、冷静に判断する必要があるわけです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
うーん、そう言われるとあまり導入メリットがイメージできないかもなあ。スタッフの高齢化も進んでいるし、正直、私自身もIT系は得意じゃないし。……ともあれ、ずっと紙カルテのままっていうのも不安だし。
わかります。そういう意味でも、「導入ありき」で考えるのではなく、導入するかどうかを具体的に検討するためにちょっと調べてみる、というスタンスがいいかもしれません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどねえ。
最近は電カルにもいろいろな機能がありますし、知っておいて損することはありません。一方で、一度電カルに移行してしまうと、なかなか紙カルテには戻りづらいという現実もあります。クリニックならまだしも、複数の部署や職種から成り立っている病院だと特にそうでしょう。いずれにせよある程度の知識・相場観を持った上で検討されることをオススメします。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだね。導入費が負担されるからと、何も考えず飛びつくのは危険だな。
そう思います。電子カルテは導入して終わりではなく、むしろ導入がスタートだと考えることが重要です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほどねえ。うん、勉強になったよ。ありがとう!
とんでもありません!もしアドバイスなどが必要でしたらいつでもお声がけください!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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